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短篇集  作者: 猫田たい子
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24/47

第24話 同じ壁の上で

 ある街で、若い自称画家が壁に絵を描いた。

 モチーフは匿名のストリート・アーティスト――ここでは仮に「コメット(彗星《すいせい》)」と呼ばれている人物を模した風刺画だった。


 数時間後、男は器物損壊と不法侵入で逮捕された。


 警察署で彼は声を荒らげた。

「なぜ俺だけ? コメットだって同じことをしているじゃないか!」


 取調室でも主張は変わらない。

「コメットは街中に勝手に描いても『アート』と呼ばれて、俺は犯罪者扱い? おかしいじゃないか!」


 弁護士も法廷で同じ論点を繰り返した。

「同様の行為が社会的に評価されている例がある以上、依頼人のみを処罰するのは公平性を欠きます」


 被告人は言った。

「俺はコメットがやっていることを真似しただけだ。違いがあるなら説明してくれ。なぜ彼は許されて、俺はダメなんだ?」


 傍聴席が騒ついた。

「確かに線引きが曖昧だな」

「でも法律は同じだろ」


 裁判官は答えた。

「この裁判は、コメットという人物の行為を評価する場ではありません」

「でも、その『評価の違い』で人生が変わるなら同じルールじゃないだろ!」


 法廷に重い沈黙が落ちた。


――判決は下された。


 有罪。


 判決後、被告は法廷の外に出た。


 その日のニュースサイトに短い記事が載っていた。

「匿名ストリート・アーティスト『コメット』の新作が発見される」


 写真には、彼が描いたものとよく似た壁画が写っていた。

 ただ、キャプションにはこうあった。


『新たな都市表現として注目』


「同じ線を引いても、名前が違うと世界は変わるのか……」


 彼の描いた壁画は、その日にはもう塗りつぶされていた。





2026/05/02

https://www.cnn.co.jp/style/arts/35247117.html

バンクシーの新作が出たねー。

しかも、彫刻って!

防犯カメラだらけの世界の中で、こういう大きな作品が現れる。

不思議というより疑問が残る。

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