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第21話 鑑賞より先に観ていたもの
有名な美術展に行った。
きちんとした美術館では、絵画を飾る際に反射まで計算されている。
照明の角度や位置、低反射ガラス、展示の高さまで工夫され、作品が一番きれいに観えるようになっている。
――はずだが……。
目の前の作品よりも壁の汚れが気になった。
挙句の果てに、額縁のガラスが反射して作品がうまく鑑賞できない。
目を凝らすたびに照明と自分の姿が映り込む。
少し横にずれても、また自分。
反対側に回っても、やっぱり自分。
そのうち、作品よりも自分自身を観ている時間のほうが長くなった。
普段着のまま来ている自分がやけに目について腹立たしい。
「きちんと観せる工夫がされている世界」のはずなのに、ただの反射展ではないかと皮肉に思った。
ふと気がついた。
額縁だけは反射しない……。
一通り鑑賞し終えた頃には、名画の印象は残っていなかった。
代わりに残っていたのは、額縁が作品より前に立っているような光景と自分の姿だった。
――私はきっと、額縁の中の自分を観に来たのかもしれない。
2026/04/28




