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短篇集  作者: 猫田たい子
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21/48

第21話 鑑賞より先に観ていたもの

 有名な美術展に行った。


 きちんとした美術館では、絵画を飾る際に反射まで計算されている。

 照明の角度や位置、低反射ガラス、展示の高さまで工夫され、作品が一番きれいに観えるようになっている。


――はずだが……。


 目の前の作品よりも壁の汚れが気になった。

 挙句の果てに、額縁のガラスが反射して作品がうまく鑑賞できない。


 目を凝らすたびに照明と自分の姿が映り込む。


 少し横にずれても、また自分。

 反対側に回っても、やっぱり自分。


 そのうち、作品よりも自分自身を観ている時間のほうが長くなった。

 普段着のまま来ている自分がやけに目について腹立たしい。


「きちんと観せる工夫がされている世界」のはずなのに、ただの反射展ではないかと皮肉に思った。


 ふと気がついた。

 額縁だけは反射しない……。


 一通り鑑賞し終えた頃には、名画の印象は残っていなかった。

 代わりに残っていたのは、額縁が作品より前に立っているような光景と自分の姿だった。

 

――私はきっと、額縁の中の自分を観に来たのかもしれない。





2026/04/28

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