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短篇集  作者: 猫田たい子
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第11話 食べられた猫

「お母さん! 黒ちゃんが食べられた!」


 小学校から戻った息子が、泣きながら叫んだ。

 恐れていたことが起きて、眩暈がした。


 黒ちゃんは四丁目のみんなで世話をしている地域猫だ。

 エサ場を清掃し、不妊手術をして増えないよう管理している。

 住民で協力しながら細心の注意を払ってきた。


 それでも、猫が苦手な人はいる。


 息子が最後に見たという公園へ駆けつけた。


――いない。


 いつもならこの時間には、他の猫達も集まってくるはずだ。


 辺りを見回した時、スマートフォンを構えた男と目が合った。

 三十代くらいで、私を見るなり逃げ出した。


――あいつだ!


 私は追った。

 巡回中の警察官が現れた。


「お巡りさん、その男を捕まえて!」


 男は取り押さえられた。


「お母さん、こいつ!」

 息子が追いつき、指を突きつけた。


「この人、黒ちゃんを食べたんです!」

「なんだって!」

 警察官の手に力が入った。


「ごめんなさい! かわいくてつい!」

 男は慌てながらもスマートフォンを気にしていた。


 警察官がスマートフォンを取り上げ、画面を確認した。

 公園のベンチ。

 腹を出して寝転ぶ黒猫。

 黒猫の腹に男が顔をうずめている動画。


 私は唖然とした。


「でも黒ちゃん、嫌がってたもん!」

 息子の抗議に警察官はため息をついた。

「……食べたんじゃない」

 警察官は画面を閉じた。

「吸ってるな」





2026/03/03

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