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僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


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第九十八話 救援

今話から、ダッシュを「ーー」から「——」に修正しています。

過去話についても、適宜修正を行なっていく予定です。

このままだと、ちょっと恥ずかしいので……。


「……た、倒した?」


七海は、呆然と呟いた。

先ほどまでは戦いに集中していて、夢の中にいるような気分だった。

今もまだ、何だかふわふわしているような心地である。


「ウチが、倒したんだ……!」


自分が憧れの魔法少女に変身し……。

そして、あの恐ろしい怪人を一人で倒した。

それらの事実が、彼女の中にじわじわと染み込んでくる。


「すげー! ウチ、魔法少女になったんだ!」


七海は、両手を突き上げて叫ぶ。

今日から彼女も、魔法少女の仲間入りだ。

なんでこうなったのかは、正直なところ分からない。


だが、魔法少女になれたおかげで敵をやっつけることができたし……。

何より、大切な親友のことを守ることができた。


「……そうだ! 和花っ!」


七海は慌てて、地面に横たえてある和花の元へと駆け寄った。

そして、そっと彼女の頬に手を添える。


「……ありがと、和花。和花のおかげて、ウチ、怪人(ティーグル)を倒せたよ」


「むにゃむにゃ……」


気絶しているというのに、どこか呑気な顔の和花。

それを見た七海は暖かい気持ちになり、小さく微笑んだ。


そのまま和花のことを抱き上げた七海は……少し迷う。


行き先は決まっている。

先ほどまで流れていたアナウンスから、避難場所は分かっているので、ひとまずそこへ和花を連れていけばいい。


距離もそれほど遠くないので、このまま走っていくのは簡単だ。

実際、魔法少女になった今なら、どこまでだって走っていける気がする。

ただ……気を失っている和花を抱えたまま走るのは、少し躊躇われた。


その時、ふと七海はテレビで見た魔法少女たちの映像を思い出した。

彼女たちはドレスをはためかせながら、自由自在に空を飛んでいた。

今なら、もしかして……。


(ひょっとして……ウチも飛べたりする?)


試しに「飛べ」と念じてみる。

すると、ふわりと身体が浮き上がった。


「うわ、マジで飛べたし!」


思いつきは、どうやら上手くいったようだ。

空を飛んでいるという事実に、思わずテンションが上がる。

このまま空中を飛び回りたいという衝動に駆られるが、「今はそんなことをしている場合じゃない」と思い直す。


七海は和花を抱き上げたまま、そっと空中に飛び上がった。

そして、そのまま避難場所へと猛スピードで移動する。


避難場所は、少し離れた場所にある公園だった。

そこでは、動物園の係員や、駆けつけてくれたであろう医療従事者たちが右往左往し、怪我をした来園客たちの手当にあたっていた。


そんな彼らは、空を飛んできた七海のことを見て、あんぐりと口を開けた。


「え? 魔法少女?」


「でも……オレンジの娘なんていたっけ」


「もしかして、新しい魔法少女!?」


「す、すげー!」


(ちょ、ちょっと恥ずかしーし……!)


ここまで注目されると思っていなかった七海は、思わず顔を赤くした。

周囲で盛り上がる人々を何とかスルーすると、七海は抱えていた和花を簡易ベッドまで連れていく。

そして、遠巻きに見ていたスタッフの一人を呼び止めると、小さく声をかけた。


「この子、ひどい怪我だったんです。お願いしてもいーですか?」


「ひゃい! も、もちろんです!」


声をかけられたスタッフはひどく動揺していたようだが、快く承諾してくれた。

少し心配だった七海だが、テキパキと和花のことを診るスタッフのことを見て、ひとまず大丈夫そうだとホッと息を吐く。

そんな彼女のところに、ちょっとだけ挙動不審になりながらも、別のスタッフがやってきた。


「……あ、あの!」


「……? 何ですかー?」


首を傾げる七海に、そのスタッフは意を決したように質問する。


「あの! お名前を教えてください!」


「……え? しょ……っ」


思わず東海林(しょうじ)七海です、と馬鹿正直に答えそうになって、彼女は慌てて口を(つぐ)んだ。

この場合の「名前」とは、当然、魔法少女としての名前に決まっている。


しかし、七海は変身したばかりだし、もちろん名前なんて決まっていない。


とはいえ、実はノープランというわけでもなかった。


実のところ、こっそり……いや、本当にこっそりだが……。

彼女は昔、「もし自分が魔法少女になったら……」などと妄想したことがあった。

その時に考えた名前が……まぁ、あるにはある。


ただ、それを名乗るのは、少し気恥ずかしいというか、何というか。

少し躊躇いながらも、彼女はその「名前」を口にしようとした。


「ウチの、名前は……」


その時だった。


「……んっ?」


七海は、ここから少し離れた場所に、何か()()()()を感じ取った。

まるで、真っ白なキャンバスに跳ねた泥の染みのような不愉快さを、彼女に伝えてくる。


例えるなら……そう、悪意だ。

ドス黒く、他者を傷つけようとするような、邪悪な意思。


そして同時に、彼女は別の気配も感じ取った。

こちらは対照的に、清らかで心地のよい気配だ。

数は3つ……いや4つか。

先ほどの不快な気配と対峙するようにして並んでいる。

ただ……その反応は、かなり弱々しい。

まるで揺らめく蝋燭の炎のような頼りなさだ。


七海は、この弱々しい反応の正体を、直感的に理解した。


(……え? もしかして、これって……魔法少女の気配?)


「動物園にリ・ヴァースが出た」と聞いた七海は、敵は怪人(ティーグル)だけだと勝手に思い込んでいたが……。

考えてみれば、あれだけティーグルが暴れていたのに、魔法少女が助けに来なかったというのは不自然だ。

それよりも、同時刻に彼女たちも別の場所で戦っていたと考えれば納得がいく。

思い返してみれば、ティーグルも「魔法少女どもめ」などと言っていたような気がする。


(……じゃ、こっちの気持ち悪い方が、リ・ヴァース?)


彼女たちと相対する気配は、魔法少女たちのそれと比べると、かなり強大だ。

先ほど倒したティーグルなどとは、比べ物にならないほど。

どこか気配を偽っているような違和感はあるにせよ、強敵であることは間違いない。

おそらく、新宿戦や渋谷戦、バスジャック戦の時のような、幹部クラスの敵が来ているのだ。


(……これ、ピンチじゃね? でも、和花を置いていくのは……)


七海がそんなことを考えていた、次の瞬間。

魔法少女たちと対峙する悪意の数が、ぶわりと膨れ上がった。


(……えっ!? なんか増えたんだけど!?)


先ほどまでは、魔法少女の気配と、幹部らしき気配だけだった。

しかし今、それを取り囲むように、無数の気配がいきなり現れたのだ。

ひとつひとつはそれほど強くなさそうだが、その数は数百以上。


(……助けに行かなきゃ)


何が起こっているのかは、七海にも分からない。

ただ、魔法少女側がかなり追い込まれていることだけは、何となくだが理解できた。


「……この子を、お願いします」


「は、はいっ!」


七海は周りにいるスタッフにそう伝えると、ギュンと音を立てて飛び上がった。

そして、感知した気配を辿って、動物園まで猛スピードで引き返していく。

わずか数秒で、彼女は現場に到着した。


真っ先に視界に入ってきたのは、やはり魔法少女たちだった。

青いドレスはリリィ、黄色はデイジー、緑はコスモス。

そして、そのすぐそばには、妖精のルーナがいる。

彼女たちが、先ほど感知した4つの気配に違いない。

ただ、どうやらローズは来ていないようだ。


そして、彼女たちが対峙しているのは、ピエロ姿の怪人。

確か、電波ジャックの時に放送していたやつだ。

おそらくコイツが、ひときわ強大で邪悪な気配の持ち主だろう。


そして、それを突如として増えた無数の気配の正体も、すぐに分かった。

黒くて歪な巨体に、節くれだった長い腕。

そして、緑に光る不気味な目……。


——魔獣兵だ。


それも、一匹や二匹ではない。

見渡す限り、魔獣兵どもがひしめいている。


七海の過去のトラウマが蘇りかけ、恐怖と不安が背筋を這い上ってくるが……。

彼女は和花の顔を思い出しすことで、即座にそれをかき消した。


ピエロ姿の怪人と魔獣兵は、魔法少女たちを包囲するように展開している。

そこへ割って入るようにして、七海は飛び込んでいった。


飛んできた速度を維持したまま、彼女は地響きを立てて降り立った。

思ったよりも勢いがついたせいで、足元でコンクリートが砕ける。

格好つけて着地したのに、もうもうと立ち込める土煙のせいで、周囲からは見えていないようだ。

ちょっとだけ恥ずかしい。


ようやく粉塵が晴れて、七海の姿が明らかになる。

そこで七海は、「そういえば、この場にいる誰とも面識ないな」と思い至った。


(てか、そりゃそーじゃんね! コイツ誰だってなってるよ多分!)


背後で、魔法少女たちも困惑しているような気さえする。

実際は、新たな戦乙女(ヒロイン)の登場に驚いていたのだが……。

七海は彼女たちに背を向けていたので、その様子は見えていなかった。


七海は顔から火が出る思いだったが、堂々とその豊かな胸を張ってみせる。

とりあえず、魔法少女たちの味方だと認識してもらえれば良い。


そんなことを考えていると、ピエロの怪人が七海に向かって話しかけてきた。

何でかは分からないが、その声色はちょっと嬉しそうだ。


「おやおや……いったい誰ですか、アナタは?」


ここで七海は、わずかに逡巡した。

「もし自分が魔法少女になったら……」などと考えた時の名前は……まぁ、ある。

しかし、それをここで名乗ってもいいものか、少し悩んだのだ。

ただ、ここで「いやー誰でしょうね自分、ハハハ」などと言えるわけもない。


(……えーい、ままよ!)


「知らないなら、教えてあげる。ウチは……」


七海は、スゥッと息を吸った。

そして、覚悟を決めて、その名を口にする。


「……メープル。マギア・メープル。……おめーをぶっ倒す魔法少女の名前だし! 覚えとけ!」


「おーほっほ! そうですか! でも……」


ピエロの怪人は、不気味な笑顔でニヤリと笑って見せた。


「……この数を相手に、どうやって戦うおつもりですか〜?」


周囲を取り囲む魔獣兵の群れを指して、ピエロは笑った。

こちらをおちょくったような態度のピエロを見て、七海(メープル)はキッ!と睨みつける。


「……ウチを舐めんなっ! 全員、ぶっ倒してやるし!」


「おーほっほ! それはスゴいですねぇ〜!」


それを聞いたピエロは、いかにも楽しそうに高笑いする。

そして、続けて魔獣兵たちに命じた。


「ターゲットは、あのオレンジの魔法少女です! 行きなさい、魔獣兵!」


ピエロの命令に従って、次々と魔獣兵が飛びかかってくる。

それを躱すようにして、メープルは空中へと舞い上がった。


「逃しませんよぉ? 〈道化師の大道芸(パフォーマンス)浮遊する風船(サーカスバルーン)!〉


直後、魔獣兵たちの身体が、ふわふわと浮遊し始める。

どうやら、ピエロの怪人が、魔獣兵たちを飛べるようにしたらしい。

空中を飛んで、メープルに群がってくる魔獣兵の群れ。

それを見て、彼女は思い切り叫んだ。


「別に……逃げたワケじゃないしっ!」


いうが早いがメープルは、自身のタトゥーを手甲(ガントレット)越しになぞった。

魔法少女の証である、白い太陽のタトゥーを。


即座に紋章から、オレンジ色の光が溢れ出し……。

そして、その光がメープルの手の中で具現化し、ひとつの武器を形作っていく。


それは、巨大な棍棒(メイス)だった。

鮮やかな橙色の光を放つそれは、持ち手から先端部分まで合わせると、メープルの身の丈ほどもある。

長いだけでなく、太く、そして分厚い。

等間隔に並んだ凶悪な形状のトゲが、その破壊力を物語っているようだ。



メープルは、その武器の名を叫んだ。


「——聖衛棍(せいえいこん):ザ・サン!」


ギャルがでっかい武器を担いでいるのって、ちょっとロマンじゃないですか?

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ギャルがでっかい武器担いでるのがいい?そりゃあいいに決まってるでしょ!
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