54「実験してみる価値はあるか」
食事もそこそこに俺以外はすでに休んでいた。俺はまだ休まず天井を眺めながら考えごとをしていた。
気づいたのはいつだったか。魔物の死骸が消える時、死骸は魔素へと分解されダンジョンに吸収されていた。
最初は見間違いかと思ったが、何度見ても同じことが起こっていたため、見間違いではないのだろう。
たぶんだが、ダンジョンマスターがダンジョンを構成する魔素から魔物を作り出し、ダンジョンの守り手とする。そして倒されれば魔素を回収し、また新たな魔物を作り出す。要はリサイクルだな。
俺も地球産ながら魔物だから魔素の流れは感じ取れる。だから気づけたわけだが。
ただなぁ、俺が感じた魔素の大半はダンジョンへと流れていっていたが、ほんのわずかにそこではないどこかへ流れる魔素があったんだよな。
気のせいなのかもしれない。だが、どうしても気になったため、俺はセーフティエリアを出て、一人魔物を探しにいった。
見つけ次第魔物を倒していき魔素の流れを観察してみる。やはり魔素の流れは二つに分かれていた。
一つはダンジョンへ。ではもう一つはどこへ? 俺は魔素の流れを追うことにした。
だが、流れは速く見失うたび魔物を倒して追うこと数分。ようやく突き止めた場所は、ダンジョン三階沼地のエリアの一角だった。草で覆われたそこにはまだ小さいが魔素溜まりができあがっており、魔素のもう一つの行き先はここだと確信する。
「なぜダンジョン内に魔素溜まりができるんだ? いや、それよりも、魔素が流れる先が二つあるのがおかしい」
俺は魔素溜まりを観察する。何かが起こりそうな兆候はない。だが、それならダンジョンはなぜ魔素溜まりを吸収しないのか。
ダンジョン内の管理はダンジョンマスターの仕事なのだと思う。そこには魔素の管理も含まれるはずだ。
「もしかして、この魔素溜まりにも意味があるのか?」
吸収されない魔素溜まり。少しずつ流れてくる魔素。するとどうなるか? 魔素溜まりはだんだんと大きくなり魔素の量が増えていく。
「そういえば魔素溜まりから魔物が生まれてくることもあると聞いたな」
初心者の講習会で。それならダンジョン内でも同じことが起こるだろうか。
「……ふむ、実験してみる価値はあるか」
俺は沼地の魔物を一通り狩ってみた。魔素の流れる先を確認し、また魔素溜まりへと戻ってくる。
「わずかだが、魔素の量が増えてるな。このまま魔素溜まりを育ててみるか」
だが、ここに流れてくる魔素の量はごくわずか。各階の魔物を狩っていってもそれほど溜まらないだろう。これでは時間がかかりすぎてしまう。
このダンジョン内に魔物が大量にわいてくる場所があればいいのに。俺はそう考えつつ、一度セーフティエリアに戻った。
「あるぞ。魔物が大量にわく場所」
「ほお……」
セーフティエリアに戻るとなぜかオールが起きていたため、ちょうどいいとばかりにダンジョン内の魔素の流れのことと魔素溜まりのことを説明した。俺の話を聞いてオールが発した第一声が先ほどのセリフである。
「確か四階の……、ここだ。ここにはモンスターハウスという罠がある」
オールが地図を開いて示した場所は、最短ルートからは外れているなんてことない部屋だった。ただ、そこには赤で魔物の絵が描かれている。
「なんだそれ?」
「モンスターハウスはダンジョン内に仕掛けられている罠の一種だ。見た目は普通の部屋だが、一歩中に入れば入り口は瞬時に閉じられ、大量の魔物がわいて出る。魔物を全滅させれば出られるが、それができなければ待っているのは死だ」
「それ、どうやって見分けるんだ?」
「だいたいは部屋の中央に、わかりやすく宝箱が置いてあるからそれでわかる。あとは探知系のスキルでわかるな」
「なるほど」
どうやら魔物の問題はクリアできそうだ。あとはそのモンスターハウスでどのくらい魔素を溜められるか。
まぁ、やってみなければわからないか。一度でだめなら二度、三度とやればいいだけだし。
「まさかと思うが、入るのか」
「もちろん。さっき説明しただろ。魔素を溜める必要があるんだ。もしかしたらレアの発生条件かもしれない」
「はぁ、お前の好きにしろ」
なげやりなオールの言い方に俺はにんまりと笑った。ああ、好きにするさ。お前を巻き込んでな。




