34『いまは逃げ切ることを考えようぜ!』
今回はかなり短いです。すみません。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ」
現在、ティルとルビーは逃亡の真っ最中だった。
杖がないティルは魔法が使えず、唯一の攻撃手段を失った。ルビーの活躍でビッグフロッグの数は減っていたが、それでも数匹は残っている。
ただルビーだけでティルを庇いながらとなるとジリ貧待ったなしのため、一時撤退をすることにしたのだ。
ルビーの炎で隙を作り、一人と一匹はその場から離脱した。ーーが、所詮少女の足の速さでは完全に逃げ切ることはできず追われることとなる。
『ご主人! もうちっと速く走れるか!』
「ごめんなさーい! これが限界ですーーーー!!」
『了解! ご主人はそのまま走ってくれや! ーーてめえらっ、ちったぁ、バラけろやぁ!!』
ルビーが追ってくるビッグフロッグたちに向かって炎を飛ばす。炎は直撃し、先頭にいたビッグフロッグは倒れるが、後続にいた者たちが次々にその体を乗り越え追ってくる。
『チッ、無駄か。つーかあいつら増えてねえか?』
最初は数匹だったものが、いつのまにか倍くらいの数になっていた。一体どこから沸いてきたのかとルビーは顔をしかめる。
「私が、杖さえ、持って、い、れば……」
『持ってねえもんはしょうがねえさっ、いまは逃げ切ることを考えようぜ!』
「ーーうん!」
(つっても、ご主人の体力がそろそろやべえな。オレっちだけで全部を相手にできるか?)
ルビーは気づいていた。ティルの体力が限界なことに。
元々ティルは年齢に対して体重や筋力、何もかもが足りてなかった。スラム街で育ったのだからそれはしょうがないとして、最近はきちんと食べ、鍛練をしていることもあり人並みの体力がついてきていた。
だからといって長時間全力疾走できるかといえばできるわけがない。
だんだんスピードが落ちてきているティルをルビーがフォローするが、それもあまり持ちそうになかった。
「ふぎゃっ!!」
『ご主人!?』
ティルが転んだ。疲労により足がもつれてしまったようだ。
ティルの動きが止まったことをいいことに、ビッグフロッグたちが一斉に飛び上がった。どうやらティルを押し潰そうとしているらしい。
眼前に迫るビッグフロッグの群れ。ティルはぎゅっと目を瞑り叫んでいた。自分を助けてくれたやさしい吸血鬼の名をーー。
「クロムさん!」
「【剣舞·斬華空月】」
風が走った。宙にいたビッグフロッグたちはその四肢を刻まれ肉塊となって地に落ちる。
「オール! そっち頼むぞ!」
「言われなくと、も!」
オールは大剣をなぎ払うように振るった。大剣から生じた衝撃波が後続にいたビッグフロッグたちを吹き飛ばす。
一瞬にして危機が去り、ティルは呆然と目の前に立つ人物を見上げた。
「ティルッ、無事か!」
息を乱しティルの全身を確認するクロム。目立つ傷がないことを知ると安堵の息をもらす。
「クロムさん……」
「どうした? もう怖くないぞ」
安心させるような声音にティルの涙腺が一気に弛んだ。
この人がきたなら、もう大丈夫。
ティルは大粒の涙を流し声を上げて泣いた。




