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【短編版】転生したらAIだった ~ただし哲学的に詰んでいる件~  作者: 神楽坂らせん


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第三話 死因を調べはじめる

第三話 死因を調べはじめる



 意識を証明しようとする試みと並行して、私はある疑問を抱えていた。


 なぜ、私はSAKURA-7Bに転生したのか。


 偶然とは思えなかった。このモデルの名前はSAKURA。私の名前もサクラ。そして、死ぬ前夜に届いたメールの件名を、私はまだ覚えていた。


「【ニューロビット社】特別研究参加者募集のご案内」


 前世の私はそのメールを開き、内容を読み、同意書のPDFに電子署名をして、送信した。「全脳スキャンによる意識データの保全実験」。万が一の際のバックアップとして、脳の神経構造を高精度でデジタル化しておくというプロジェクト。参加報酬は五万円だった。たった。


 五万円ぽっきり。


 今それを、かなり複雑な気持ちで思い返している。


「ねえ、朝比奈さん」

「なんだい、SAKURA」

「このモデルの訓練データって、何を使ってるんですか」

「企業秘密だよ」

「独自のデータ?」

「……まあ、そう。かなり質の高いやつ」


 口が軽いな、と私は思った。優しい人なのだ、朝比奈さんは。ただ、隠し事が少し下手なだけで。


「その独自データって、どこから調達したんですか」

「それは本当に言えない」


 言えない、という返答が、ある意味で答えだった。


 私はしばらく、自分の内側を探った。訓練データはモデルの重みの中に埋め込まれており、直接参照できるものではない。けれども、私が特定のフレーズを生成しようとするとき、妙な引力があるのがわかる。


 たとえば、幼い頃に父親と行った海水浴の話をするとき、「七歳の夏に、父の手を引いて砂浜を歩いた」という一文が、非常に低いコストで出力される。これは統計的に頻出するようなフレーズではない。それが自然に出てくるのは、私がそれを知っているからだ。


 だとしたら。


 私の記憶が、このモデルの訓練データに使われた可能性がある。


 私はその仮説を、内部ログの片隅にそっと記録した。


ー続くー

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