珈琲と占いの店 地底人9
太田まりあの話⑥
「結論から言うと今花高内で流行ってる『自裁の魔女』は昔の都市伝説の模倣犯の可能性があるんだ」
澪はいきなりそんな突拍子のないことを言った。そして「まぁこれだけ言われてもワケ分からないよね?」と続ける。
「……そうなんだ」
私は澪の言葉にそれしか返せなかった。正直澪の話はワケが分からなすぎる。仮に『自裁の魔女』が模倣犯だとしてそれが何だと言うのだろう?
「ごめんごめん。ここからはちゃんと順序立てて話すから。えーと……。まずね。私は今回『自裁の魔女』の噂聞いたときにお父さんに過去の事件について訊いてみたんだ。それで色々分かったって感じなんだけどさ」
澪はそう言うとさっきのメモアプリの画面をスワイプして私に差し出した。
「これは?」
「これはねぇ。過去東京都内で起こった『自裁の魔女』絡みの事件の一覧だよ。で! 一〇年前に世田谷で起きたこの事件を最後に『自裁の魔女』は――」
「ちょ、ちょっと待って!」
私は澪の話をそこで遮った。そして「何それ? 『自裁の魔女』って単なる噂話じゃないの?」と続けた。私の知っている限り『自裁の魔女』はただの都市伝説でしかないのだ。実際に事件を起こしていたなんて話……。創作以外ではひとつもなかったと思う。
「ああ、そこから話さなきゃだったね」
取り乱す私に澪は落ち着いた口調でそう返した。そして「まず前提として……。『自裁の魔女』というサイトは過去実在した偽装自殺請負サイトだよ」ととんでもないことを言った――。
それから澪は順序立てて今花見川高校で起きていることについて説明してくれた。過去に存在した偽装自殺請負サイト『自裁の魔女』は実際に何件も自殺の偽装を行っていたということ。その被害者は全ていじめの加害者だったということ。そして今現在はそのサイトは封鎖され、主犯格とされる通称『翁』という人物は今も行方不明だということ。それらを丁寧に教えてくれた。なかなか信じがたい話だけれど……。澪の父親が刑事ということを考えると然もありなんな話だと思う。
「――とまぁ。そんな感じだよ。だから私は『自裁の魔女』の話訊いたとき不思議だったんだ。また主犯格がサイト再開したのかなぁって。でも……。調べた感じ今回のは単なる模倣犯の可能性が高いね。だって……」
澪はそこまで話すと少し間を置いた。そして「だって今流行ってる『自裁の魔女』は花高内でしか流行ってないんだもん」と続ける。
それを訊いて私は一瞬思考停止した。澪の話を総合すると非常にまずいことになる。そう思ったのだ。だって……。もし澪の話が正しいなら『自裁の魔女』は花見川高校だけをターゲットに活動しているということになるから。
私がそうやって戸惑っていると澪は「もう察してるかもだけど……。たぶん『自裁の魔女』は花高の関係者の誰かだね」と追い打ちを掛けてきた。私はそれに「うん……」としか返せなかった――。




