珈琲と占いの店 地底人6
太田まりあの話③
原田修司、桜井知加子、小御門良平。この三人とは幼い頃からずっと友達だった。それこそ物心着く前から互いを知っていたように思う。
だから私にとって彼らは単なる幼なじみではなかった。同年代の兄弟姉妹。それに近かったはずだ。まぁ……。とは言ってもある程度大人になると三人は私に気を遣う使用人みたいになってしまったのだけれど。
今になって思えば……。三人とも私と私の父に忖度していたのだと思う。それこそ古代中国の後宮の宦官のように完璧に。私の顔色一つで全てを把握するようになっていた気がする――。
例の反省文発表会の翌日。朝のホームルーム時に縫製実習の石川先生がやってきた。そして彼女は教壇に立つなり「皆さんおはようございます」と緊張しながら朝の挨拶をした。その顔は心なしか暗く見える。
「突然のことですが……。来栖先生は昨日付けで退職しました。なので今日から私がB組の担任をさせていただきます」
石川先生は吐き出すように言うとクラス全体を見渡した。そして「今日からみんなよろくね」と無理に明るい声を作った。その様子から察するに……。おそらく彼女もB組の担任を任されて戸惑っているのだと思う。
それから石川先生は事務的にホームルームを行った。そしてホームルームが終わるとすぐに教室から出て行った。逃げるように。脱兎の如く。おそらく生徒たちに奇異な目で見られるに耐えきれなかったのだろう。
「これで三人目ね」
私は隣の席の小御門くんに向けてそう呟いた。小御門くんはそれに「うん」とだけ返した。三人目の担任。いつまで持つかな? 内心そう思った――。
その後。私の心配を余所に石川先生は無難にB組の担任を熟していった。最初の担任よりも強気に。二番目の来栖先生より柔軟に。それは普通の教員を絵に描いたようなものだったように思う。おそらく彼女はごく一般的で優秀な教員なのだ。まぁ……。だからこうして問題が起きやすいB組の担任を任されたのだろうけれど。
そして一学期の終業式を無事迎える頃には石川先生もすっかりB組の担任らしくなっていた。そしてそれと時を同じくしてB組の生徒たちの間で不穏な噂が流れ始めた――。




