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ロイヤルヴァージン5

 奥寺澪の話②


 それから私たちは太田邸のリビングでお茶会をした。そのお茶会にはまるで不思議の国のアリスに出てきそうな可愛らしいティーセットが用意されていた。カップやソーサーやティースプーン。そのひとつひとつが全てブランド品のようだ。……一客揃えるだけで数千円以上はするかな? と庶民的な感想を覚える。


「前からね。澪にはウチに遊び来て欲しかったんだ。ほら、私たちってクラス違うし委員長会ぐらいでしか話さないじゃない?」


 まりあはフレンチプレスから紅茶をティーカップに注ぐとそう言った。私はそれに「だよねー」と軽く返す。


「こう言うと失礼かもだけど……。私A組にはあんまり行きたくないんだよね。何か肌に合わないっていうか……。ね」


 まりあはそう言うと一瞬眉間に皺を寄せた。そしてすぐに普段の穏やかな表情に戻った。まりあは基本的に感情が顔に出やすいのだ。特に嫌悪感を隠すのは苦手なのだと思う。


「うーん。マリー的にはそう感じるかもね。ほら、ウチのクラスってみんな個性的じゃない? それもあるんだと思うよ?」


 私はそんな風にあえてお茶を濁すように答えた。本当は彼女がA組に顔を出したくない理由はよく分かるけれど、あまり触れない方が良いと思う。


「そうなんだよねぇ……。とは言ってもB組だってけっこうみんな個性的なんだけどさ。まぁ……。とにかくA組の子たちってなんか苦手かな。あ、澪だけは別だよ!」


 まりあは弁明するみたいに言うと軽いため息を吐いた。それに対して私は「そうね」と曖昧に返した――。


 まりあがA組に来たくない理由。それは香澄ちゃんがいるからだ。私も詳しくは知らないけれど、まりあと香澄ちゃんの関係は最悪らしい。……まぁ、らしいというかこれは花見川高校の全生徒が知っていることだ。だから『入学式であった特待生同士の言い争い』と言えばおそらく全ての生徒が「ああ、あのことね」と反応をすると思う。……かく言う私もその現場を間近で見ていた一人なわけだけれど。


 思い返すとあれはなかなか壮絶な口喧嘩だった。最初にふっかけたのはまりあ。そしてそれをコテンパンに言い負かしてしまったのが香澄ちゃんだった。香澄ちゃんはああ見えて口論となれば一歩も引かずに毅然と立ち向かう子なのだ。だから普段は噛みつかれない立場のまりあは手痛いしっぺ返しを食らったのだと思う――。


 私がそんなことを思い出していると不意にリビングのドアがノックされた。そしてすぐにさっき庭で会ったメイドさんが「失礼いたします」と言って部屋に入ってきた。彼女の手にはまるで結婚式のブーケのような花束が握られている。


「ありがとう水原。ちょっと見せてちょうだい」


「はい、お嬢様」


「ふむふむ。完璧ね。さすが水原」


「痛み入ります」


 私は二人のそんな会話をまるで他人事のように聞いていた。テレビ越しの西洋貴族の会話。そんな風に感じた。

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