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ロイヤルヴァージン4

 奥寺澪の話①


 五月中旬。私は花見川高校で開催されるデザインコンペティションの協賛依頼でロイヤルヴァージンの本社を訪ねた。場所は東京都港区北青山。明治神宮外苑の銀杏並木にほど近いところだ。


「――では奥寺さん。理事長によろしくお伝えください」


 形式的な協賛依頼の話が終わると太田社長はそう言って席を立った。そして「まりあ。送っていってあげなさい」と私の隣に座るまりあに声を掛けた。まりあはそれに「はいお父様」と答える。お父様呼び。まるで貴族みたいな呼び方……。と内心思う。


 それから私はまりあに促されるまま送迎の車に乗った。そして乗り込むとすぐに「良かったら新都心帰る前に私の家寄っていかない? お茶ぐらい出すから」と誘われる。


「うん。せっかくだからご馳走になろうかな。ありがとね」


 私がそう答えるとまりあは嬉しそうに「フフフ、そうと決まれば……。長谷川! 家に向かって」と運転手の男性に声を掛けた。運転手の男性は「はい。お嬢様」と一つ返事で答えた。今度はお嬢様呼び……。どうやら太田家の人たちは私の感覚では理解できないくらい高貴な一族のようだ――。


 二〇分後。私たちは太田邸に到着した。彼女の家は予想通りの豪邸で見るからに高そうな作りをしていた。地下駐車場付きの三階建て。コンクリート打ちっぱなし。しかも広い庭まである。そんな都心ではまず見かけないような家だ。


「すごい家だね」


「そう? まぁ……。少し大きいだけよ」


 まりあはさして興味ないように答えると口元に手を当てて小さく欠伸をした。そして運転手の男性に「千葉に戻るときまた声掛けるわ」と伝えた。運転手の男性はそれに「畏まりました」と答えると運転席から降りて後部座席のドアを開けた。それを見て私は『ドアの開け閉めぐらい自分でやればいいのに』と心の中でツッコミを入れる。もちろん口には出さない。


 車から降りるとそこには石畳の道があった。そしてその道はS字カーブのように緩やかに玄関まで伸びていた。庭には所狭しと白いチューリップが植えられている。白いチューリップ。おそらくロイヤルヴァージンという品種だ。RVの社名の由来であるこの花はRVのロゴにも使われいる……。らしい。まぁこれはRVのホームページにそう書かれていただけなのだけれど。


「チューリップ綺麗だねぇ」


 私は何の気なしにそう呟いた。


「ね! 綺麗よね。私この花好きなのよ。だからお父様にお願いして植えて貰ったの」


 まりあは嬉しそうに言うと石畳にしゃがみ込んだ。そしてその白いチューリップを指先で軽く撫でる。


「澪にこの花見せたかったんだ。ほら、あなたお花好きだって言ってたから」


「ハハハ、そう言えばそんな話したね」


「うん。そうだ! せっかくだから花束にしてプレゼントするわ! たくさんあるから」


 まりあはそう言うと玄関に駆けていった。そしてすぐにメイド姿の女性を連れて戻ってきた。初めて見たけれどリアルメイドらしい。秋葉原にいる類いのそれとは違うようだ。


「水原。これで花束作ってちょうだい。できるだけ綺麗にお願いね」


「はい。お嬢様」


 メイドさんはそう答えると穏やかに微笑んだ。またしてもお嬢様呼び……。そろそろ目眩がしそうだ。


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