quattro 経緯説明
「まずはへアトンさんは最初から存在していません。ここにあるのはマネキンです」
カミルイさんは布団をめくる。そこにはナイフが刺さったマネキンがあった。
「ではこれから説明しますので、入り口に集まってください」
カミルイさんがバラバラな場所にいる私達へ声をかけた。
カミルイさんの話し的には、ここにいるので全員ってことなんだろうな。そこで今が一番始まりにはふさわしい。
部屋の中は、私が使っている部屋とは変わらない。奥のドアはバスルームやトイレへ向かう物だし、私の部屋と同じクローゼットとベッドがある。ただ私物がないからか、モデルルームの感じが強い。
そのベッドの上には、ナイフが刺さったマネキンがある。カミルイさんが布団をめくったため、さっきまでと違って生々しい。
これいくらお金がかかっているんだろうか? だってマネキンは安くはないし、ナイフが刺さったことにより売ることもできなくなるだろう。
「セアラ様、これでようやく始まりますよ。でもどういう風になるのでしょうね」
カミルイさんの言葉を無視して、リリさんはあちこち見ている。
「とりあえず今はカミルイさんの話を聞きましょう」
私はリリさんの手を引っ張り、カミルイさんの周りにいる。
そこにはミーナさん、リズさん、それからローズさん、コスプレっぽい執事がいた。これ以上は増えなさそうなので、本当にここにいる人たちが参加者なのでしょう。
「ではまずは点呼をします。セアラさん」
とカミルイさんは1人ずつの名前を呼び出した。どうやら参加者の点呼の時間らしい。
全員の名前が呼ばれ、みんな『はい』と返事した。これで全員そろったのをカミルイさんが確認したので、とうとう始まるんだ。
「GMのカミルイと申します。これからよろしくお願いします。それではまずは大ホールで昼食をとりながら、これからの話をしましょう」
「この部屋は調べたらいけませんか?」
手を上げてローズさんが質問した。どうやらローズさんはかなりやる気があるみたいで、部屋のあちこちを見ている。
「駄目です。どこを調べるかは、大ホールで決めます」
そりゃそうだ。今始まったばかりだから、調べるのは無理だろう。
とはいえもうすでにこの部屋を観察することはあらかた終わった。証拠は特に見つけられなかったけど。
「そうですね。昼食の時間ですし、そのときにアリバイとかも話しましょう」
コスプレっぽい執事はうきうきで、誰よりも早く部屋から出た。
「あっ大事なことを言います。これからマーダーミステリー『瑠璃島館殺人事件』のセッションをスタートします。気分転換のために瑠璃島館へやってきたセアラさん、ミーナさん、リズさん、リリさんの4人です。この館ではローズさんとリアンさんの2人が働いてきます。その館で起きた殺人事件、果たして犯人は誰でしょう?」
そうこれはマーダーミステリーだ。役を演じながら、殺人事件の犯人を見つけるというゲーム。
私の役である『セアラ』は殺人犯ではないので、GMであるカミルイさんをのぞいた残りの中に犯人がいる。そしてコスプレっぽい執事の名前はリアンらしい、さっきの点呼でこの名前で返事していたから間違いない。
そこでまずは情報を集めるために、話し合いだ。そのためにも大ホールで集まって、昼食をとりながら話すのが一番良いだろう。
大ホールにはさっきまでと同じく大きな机、こぢんまりとした本棚もある。
周りを見てみると、他の人は食事の準備で忙しそうだ。私は公爵令嬢なのだから手伝わなくていいはず、そこで本棚へ近づく。
「これはイタリア語の本かな? 英語とは雰囲気が違う」
私は別に外国語のことに詳しくないけど、背表紙を見る限りイタリアっぽい感じがする。
その中に一冊だけノートがあった。
「えっと『奈良レインボーフェスタ、奈良レインボーパレードボランティア日記』って本なのね。うーんどういう内容だろうか」
いまいちよく分からないので、ノートを本棚に片付ける。
「セアラ様、食事の時間ですよ」
リズさんの声がする。どうやら昼食の準備が終わったらしい。
私はリズさんが案内してくれた席に座った。私は公爵令嬢なので奥の席で、周りにはリズさん、ミーナさん、リリさんがいた。
「ではいただきます」
カミルイさんの合図とともに、食事が始まる。
ナポリタンとサラダ、そしてメインが牛肉のステーキだ。物価高の今、とても貴重な食事になっている。
少なくとも私が通っている学校の寮では、ステーキなんて全く出ない。そこでひとかけらずつ、ゆっくりと味わっていく。
「今回はこのマーダーミステリーに参加していただき、誠にありがとうございます。今日はリアルでのマーダーミステリーとのことで、ヒントが書いてあるカードを部屋に行って探していただきます」
マーダーミステリーを私はしたことがないので、リアルでのマーダーミステリーがマーダーミステリーとの違いがあるのかよく分からない。
でもカミルイさんの感じからすると、このイベントは独特なのだろう。
「ということはヒントとなるカードを探して、あちこちの部屋へ行くのですか? この人数ですとTRPGみたいに机の上でするかと思ったんですけど」
ローズさんが手を上げて、質問する。
TRPGを私は知らないので、ローズさんが何を言っているのかは分からない。
「脱出ゲームみたいな感じですよ、どっちかといいますと。そのためにカードを集めると謎が解けるような、簡単なつくりにしています」
へーこのマーダーミステリーは簡単らしい。いやそれはカミルイさんにとって簡単であり、私には関係ないか。
「ではまずは自己紹介をしましょうか。役名とハンドルネームをお願いします」
どうやら自己紹介の時間が始まったらしい。今までと違ってハンドルネームを言うから、マーダーミステリーとはあんまり関係なさそうだ。
「私からいきます。リアン・ラーゴです。ハンドルネームはるれです。よろしくお願いします。まだミスには詳しく、何度もしたことがあるので気軽に頼ってください」
この中では一番年が植えそうで、少しおじさん感もある。マーダーミステリーが好きと言うことは、このためにわざわざこの島へ来たのかな?
「ローズ・イゾラです。よろしくお願いします。ハンドルネームはまつで、私もまだミスには詳しいです」
るれさんよりも年下そうだけど、この中では一番しっかりしていそう。実際この中ではリーダーになれそうな感じがする。
「私はリリ・フェッロです。ハンドルネームはくるみで、この島の高校生です」
「私はミーナ・スターニョで、ハンドルネームはさくらです。私もリリと同じく高校生です」
「私はリズ・オットーネです。ハンドルネームはももで、リリやミーナと同じく高校生です」
3人が適当に自己紹介をする。3人ともマーダーミステリーの話はしない、やったことないはずだから。
「私はセアラ・ドゥーカです。よろしくお願いします。ハンドルネームはいちごです」
ということで3人にそろってさらっとした挨拶をしてみた。まあ別に私の事なんて、詳しく知らなくても良いでしょ。
「今日はこのメンバーでしていきます。ではみなさんにしかできない、ゲームの世界を作りましょう」
カミルイさんがうきうきとした、高い声で話し続ける。
別にマーダーミステリーをしたら何かが変わるわけではない。それでも今は答えを出すことが大事だ。
だってマーダーミステリーに参加すると決めたのは、自分だから。




