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『瑠璃島館殺人事件』  作者: 西埜水彩
『瑠璃島館殺人事件』
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2/10

due 事件発生前

「失礼します」


 リリさんが瑠璃島館のドアをノックする。


 なんと瑠璃島館にはインターフォンがないから、ドアをノックするほかない。でもこの館は大きいから、ドアを揺すった方が早いかもしれない。


「お待ちしました。GMのカミルイです。瑠璃島館へようこそ、皆様。セアラ様、ミーナ様、リズ様、リリ様の4人ですか?」


 ノックが終わったと共にドアが開き、GMのカミルイさんが出てくる。どうやらこの陰が薄そうな大人のお兄さんが、今回のまとめ役らしい。


「リリ・フェッロです。よろしくお願いします」 


 ドアをノックしたリリさんが最初にカミルイさんは招待状を渡す。そのあとにミーナさんとリズさんも同じようにした。


「私はセアラ・ドゥーカです。よろしくお願いします」


 私はおじぎをして、他の3人と同じように招待状をカミルイさんへ渡す。


 私達は一緒に来たものの、本来なら1人ずつで招待されたはずなのだ。そこでそれぞれ招待状を渡した。


「ありがとうございます。こちらでお客様は皆いらっしゃいました。ではこの瑠璃島館の世界をお楽しみください」


 カミルイさんはドアを開けて、私達を中に招き入れてくれる。


 玄関へ入ってすぐに、大きな部屋についた。学校の体育館くらいあるんじゃないかな? それくらい大きくて、なおかつ少しお金がかかっているような雰囲気のある部屋だ。


「では後で案内の者がきますので、私は失礼します」


 カミルイさんはおじぎをして、部屋の奥へと行く。


 学校の先生以外の大人と会う機会が少ない私にとって、カミルイさんは先生じゃない大人だから珍しいはずだ。でもカミルイさんがとても地味なせいで、印象が薄い。


 なんだろうカミルイさんは真面目そうだけど、それ以外に言うことはなさそうだ。


「もうこれで始まったのですね」


 ミーナさんは部屋のあちこちを確認している。掃除担当だから、部屋が気になるのかな?


「案内の人が来たら分かりますよ」 


 リリさんは早速近くの椅子に座っている。お嬢様である私が立っているのに、それを気にせず座るなんてリリさんはかなり図太いメイドさんかもしれない。


「皆さんこの館で働いているローズ・イゾラです。では皆さんを部屋に案内します」


 スカートが長いきちっとしたメイドさんの格好をした人が現れて、挨拶をしてくれた。


「よろしくお願いします」


 ミーナさんが軽くお辞儀をして、リリさんが椅子から立ち上がる。


 そこでローズさんの後ろについて、ミーナさんリズさん、リリさんの後ろに私が歩いて行く。


 階段を上り、2階に到着。どうやらここに私達が泊まる部屋があるらしい。


「この部屋がセアラ様の部屋で、隣がミーナ様達の部屋です。一番奥の部屋はヘアトン様という別のお客様が使っています」


 階段近くの部屋が私、そしてその隣の部屋がミーナさん達。最後がへアトンさんが使っている部屋らしい。


「昼食が12時からですので、11時50分に大ホールへ来てください。大ホールは一階で、玄関から入ってすぐにある部屋です。さっきまでいた部屋でもあります。ではその時間までは、ここにおくつろぎください」


 ローズさんは深くお辞儀をして、立ち去っていく。


「私は部屋でゆっくりするから、皆はついてこなくて良いよ」


 セアラ様はお嬢様なのでメイドも部屋へついてくるかもしれないけど、なんかうっとおしい。


 どうせ後で会うのだ、今は1人でいさせて。


「かしこまりました」


 リリさんが軽く答えて、さっさと自分の部屋へ入ってしまう。


「昼食前に髪を整えますので、早めに来ます」


「何かあればお呼びください」


 気合いの入ったリズさんと控えめなミーナさんも、リリさん同様に部屋へ入っていく。


 さーて私も自分の部屋へ入ろうっと。


「うわーお」


 部屋の中にはベッドとクローゼットがある。


 ベッドは少しお高そうな、それこそ公爵令嬢にふさわしそうな寝具が使われている。


 ところで持ってきた荷物はどこに片付けたら良いのか? クローゼットかな?


「鍵がかかってる」


 合板なんて一枚も使われていなさそうなずっしりとしたクローゼットのドアは、押しても引いてもびくとも動かない。どうやらクローゼットには鍵がかかっているみたい。


 そこで荷物はクローゼットに片付けるのを諦めて、とりあえずベッドの上に置く。どこに置けばいいか分からないし、枕から遠くの布団の上ならいいか。


 部屋の中にはクローゼットとベッドしかない。机や椅子があっても良さそうなのに、それもない。


 ということはあれかな? これ部屋で座りたくなったら、ベッドに座るしかないのか。


 もったいない、このベッド寮よりもいいはずなのに、もったいない。


 そうだ。トイレやバスルームもあるんだった。ベッドの足下近く、部屋の奥に壁とドアがあるから、その先にバスルームやトイレがあるのだろう。


 行ってみよう、奥のドアに手をかけると、あっさり開いた。


「トイレとお風呂が別だ」


 噂によるとこういう宿泊施設だとトイレとお風呂が一緒のこともあるらしいけど、ここはそうじゃない。


 奥の部屋に入ってすぐ、左右に部屋がある。片方がトイレで、もう片方がバスルームなのだろう。


 どっちかどっちかなんて、同じドアだから分からない。とりあえず右のドアを開けると、そこにはトイレだった。照明がオレンジで明るくて、当然のように消臭グッズが充実している。


 となるともう片方の部屋にはバスルームがある。トイレから出て、今度はさっきとは違う部屋へ行ってみよう。


 今度はバスルームだ。洗面台がある脱衣所の奥に、プラスチック製のドアを開けるとそこには湯船とシャワーがある。今までこんなこぢんまりとしたお風呂を見たことがないので、新鮮だ。


「見たことがないシャンプーやコンディショナーだ」


 全く分からない言語で書かれているので、どっちかシャンプーかコンディショナーかは分からない。


 一応固形石けんがあるから体を洗うのはこれで、チューブタイプの物は洗顔料かな? 言葉が分からないから、見た目で推測するしかない。


「うーん世界観作りかな?」


 なんせ私のような公爵令嬢が婚約者に婚約破棄されることが当たり前にある世界では、できるだけ日本っぽさをなくしたいのかもしれない。


 いやいやそれよりもわかりやすさを大事にしてほしい。アルファベットだから英語かと思えばそうじゃないみたいだし、どう読むのか分からない。


 それともここのあるものは使われないこと前提なのかな? それにしても新品だから手が込んでいるけど。


 他にも見てみるけど、変わった物は特にない。


「これでいいのかな?」


 今のところは何も起きていない。殺人事件が起きているような雰囲気もない。


 まあいいや、バスルームから出て、ベッドに寝転ぶ。もうこれ以外今はすることがない。


 そこでリズさんが来るまで、休もうっと。



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