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『瑠璃島館殺人事件』  作者: 西埜水彩
『瑠璃島館殺人事件』
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1/1

uno 瑠璃島館へ行く

 私の名前はセアラ・ドゥーカ。父親が公爵であり、そのため公爵令嬢ってことになる。そこで王子様と婚約していたけど、なんと婚約破棄されてしまった。


「島の外で流行っている小説みたいだ」


 ついついつぶやいてしまうくらい、ベタな悲劇だった。そんな悲劇にあったセアラは落ち込んで、今は気分転換のために旅行中。


 そしてこれから宿泊先である、瑠璃島館へ向かう。


「セアラお嬢様、行きますよ~」


 私と一緒に瑠璃島館へ行く人が、こっちにやってきた。


 もう世界観にどっぷりつかってしまったらしく、私のことを『セアラ』と呼んでいる。


「もうカード読んだんだ。早いね」


 今まで読んでいたカードを鞄に片付けて、話しかけてきた人を見る。


「そうですよ。ほら気楽にしましょーよ、所詮娯楽ですよ」


 その人はとってもフランクな感じで、緊張とは縁遠そうに見える。


「そりゃそうだね。じゃあ行きましょうか」


 私は椅子から立ち上がる。


 ここは図書館の中。周りに本棚がたくさんあって話し声もあまりしない静かな空間だから、あまりおしゃべりはしたくない。


「それにしてもセアラお嬢様が図書館なんて珍しいです」


「そんなことないよ。図書館は好きだもの」


 実際私はセアラが図書館好きなのかは知らない。でもこれ以上会話を続けたくない私は、急いでロビーへと向かう。そしてそれに黙って付き合う同行者。


 ロビーにはさっき話しかけてきた人と同じ感じの人がいた、しかも2人だ。よしこれで全員いるな。


「私はリズ・オットーネです。セアラ様の身だしなみ担当です」


「はじめまして私はリリ・フェッロです。ミーナさんとリズさんのフォローをします。これからよろしくお願いします」


 赤髪ショートの子がリズで、水色セミロングの子がリリ。2人とも髪色が派手な特別な子だから、ちょっと周囲から浮いている。


「私はミーナ・スターニョです。掃除担当ですが今回ご一緒できて幸いです。よろしくお願いします」


 他の2人が自己紹介をしたからか、さっき話しかけてきた人も名乗った。どうやらさっきは、自己紹介をするのをこの人は忘れていたみたい。この子はピンク色の眼鏡と三つ編みでおとなしそうだけど、眼鏡とよく似た色の髪が少し周囲から浮いているかもしれない。


 一応この島にはここにいる3人のようにカラフルな色をした髪の子、特別な子が多くいる。でも島の外ではこれほどカラフルな色をした髪の人はあまりいないし、この島の大人だってこんな派手な髪をしているのはまれだ。


 そこで大人が多い図書館では私達は目立ってしまう、私だって髪が緑色なのだし。そこで合流したのだから、早めに出た方が良いだろう。


「私はセアラ・ドゥーカです。これからよろしくお願いします。では行きましょうか」


 私も自己紹介をする。


 実は私が公爵令嬢で、残りの3人は公爵令嬢につかえるメイドさん。私がこの中では一番偉いのだから、いきいきとリーダーシップをとろうっと。


「えっとこの図書館から瑠璃島館へ歩いて行きます。セアラ様、リズさんとリリさん行きましょう」


 ミーナさんは行き先に詳しくさっさと歩いて行く。それについていく、私と残りのメイド達。


「それにしてもここに来たのははじめてです」


 リリさんは楽しそうにスキップをしている。


「私もですよ。ここにいるみんなそうでしょう」


 私達には自由にどこかに行けるわけじゃない。せいぜい学校と寮を往復するくらいだ。許可がなければ、それ以外の場所へは行けない。


 それを考えたら、今回図書館で待ち合わせて瑠璃島館へ行けるってことは、かなり異例なんだ。


「やっぱりセアラ様はセアラ様ですね。1人だけお嬢様って感じがします」


 リズさんは私の髪を見ている。きっと長い髪がお嬢様っぽいのだろう。


「別に長くしたくて長くしているわけじゃない」


 事情があって切れないだけど、本当は他の3人みたいに短くしたい。この髪にはお嬢様っぽい優雅さなんてない。


 それならリリさんの方が肌は綺麗だし、彼女が一番お嬢様っぽいだろう。


「私だとセアラ様のように王子様と婚約するために頑張るなんて無理ですもん。私にぴったりなのは掃除ですわ、そこで私はミーナが一番なのです」


 ミーナさんは何でか分からないけど、張り切っている。


 瑠璃島館へ行くのは気分転換なので、そこまでのやる気はいらない。むしろもう少しゆるゆるになってほしい。


「私はそこまでおしゃれに興味があるわけではないけど、リズとして頑張りまーす。それにしてもここの地面歩きづらいです、靴に草がつきますよ」


 おしゃれに興味がないのに、靴のことが気になるリズさん。


 リズさんはミーナさんと違って演じている感というか無理している感が少しするので、ちょっと合っていないかもしれない。


「確かに歩きづらいです」


 図書館近くの地面はコンクリートで整備されて歩きやすかったけど、瑠璃島館へ近づくにつれて自然が増えてきた。


 どうやら瑠璃島館は森の中にあるらしい。そんなわけで気がついたら空には大きな木、地面は短い草が土に生えてるという自然そのものだ。


「学校近くでいると、こういう森は行きませんもんね。私もこの森にははじめてきました」


 リリさんは慎重にゆっくりと、最後に歩いている。実はこの中でリリさんが一番おしゃれ好きなのもあってか、靴に泥があんまりつかないようにしているらしい。


 確かにこの森の中へ来たのは初めてかもしれない。学校の近くにある森だけど、行く機会が今までなかった。


「立ち入り禁止ってわけではないですから、また許可を取って来ましょうよ。とはいってもこの森に何もなさそうですが」


 ミーナさんは森の中をよく見ている。


 ここは『露命の森』という名前で、そこそこ広い。でも建物が瑠璃島館しかないからか、基本的には自然メインだ。


「ところでリリさんは自分があっていると思いますか?」


 リリさんだけ自分のことについて語っていないので、聞いてみた。


 ミーナさんみたいにぴったりなのか、はたまたリズさんみたいにギャップがあるのか。一体どっちなのだろうか?


「うーんどっちかというと私はリズさんっぽいですよね。でもリリでも合っている気がします。なんせ私は一番この中でよそ者ですから」


 淡々と事実だけをリリさんは告げるので、これじゃあ嫌なのかいいのかはよく分からない。


「リリさんは研究所へよく行くから、学校から出ない私達と少し違うか。でも今は仲間だからね」


 リリさんはこの旅のために雇われたメイドさんだから、研究所へよく行く人にはぴったりかもしれない。


 とはいえリリさんはおしゃれが好きな人なので、リズさんでも良かった気がしなくもない。


「リリさんは絶対リリさん、でもってリズさんは絶対リズさん。私やセアラ様もそうです。じゃんけんで決まったので、当たり前です」


 と適当な感じで、ミーナさんは言う。


 いやいやじゃんけんで決まったのだったら、それは絶対じゃないでしょ。ただの運だ。


「あっあそこに瑠璃島館がありますよ」


 リズさんがある館を指さす。


 その建物は始めて見るような家だった。家だったらさっきまでいた図書館近くにもたくさんあったけど、そのどれよりも大きい。


「こんな大きい家始めて見ました。写真でイメージしたよりも、大きな館です」


 ミーナさんが立ち止まって、瑠璃島館を見る。


 たしかにこの島では疎遠そうな大きな家かもしれない。でも島の外ではこういう館が多いのだろうか?


「早く行きましょう。待ち合わせ時間もありますから」


 リリさんに後ろからせかされて、私達は歩く。


 これから瑠璃島館へ向かう。ここには非日常が待っていて、そのことについて私はもう知っていた。


 果たして何が起きるのだろうか? 誰が死ぬのだろうか?



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