5.Cafe Time with you(10)
本日、1話目です。
10.始動⑤
10人が入れるカンファレンスルームで急遽ミーティングをすることになった。メンバーは兄の樹と神崎透さん、石川さん、カレンさんと同期の坂口裕子さんと田中君。そして――。
(高瀬亜紀さんと吉岡里奈さん、か。この二人、だよね)
以前、噂をしていた3人のうちの2人だ。
(気にし過ぎ、だよね)
そう思いながらもお腹の違和感は治まらない。
「それでは、始めましょうか、山本瑞葵さん」
「あ、はい」
石川さんの掛け声でざわついた空気が収まり、私に視線が集中する。
チリチリと左から棘を感じた。
俯き、手元の資料の隅を指先で少しなぞる。
小さく息を吐く。
右から順に全員の顔を確認する。
震えそうな手を、ぎゅっと握りしめた。
「資料をお配りします。皆さんで、こちらを3か月以内に、完了してもらい、ます」
石川さんがコピーした資料を配ってくれて、それぞれがペラペラと捲って確認していく。
カレンさんは途中で捲るのをやめ、口元に手を持っていき、ゆっくりと目を閉じた。
田中君は、少し顔色が青くなって何かをつぶやいている。
坂口さんも顔を少し曇らせ、眉間に皺を寄せている。
そして、高瀬さんと吉岡さんはあからさまに苛立っていた。
「ちょっといいですか」
高瀬さんが座ったまま声を上げる。
「はい、なんでしょうか」
「これ、3か月では無理です。期限伸ばしていいですよね」
そう言いながらデスクに資料を投げ落とす。
高瀬さんの顔は明らかに私を見下している。
私の指先が、冷たくなっていく。
「高瀬さん、それは……」
石川さんが彼女に言葉をかけようとしたけど、私はそれを制止し、彼女に顔を向ける。
「延期は、できません」
少し言葉が詰まったが、言い切った。
「はあ?できるわけないじゃん!これだからまともに仕事できない人は!」
声を張り上げながらデスクを叩きつける。
(わあ……怒ってるわ。そうだよね、怒りたくなるわよね)
思いついたことを書き連ねたもので、正直詰める必要が満載のものだ。
仕事ができないと思われても、仕方ないとどこかで思ってしまう。
でも、全くできないとは、思っていない。
「高瀬さん」
彼女の名前を呼んだ。そして、反対側から出席者全員の顔を確認していく。
カレンさんは腕を組んで目を閉じたまま、田中君は少しそわそわしているように見える。坂口さんは、彼女らしく背筋がピンと伸び、まっすぐこちらを見ていた。
最後に彼女の目をしっかりと見つめ、問いかける。
「無理だと思う理由を、全部教えてください」
私の声が、部屋に響いた。
2話目も後ほど投稿します。




