5.Cafe Time with you(9)
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9.始動④
朝方まで話し合いをした私たちは、朝ご飯を軽く食べた。
「さすがに疲れたよ。瑞葵の世界って、こんなに広かったんだね」
兄がぽつりとつぶやき、透もそれに続く。
「俺、ブラックホールに足を踏み入れたのかと思いました」
「ブラックホールは言い過ぎですよ。でも、今できる技術では半分くらいしか実現は難しいですよね?」
VRの機能を使わないとできないことが多くあった。だが、今回はそれを想定したものではない。
「いつか、できる時が来るさ」
兄は頭をわしゃわしゃと撫でながら笑う。
そして、いったん仮眠を取り3人で会社へと向かうことにした。
お昼を少し過ぎた頃、会社に着いた私たちは石川さんの元を訪ねた。
「皆さん徹夜されたようですね。お疲れ様です」
そう言って書類を手渡された。私の手伝いをしてくれる人の名前がそこにあった。
カレンさんの名前があり顔がほころんだが、その下に書かれている名前を目にして笑みが消えてしまった。
「……」
(以前、私のことを噂していた人だ)
3人でいつも行動している人たちのうち、2人がメンバーに入っていた。鳩尾のあたりに違和感があり、思わず手でさする。
(気にし過ぎちゃ、だめ)
そう心の中で、自分を何度もなだめた。
「まずは枠と構想が決まったらできそうなものは次々とメンバーに渡して期限を設ける。その繰り返しだね。パーツが揃ったらそれを組み立てていく。ここでバグが起こりやすいから気を付けて……」
兄が流れと指示だしをレクチャーしてくれた。
「枠と構成は、昨日の話から簡単に作ってみた。ここから詰めていこう」
透がすでにラフを書き上げてくれていた。
「あ、すみません。ありがとうございます」
「いや、これくらいなら簡単だし。気にしなくていいよ」
そう言って笑ってくれたが……。
(本当なら私がするべきことなのに……)
ツキリと痛みを腹に感じたが、今はそれを気にしている暇はない。
「10分後にメンバーと顔合わせしましょうか」
石川さんがタブレットを手に召集の提案をしてくれた。
「急な招集ですが、いいのですか?」
「本来ならよくありませんが、正直少しでも進めないと間に合いません」
「そ、そうですよね。すみません」
「山本瑞葵さん。あなたが謝らなくてもいいのですよ」
「そうなのかもしれませんが、なんというか、申し訳なくて……」
人に手伝ってもらうことに慣れていなくて、
ついつい「すみません」や「ごめんなさい」が出てくる。
卑下たくはないのだけど、性格的なものだと思う。
優しさだと言われるとそうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
人それぞれ受け取り方は違うのだから――。
そして、この性格をよく思わない人も、
やはりいるのです。
明日は2話投稿予定です。




