5.Cafe Time with you(2)
本日2話目です。
2.コトバ
「……二人とも、わかっているよな?」
元々低音ボイスの哲平さんの声は、まさに今、地を這っていた。
ゴクリと息を飲んだ。
(息が、苦しい)
背中に冷たい雫が一筋伝う。
足先に、力が入らない。
「ここ、――会社、だから」
デスクに指をコンコンと打ちながら威圧は続く。部屋の温度が、どんどん下がっていると錯覚を覚える。
(どうしたらいいんだろう……)
声を発する許可をもらっていないから、前進もできず、また後退もできず。ただ、声の主の言葉を待つのみ。
(もう、ダメかもしれない……。体を支えるのが、辛い)
言いようもない吐き気。心臓がバクバクと脈打ち、カクッと膝が折れ、前に崩れる。
「瑞葵ちゃん!」
隣に立っていた健太郎君が支えてくれたので、地面には倒れなかった。
哲平さんと健太郎君がにらみ合ってる。
空気感でなんとなくわかった。
(どうして……)
疑問しかなかった。
この緊迫を破ってくれたのは、やっぱりこの人だった。
「哲平!いい加減にしろ!」
バンッと扉を開けてツカツカと入ってきた石川さんだ。
彼は私たちと哲平さんの間に入り、視線を遮断してくれた。
「健太郎君と山本さんは……、ちょっと久しぶりに会って舞い上がったのでしょう。ですが、一応ここは会社です。風紀を乱すのはやめなさい」
彼の背後にいる私たちに社会人として、先輩としてしっかりと叱責をしてくれる。
「反省しているでしょうから、ここから出て待っていなさい。後で仕事の話をしましょう」
そう言って退室を促す。
私達は、その言葉に従って一旦カフェテラスへと向かった。
「瑞葵ちゃん、ごめん!俺テンション高くなりすぎて!」
椅子に座った私を気遣い、ミネラルウォーターを持ってきてくれた。
感謝を述べ、すぐに水を飲み干す。
手や額に汗が滲んでいる。
ハンドタオルを持っていないのが悔やまれた。
「瑞葵ちゃん、これ使いな」
「カレン、さん……」
心配した顔でハンカチを差し出してくれた。
「ありがとうございます」
「いいよ。健太郎、お帰り。アメリカはどうだった?楽しめた?」
「あ……楽しめ、なかったですね」
二人の会話がさっきの息苦しさを和らげてくれる。
ゆっくりと、二人にばれないように深呼吸する。
汗も、引いてきた。
「落ち着いたかな。子リスちゃん」
「カレンさん、また子リスだなんて」
ふふっと笑顔が漏れる。
「瑞葵ちゃんはやっぱり笑顔が一番だよ」
カレンさんは昔と変わっていなかった。
心が、じんわりと温かくなった。
「なんていうか……面白くない、ね」
「そうよね、やっぱりって感じ?」
「彼女は元々、そういう人だったってことだよね」
影を含む言葉は、私達の耳には届いていない。
だけど、一滴の染みは、徐々に広がって行った。
今日も読んでくれてありがとうございます。
明日も2話投稿予定です。




