4.Cafe Latte(38)
今日は雨の大阪でした。
38.冷めてしまったBlack Coffee
兄が哲平さんを追いかけ、部屋には神崎さんと私だけとなった。
(どうしよう。兄からはこのまま教えてもらえと言われたけど)
ちらりとモニターを見た後、神崎さんに向き直る。
「あ、あの。このまま、教えてもらっても、いいでしょうか」
断られるかもしれないが、せっかくなのでこの機会を逃したくない気持ちがあった。
(神崎さんもご自身のお仕事あるだろうし、私が足を引っ張るわけにはいかない)
「あ、勿論。哲平さんは、樹さんが何とかするでしょ。気にせず進めよう」
「ありがとうございます!」
私たちは再びPCを覗き込んで話し込み始めた。
「神崎さん。こちらの新しいコードはクールダウンにわずかですが時間がかかるんですね」
少し気になったことを質問してみた。
「そうなんだ、それ以外は結構いいんだけどな……」
「そうですね。あまり時間がかかるというもの……。それだと、これまでのものと組み合わせる……もの難しそうですね」
「うん。うまく繋げられないんだ。だからと言ってこれまでのものだと負荷がかかりすぎるし……」
「神崎さんは、……どういったものが作りたいと思っているんですか?」
「俺か?ん……そうだな――。作っていく工程を全部とまではいかないでも、ある程度は操作できないかと思っている」
「あ、わかります!例えばなのですが、ソードを作る時の鍛冶の工程は、ボタンを押すとハンマーで叩く……とか、面白そうですよね」
楽しくてついつい“自分がやりたいこと”を話してしまった。
「……」
神崎さんからの返事がない。
(しまった!思ったことをそのまま口にしてしまった!)
「あ、あの。すみません。ちょっと好き勝手言いました。気にしないでください」
慌てて声をかけるが、神崎さんが微動だにしない。
(終わった……)
今日はもう教えてもらうのは無理だろうとのっそりと立ち上がろうとした。
「瑞葵ちゃん、それ、いい!本当に自分で作っているような感覚になる。ちょっと詳しく詰めよう!」
そう言って、メモ用紙を奪い、書き込みをし始める。
基本動作の項目をかき上げ、フロチャートに落とし込む。
その作業を覗き込みながら“うんうん”と相槌を打つ。
「あ、ここなんですが、もしかするとさっきの新しいコードを生かせませんか?」
これまた、思い付きを指さしながら口にする。
「……そうだな。これは使えるな」」
そう言って作業の工程を書き加えていく。
カリカリ シャーシャー
「いい感じだ……」
「そう、ですね。少し重そうですけど」
「それはここからどうするか考えたらいい。……瑞葵ちゃん、他にはないか?この際だから、やりたいことを言ってみろ」
「いいんですか?えっと、ですね……」
そこから延々と思い付きを話し込む。
胸の奥が、じわりと熱くなる。
今まで漠然と思っていたことが、形になろうとしている。
それに、人から学ぶって、自分の領域を広げる感じで新鮮。
もっと、もっと、いろんなことが知りたい。
時間がずいぶんと過ぎていたことに気が付かなかった。
「二人とも、一旦止めなよ。休憩してないだろ」
兄が声をかけてくるまで、時間の経過まで気が回らなかった。
「お兄ちゃん。あ!もうこんな時間!お昼ご飯の用意するね。神崎さんもご一緒しませんか?」
「え、いいの?」
「はい!先生してくれてますから、是非」
そう言って立ち上がる。
テーブルの上を片付けようとカップを集める。
「……」
哲平さんが使っていたそれには、冷えたコーヒーがたくさん残っていた。
「ごめんなさい」
カップに向かって、小さくつぶやく。
冷めた黒が、
やけに重たく見えた――。
今日も読んでくれてありがとうございます。
天気が悪くて頭が痛いです…。
明日も投稿予定です。




