4.Cafe Latte(37)
37釘を刺す ~樹side~
「……黙ってて」
瑞葵から言葉が漏れた。
(やばい。瑞葵が集中してる時に!哲平のバカ!)
俺はただ見守るしかなかった。
妹の瑞樹は、普段は何も言わない。
でも、掴むと決めたら止まらない。
何かがあったわけではない。
生まれ持った性格なのだろう。
誰も強制や強要はしないのに。
ただ、集中しているときは人が変わったかのようになることがあり、手を振り払われることがあった。本人は悪気がないので後で、謝罪しまくっててかわいそうになるくらいだ。
そして、こういう時の瑞樹は行動力が半端ない。
あの事故この時もそうだった。
俺が諦めかけた時、あいつだけは動いていた。
だから、瑞葵をそっとしておくことが大事だった。
哲平が「俺、帰るわ」と言って立ち去ろうとする。
瑞葵は、何もできずおろおろするばかり。
(仕方ないな)
「瑞葵。お前、今何か掴めそうなんだろ。そっち優先な」
そう言って哲平の後を追う。
「哲平、悪い。瑞葵は集中してる時はほっといてやって欲しいんだ」
「いや、俺こそ悪い」
こっちを見ようとしない。落ち込みすぎだ。
「哲平、こっち向けって。悪いって、何に対してだ?」
「いや、それは……」
(こいつ、わかってないな)
直観的に理解した。
「お前な、何かを掴もうとしている奴の邪魔してどうするんだ。相手に失礼だろ」
口が悪くなっている自覚はある。でも、飾った言葉で言っても伝わらない。
「瑞葵のためを思うなら、守るんじゃない。ちゃんと見るんだ」
哲平は最後までこっちを向かなかった。
言うことは言った。
(置いていかれるのが怖いのは分かるけど……。あとはこいつ次第だ)
今日も読んでくれてありがとうございます。
ちょっと短めでした。
明日も投稿予定です。




