4.Cafe Latte(34)
本日2話目です。
34.何をしてしまったのだろう② ~瑞葵~
どうしたらいいのかわからずに立っていると、透が近づいてきた。
「瑞葵ちゃん、とりあえず中に入りなよ。入りたい人、後ろに立ってる」
透の言葉に気が付き、後ろを振り返ると老夫婦が笑って立っていた。
「あ、ごめんなさい。あの、どうぞ」
扉を開け、御夫婦を中に招き入れた。
何度も頭を下げ自身も店内に入る。
「ふふ……」
隣で透が小さく笑っている。
優しい笑顔だ。
瑞葵は、「へへへ」と笑みを浮かべる。
“パン好きに悪い人はいない”
瑞葵の持論は、少し偏っている。
「神崎さん。パンがお好きなんですね!何が一番好きですか?あ、乗せてあるのは甘い系が多いですね。もしかして、甘いもの好きですか?」
うれしくなり話し出す瑞葵は、マシンガントークに気が付かない。
「……あ、そう、だな。……ていうか、ちょっと落ち着け。ここ、店の中」
甘党を見透かされた透は、頬をピンクにさせ、瑞葵の言葉を止めようと言葉を選ぶ。
「あ!そうですね。それじゃ、早く買って店を出ないと。神崎さんとお話がしたいですから」
瑞葵は透を置いてパンを選び始める。
「……まあ、いいか」
透はトレーを持って会計へと進む。
「ありがとうございました~」
店員の明るい声を受け、店を出た2人。
“早く食べたい“の気持ちが顔に出まくっている。
「神崎さん、よければ家に来ませんか?兄もいますし、実は先ほどグルチャで神崎さんにお願いをしようとしてまして……」
瑞葵は、チャンスだと思い、自宅へ透を誘った。
(お兄ちゃんもいるから、いいよね)
「あ……。実は樹さんを尋ねようとしていたんだ。迷惑じゃなければ、お邪魔したい。で、お願いって?」
「実は、私、今の自分にすぐに必要になることを知りたくて。学ぶこと多すぎるんですけど、何から手を付けようか迷っちゃいまして」
「……そうか。それだったら、あとでいくつか教える」
「ありがとうございます!」
(断れなくて、よかった!でも、お兄ちゃんに何の用なんだろ?)
ふと不思議に思ったが、深く考えなかった。
それよりも、パン好き同志の会話をしたくて仕方がなかったのだ。
「神崎さんはパン派ですよね。白パン派ですか?黒パン派ですか?」
「白パン派?黒パン派?」
「はい!昔のアニメで白パンが憧れの描写がありまして。柔らかい焼き目の薄いものを白パンと呼んでいます。黒パンはカンパーニュやバタールのことなんです。どちらが好みですか?」
瑞葵は早口でまくし立てる。
「え?そんな派閥があったのか?知らなかったのだが」
「あ、えっと……。たぶん、私、だけかも……」
(やってしまった!!思わず自分がいつも思ってることを口にしてしまった!!)
恥ずかしくて指をもじもじして俯いてしまう。
「ははは!」
透の笑い声が聞こえた。顔を上げてみると、犬歯が見えるほど大きく笑っている。
瑞葵もつられて大きく笑った。
久しぶりに心から楽しいと思った。
私たちは、交差点で笑っていた。
チリッと視線を感じて道路の向こう側を見ると、哲平さんが立っていた。
なぜか苦しそうに、私だけを見ている。
私は、何かをしてしまったのだろうか――。
今日も読んでくれてありがとうございます。
明日も祝日なので2話投稿予定です。




