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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


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4.Cafe Latte(33)

本日1話目です。

33.何をしてしまったのだろう① ~瑞葵~


 鏡には瞼が赤く腫れている自分の顔が映っている。

「ん゛ん゛~」

 女の子とは到底思えないほどのおじさんうなり声を上げてしまう。

(これは、不味い。この顔をお兄ちゃんに見られたら……なんて言われるだろう……)

 昨晩、大泣きをして帰ったが、運よく樹にはバレずに朝を迎えていた。

 だけど、バレるのも時間の問題だ。


 キッチンに向かい、冷凍庫から保冷剤を出す。

 とりあえず冷やすことを試みる。

(腫れが引くのにどれくらいの時間がかかるかな……)

 焦る気持ちで時間を確認すると8:30を過ぎたところだった。

 まだ低血圧な樹は起きてこないだろう。

 なんとかなるかもしれない。

 小さく息を吐いた。


 朝食の準備をしようとすると、毎朝食べていたパンがないことに気が付いた。

(お兄ちゃんは同じものを食べたがるからな~。今から買いに行ってこようかな)

 ただの思い付きだった。


 スマホと財布とパン屋さんのロゴが入ったエコバックを持ち、メモで書置きをする。


 “近くのパン屋さんに行ってきます。 瑞葵”


 近くだから、何も起こらないはず。

 そう思い、スニーカーに足を滑らせた。


 マンションを出てすぐの交差点。

 少し長めの待ち時間にふと思いついたことをしてみようかとスマホを出す。

 アプリを開き、黒い狼のアイコンをタップする。

「……」

 なかなか文字を打てず、信号が青になっても渡れずに立ち止まったままだ。

(大丈夫。ただ、お願いしてみるだけ、だから。断られても、忙しいって思えばいいんだから)

 自分を自分で慰め、震える指を動かす。


 “神崎さん、ご相談があるので、個人で連絡させてください”


 時計を見ると9:00を少し過ぎたところだった。

 送信しても、迷惑をかける時間ではない。

(大丈夫。……大丈夫)

 ゆっくりと深呼吸をして、“送信ボタン”に視線を落とす。

 瑞葵の指に、迷いはなくなっていた。

 次の瞬間、グループチャットに表示が上がる。


(あとで神崎さんに個人チャットを送ろう)

 心が軽くなり顔を上げると信号が青に点灯した。

(季節限定のフルーツが乗ったパイ生地のパンがあったらいいな)

 足取りが軽く、スキップしたい。

 自然に笑みがこぼれ、鼻歌が旋律を奏で始めた。



 カランカラン……


 木製の扉を開けると、小麦パンの焼けるいい香りがふんわりと出迎えてくれた。

「いい香り……」

 声が意図せずに口からこぼれる。

 誰も聞いてないと思っていた。

 知り合いはこの近くには住んでいない。

 完全に油断していた。


「ああ、いい香りだな」


 ひゅっと息を飲んでしまった。

 声のする方を向くと、神崎透がトレーにいっぱいパンを積み上げて立っていた。

「え!」

 目を見開き、声を上げてしまったのは仕方がないはず。

 さっきチャットを送った先の人がいるなんて思わなかったのだから。


後ほど2話目投稿します。

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