4.Cafe Latte(31)
本日1話目です。
31.どうしてこうなってしまったんだ② ~哲平side~
「樹、落ち着け。お前がそんなことじゃ纏まらない」
湊が落ち着いた声で諭す。
「瑞葵ちゃんのことを俺たちは知らないんだ。任せていいのか、心配になっても仕方がないだろう。まず、そこから始めるべきだ」
そして、正論を樹に突き付ける。
「……湊、悪い。助かった」
その樹はというと、少し逡巡した後、怒りが収まったようだ。
「哲平もごめん。痛かっただろ」
「勘弁してくれ。お前がキレると、ろくなことがない」
「いつも哲平には迷惑かけるね。これからもよろしくね」
気を付けるつもりはないらしい。
「理央さんと朔さん、俺たちは年齢や性別で物事を見ないはずだが。あなたたちの最初のスタンスがおかしい」
透が珍しく意見を言い始めた。
顔を見ると、気後れすることなく二人を見つめていた。
「透、そう言っても、このゲームは俺たちの原点なんだ。お前もサブになれって言われて悔しくないのか」
「……俺は、このゲームに思い入れがあります。人生を大きく変えることが出来たんだ。でも、それとこれとは違います。本人のレベルはまだまだだでしょう。経験も足りない。だったら、俺たちが、育てていけばいい」
「透……。それで、いいのか?」
朔が透にふらふらと近寄りながら、声がすがるもののそれになっている。
「……はい。俺は、……彼女を育てます」
透の言葉に理央と朔の体が固まってしまった。
(二人には、まだ受け入れられないか)
今はいい。きっと認めざるを得なくなるだろう。
「じゃあ、透に瑞葵のことは任せるね」
樹がそう言い、手をひらひらとさせ退室する。
今日はもう終りだと、全員が受け取った。
ぞろぞろと部屋を出て帰路につく。
理央と朔の顔には、疲れとくすぶりが見受けられた。
(グルチャには気を付けるか)
瑞葵には今日のミーティングで傷ついているだろう。
俺が守ってやればいい。
左の口角を少し上げ、俺は瑞葵を迎えに行く。
カチャ……
納戸の扉を開けると、瑞葵は三角座りをして体を震わせていた。
ゆっくりと近づき、そっと肩に手を乗せた。
「瑞葵……」
名前を呼んだ。慰める?それとも甘くささやく?
考えたが、瑞葵にはそんな軽い言葉をかけたくなかった。
悩んでいると、瑞葵がゆっくりと振り向く。
来ているカーディガンの袖が涙で色が変わっている。
目の周りは擦りすぎたのか赤く腫れていて、鼻水が垂れ流しだ。
(ああ、泣きすぎじゃないか……)
傍でしゃがみ、優しく頭を撫でた。
「う゛……」
小さな嗚咽がこぼれ、大粒の涙が溢れている。
(今はたくさん泣かせてやろう)
手を背中に持っていき、ゆっくりとさすり続けた。
(傍には、俺がいる)
彼女が立ち上がるまで、俺が支えればいい。
どれくらい時間が経っただろうか。
瑞葵は泣き止み、放心している。
お腹もすいただろうし、ここにずっと座らせておけない。
「瑞葵、そろそろ行こうか」
軽く背中をタップし促す。
「……はい。ごめんなさい」
声が震えていた。
いろんな感情で心が揺れているかもしれない。
あたたかい飲み物を用意しようと食堂へ向かう。
お手伝いさんにブラックコーヒーとカフェオレを頼んで椅子に腰かけた。
彼女はずっと俯き、焦点が合っていないように見えた。
黙ったまま、こちらを見ようとしない。
「……」
お手伝いさんがマグカップを持ってきた。
そっと手前にカフェオレを置く。
俺の持っているコーヒーのビターな香りと甘さをまとうカフェオレの香りが絡み、部屋に漂う。
瑞葵がカフェオレに気付き、手を伸ばした。
両手で引き寄せ、小さな口が湯気を吹き揺らす。
柔らかな唇がカップの淵に当てられ、少し口に含んで飲み込み、小さく息を吐く。
開いていた窓から風が吹きこんだ。
瑞葵は風に誘われ外へと視線を移す。
下弦の月を見つめる。
さっきまでのうつろな目はもうない。
――彼女の瞳に、俺は映らない。
後で2話目投稿します。




