4.Cafe Latte(30)
遅くなりました。
30.どうしてこうなってしまったんだ① ~哲平side~
「はあ……」
俺の絶望が、ため息とともに漏れている。
異変は、数日前だった。
コンコン
「失礼します」
俺の返事を待たず、瑞葵が入ってきた。
「え?瑞葵?」
気の抜けた声が出てしまった。
「はい、瑞葵です。あの!次のミーティングには私も参加させてください」
「……え?」
急な瑞葵の訪問よりも、この発言の方が衝撃的だ。
「ですから。次は私も参加したいのです。いいですよね?」
(ちょっと!待ってくれ!断言するのを初めて聞くぞ!)
俺の口はパクパクと動いているが、音は出ていない。
「哲平さん?」
覗き込む瑞葵の顔が、近い。
(……可愛いかよ)
耳が熱を帯び、どくどくと脈打っているのがわかる。
「ん゛ん゛!……何でもない。で、参加って?」
なんとか平静を装えた。……たぶん。
「はい。その、私もメンバーなので、参加したいです」
決意のこもった瞳は揺らがない。
「ん……」
(困った。透からの了承は見込めない)
「どうしてもなのか?」
「はい」
「でも、あいつはダメだと言って聞かないしな……」
「私も、引けません」
(参った……。瑞葵は少し頑固なところがあるって言ってたな)
少し興奮気味なのか、頬がピンクに色付き膨らんでいる。
「どうしても?」
「はい。どうしてもです」
鼻息も荒い。
(子どもかよ~)
ふふっと笑ってしまう。
「仕方ない。瑞葵、普通に参加はさせられない。条件がある」
「わかりました。条件飲みます」
「条件聞いてから返事してくれ」
「はい。聞きます」
(困ったちゃんになってるな)
瑞葵の頭に小動物の耳があるような錯覚をしてしまう。
(子リスか?)
にやけそうになるのを律し、話を戻す。
「条件は3つ。1つ、声を出さない。2つ、気配を隠してバレないようにする。3つ、どんなことを耳にしても、落ち込みすぎるな」
「はい。守ります」
「……」
ミーティング当日、物陰に瑞葵を隠し、舌戦が始まった。
「哲平、戦闘サイドの進捗は?」
樹が今日も冷たい視線で話を進める。
「骨組みはできた。ここから膨大なコードとの闘いになる」
「順調だね。朔は?ビジュアルはできてる?」
「メインはね。設定をもう少し詰めさせて。あと、クラフトは……」
朔が言葉を濁し、透に視線を向ける。
「透、進行の妨げになってるの、わかってるよね。言い訳を聞こうか」
樹の声が1段低くなる。
「まだ、です。その前に、前回の話もまだ終わってません」
「それが、今日瑞葵を避けた理由か?」
「はい。今のままでは彼女を参加させられない」
透が、言ってしまった。
「仕方ないだろ。瑞葵ちゃんは経験も足りないし、知識もまだまだだ。瑞葵ちゃんでは荷が重すぎるだろ」
理央が本音を話す。
「だから、それはこれから……」
「これから?甘いんだよ!透は!今回のリニューアルは、規模がでかすぎるんだ!つぶす気か?」
理央が怒鳴る。
「そうだ!樹も、なんで妹を入れる?サブでいいだろ?遊びじゃないんだ!」
ドン!
怒鳴りながら、テーブルを拳で叩きつける。
大きい音が響いた。俺は瑞葵の隠れているところにちらりと目を配せ、何も起こらないことに安心する。
だが、それはほんの一瞬だけだった。
「俺が身内びいきしていると、言いたいのか?この俺が、そんな小さい奴だと、言いたいのか?」
樹の言葉で、場が冷え込む――。
「そ、それは仕方ないだろ!まだひよっこな女の子だ。無理に決まってる」
「はあ?」
――樹が、キレた。
俺はとっさに立ち上がり、樹の前に立つ。
ガッ!
樹の拳が、俺の左ほほを穿つ。
ガタガタッ!
ふっとばされて、辺りにあったのもが倒れる。
(樹、本気で殴りやがったな)
左ほほが痛み、口の中で鉄の味が広がる。
――ミーティングという名の戦闘は、まだ始まったばかりだ。
明日から3連休ですね。
3日間、2話投稿できるように頑張ります!




