5.Cafe Time with you(48)
48.罪② ~巌side~
俺は、実家に帰った。
兄上の奥方が、泣いていた。
「兄上は?」
「……出ていかれ、ました」
彼女は、真っ白な手紙を握りしめていた。
親父の執務室に向かうと、頭を抱える男が目についた。
昔は、怖くて仕方なかったはずの父親が、小さく見えた。
「親父、どうするんだ」
「柳家は、終わりだ」
「クソ、だな」
ぼそりとつぶやいた。
「お前に何がわかる!この柳家を守ってきたのは俺だぞ!」
詰め寄ってくる父親の目は血走っており、冷静な判断ができないと思われた。
俺はため息をつき、この男に冷たく言葉を放つ。
「兄上は、戻ってこないかもしれません。家督は、俺が継ぐ。哲平は、俺が親になり育てます」
「なにを……。若造の癖に!」
「貴方では、一族を守れないでしょうが!兄上を、家族を守れなかった人に偉そうなこと言われたくありません!」
そう、あの女は、兄をものにするために父を脅していた。
実家に戻った俺に爺が耳打ちしてくれた。
兄上を、渡せと言ってきていると。
事業に圧力がかかっていると。
親父は、義姉に離婚をほのめかしたらしい。
兄上は、拒否をし続けた。
俺の政略結婚予定の相手が、あの女の義妹だった。
義妹を恨んで、不幸にしたくて俺に近づいたらしい。
そして、事件が起きた。
いや、俺がその場を作ってしまった。
兄の消息が途絶えた。
あの女は、怪我をしたと聞いた。
でも、怪我だけで死んでいない。
兄の護衛をしていた久遠さんが俺に会いに来た。
兄も生きてはいるが、柳家を守るためとある組織に入ったと言う。
その後、事業の圧力が消えた。
政治家の秘書が逮捕された。
これで、幕を引かれてしまった。
兄は、もう戻ってこないだろう。
生きていて欲しい。
そして、謝りたい。
なによりも、兄に会いたい。
そのためにも、俺が一族を守ると、心に決めた。
哲平と雪を義姉に任せ、俺は寝る間を惜しんで働いた。
家にも帰らず、ただ必死だった。
義姉とは形ばかりの夫婦となった。
彼女は哲平と同じように雪に愛情をかけてくれた。
申し訳ないと思ったが、家族としての愛情がここにはある。
雪にはいつか話をしたいと思っている。
母親の幸子のことを。
愛していたことを。
今も、愛していると。
あの女の娘のキョウコが戻ってこないことを知られる前に、俺から元政治家のジジイに電話を掛けた。寝たきりになったクソ外道に。
「お前の孫娘は戻らん。調べても、何も出てこん。恨むなら、俺だけにしろ」
言いたいことだけ言って、電話を切った。
さて、外道が俺を狙ってくるだろうか。
いや、キョウコの父親が来るか?
――その時は、俺が道ずれにしてやる。
ふっと、笑いが漏れた。
そして左胸にそっと右手を置いた。
その時はこの装置が役に立つだろう。
幸子、もう少し待っててくれ。
次話、最終回です。
本日中に投稿します。




