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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


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5.Cafe Time with you(49)

49. Cafe Time with you ~飲めるあたたかさになるまで~


 私達はその晩はログハウスでゆっくりと過ごし、翌日東京へと戻った。

 みんなは、何も昨晩のことを教えてくれない。

 ただ、終わったとしか――。


「お兄ちゃん、こっちに戻ってもいいの?」

 外に出てはいけないと言われ続けていたのに、帰るなんて言うものだから聞いてしまう。


「あ、うん。もう大丈夫そうだからね」

 兄は緊張感のない顔でそう言う。体は筋肉痛らしく、足が小鹿のようになっているので、言葉に真実味が薄いけど。


「ん……。よくわからないけど、巌さんが一緒だし……そう言うことにしておこうかな」

 結局は、何もわからないまま日常に戻ることになった。



 私は哲平さんの会社を退社したことになるので、次の就職先を探さないといけない。

 そうなると、今住んでいるマンションもやはり出ないといけないと思う……。


「お兄ちゃん、家を探さないと、だね」

「あ~。母さんの実家からリース物件の空きがあるから使えって言われてるみたい」

「瑞葵様、私がお二人のお世話を任されております。ご安心を」

 サツキさんが、ついてきてくれることになった。

 兄は、顔を真っ赤にし、サツキさんにハグをしている。


「仕事は、どうするの?」

「ん~。巌さんから会社を任されることになって……。半年後には就任するのかな?」

(え?聞いてませんけど)

 サラッとびっくり発言をされて、何も言えなくなる。


「樹君、半年後まで待てない。3か月後に就任だ」

 巌さんは、無駄な時間を使いたくないと言って、あらゆる手続きを進めるらしい。


「そうなると、私も仕事を早く見つけないとね」

 小さく独り言をつぶやく。

「フリーランスでいいと思うな。俺からの仕事、受けてもらいたいからね」

 兄からのフリーランスという言葉を聞き、自分のペースで働ける方法を考えることにした。

 何が正解とか間違いとか、決まっていない。

 大事なのは、生計を維持しながら希望する働き方をできるかどうか、だと思う。


「お兄ちゃん、相談に乗ってくれる?」

 今の私には、何が自分に合っているのかを判断する情報がない。だから、人生の先輩方に教えてもらうことにした。

「お、いいぞ。他のヴォルフシュバルツメンバーにもいろいろ聞くのもいいな」

「そうだね。じゃあ、皆さんに相談して決めるわ」

 私は、心からの笑顔でそう告げた。



 私の人生は、私が決める。

 何が一番自分にとっていいのかをしっかりと考えて決める。

 たくさんの人たちの考えを聞き、会社員として働くのがいいのか自営業として働くのがいいのかの情報を集める。

 今の決断が間違っていても、またやり直せばいい。

 だって、1度きりの人生なのだから――。



 *****


 翌年の12月某日――。


「樹、瑞葵たちはやっぱり来ないのか?」

「哲平……。瑞葵はもう諦めろ。妹は、こういう場所が苦手なんだ。そっとしてやろう」

「い、いや。別に瑞葵のことは……」

「哲平、隠しても無駄。みんなにバレてるし」

「……」

「哲平も、そのうち運命の輪が回り始めるよ。近いうちにね」

「樹の発言、……いつも当たるから期待しておくか」

「お2人とも、授賞式始まりますよ!」

「透、悪い!今行く!……哲平、俺たちの、ヴォルフシュバルツを世界に見せつけてやろう!」

「そうだな。行こう」


『本年度のゲームアワード、最優秀作品は――ヴォルフシュバルツの“Frontier World Online”です』


 プレゼンターが受賞作品を読み上げる。

 これはまだ、始まりにしか過ぎない。俺たちの、ヴォルフシュバルツの活動は、これからだ。




 *****


 アメリカでは、そろそろ授賞式が始まる頃だろう。

 私は、授賞式には出ないと決めていた。

 人前に出るなんて、やっぱり恥ずかしくてできない。


 仕事も、フリーランスでやっていけているから、郊外に住んでいる。

 私の性格上、ゆったりがあっているのだと思う。


「瑞葵。カフェオレ飲むだろう?」

「健太郎君、ありがとう」


 そう、私たちは一緒に住んでいる。



 健太郎君が持ってきてくれたカフェオレを両手で持ち上げ、息を吸い込む。

「いい香り……」

「本当に。デカフェも悪くないな」

「あ、うん。気を使ってくれて、ありがとう」

「いや、当たり前だろ。そんなこと」

 そう言って健太郎君はブラックコーヒーの入ったマグカップを持ち上げる。


 私達の左薬指には、おそろいのリングがはまっていて、来年には新しい家族が増える。


「瑞葵、熱くないか?」

 過保護な旦那様は、とても甘い。

「うん。丁度いいあたたかさだよ」


 私達は、ずっと一緒に、

 ――隣を歩いていく。


【完】


この話を持って完結となりました。

思ったより長い話となりましたが、最後まで読んでくれて、ありがとうございました。

次話は、少し時間をいただいてからまた投稿しようと思っています。


この話の途中、プライベートで忙しくなり、毎日の投稿はきつかったですが、最後まで書ききれて本当に良かった。

読んでくださった方々のおかげです。

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