5.Cafe Time with you(40)
40.準備 ~樹side~
「樹様、当主より連絡が入りました。東で待つとのことです」
黒服さんが声をかけてきた。
あと3kmで10kmだが、寄り道することになった。
「じゃあ、案内よろしく」
足元が悪い林の中で一定の速度で駆けていたから少し疲労はある。
だけど、速度を落とすつもりはなかった。
「樹様、足の調子は問題ありませんか?」
「あ~。事故の時のやつね。それは大丈夫。筋肉つけてカバーできてるから」
「かしこまりました。ペースはこのままで向かいます」
そう言って、位置を知らせるミニライトを点灯させ、手で曲がることを合図してきた。
しばらく走って、ライトが点滅した。
目的地が近いみたいだ。
速度を落とし、視線を暗闇の先へと向けると、数人の人影がかすかに見えた。
(1番ガタイがいいのは……巌さんか)
歩きながら深呼吸を繰り返し、息を整える。
自分の呼吸が耳に響く。
(もうちょい体力つけるかな。自分の呼吸がうるさくて、周りの気配が読みにくい)
暗闇で見えにくい視界で聴覚が頼りになると、実地で学ぶ。
後は、何が足りないだろうか。
今までの恩を返すためにも、黒服になることを決意した。
それでも、返せるかどうかもわからない。
(でも、瑞葵にはわたっていて欲しいから、土下座でもするかな)
呼吸がようやく落ち着き、ゆっくりと人影に向かって歩みを進めた。
雲に隠れていた月が顔を出し、その光でその人の顔が照らされる。
「巌さん、お待たせしました」
服装は真っ黒な戦闘服のように見えた。
「さほど待っていない。暗視スコープとナイフ、銃を用意した。すぐに装着しろ」
相変わらず用件だけを告げるこの人は、どこまで先を見通せるのだろう。
控えていた黒服からスコープを受け取り、使えることを確認し、ベルトに収まったナイフを腰につけ、銃を受け取る。
――使えるだろうか。
「どこで電源を入れるんだ?」
巌さんが聞いてきた。
「ここから1km先の山を考えてます」
素直に考えていた場所を伝える。
「1.5km先にとある集落がある、そこに変更だ」
「集落?ほかの人に迷惑かけます」
「問題ない。動けないものは避難済みだ。お前の母親の実家から暴れていいと了承は貰っている」
「……ババアがね。まあ、それならいいですよ」
そして、少し足を延ばした先を決着の地とすることにした。
あの女は、きっとくる。
瑞葵を殺しに。
だから、迎え撃ってやるよ。




