表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/135

5.Cafe Time with you(37)

37.私は悪女① ~キョウコside~ 


 小さい頃から、私はなんでも願いを叶えてもらった。

 欲しいものはその場で買ってもらえて、気分じゃない時は予定をすぐに変更してもらった。

 退屈だった。



「それ、可愛いわね。私がもらってあげる」

 この日も、私は気まぐれで“欲しい”と言った。いつものように手に入ると思っていた。


「こ、これは、ダメなの。お母さんが作ってくれたもの、だから。ごめんね」

 初めての拒否。怒りに手が震えたわ。

 家に帰って、新しいノートに山本瑞葵の名前をびっしりと書いて破り捨てた。

 ほんの少し、イラつきが落ち着いた。



 数日後、すごく顔のいい年上の男の子に出会った。

「私のものになりなさい」

 いつものように侍らそうと声をかけた。


「は?なんでお前の“もの“にならないといけないんだ?頭おかしいだろ、お前」

 体に電気が走った。

 初めてだった。“お前”と言われたのは。

 私は、初めての恋に落ちた。


 私の前から去っていくあの子がどうしても欲しい。

「ねえ、あの子のことを調べて」

 いつもそばに仕えている1人に声をかけ、意外なことを知った。


 “山本樹”様。あの女の、兄だった。



 気に入らなかった。

 毎日、イラついて仕方なかった。


 この日も、いつものように家で物に当たっていた。

「キョウコ、いい加減にしなさい。物に当たっても何も解決しないでしょう」

「お母さま。だってどうしても気に入らない子がいるんですもの。クソ!山本瑞葵!」

 ついつい、汚い言葉をお母さまの前でついてしまった。


「山本瑞葵……。ふうん……。お母さまにどんな子か教えて」

 お母さまは、優しい。いつも解決方法を教えてくれるのよ。


 側使いが調べた報告書を手渡すと、急に大声をあげて笑い始めたお母さま。

 甲高く、耳に突き刺さるようなその笑いは、少し怖かった。


「キョウコ、この子はおもちゃよ。壊しても全然かまわないわ。心をえぐって、最後は壊れたおもちゃとして廃棄したらいいのよ」

 お母さまの目は、血走っていた。

 怖くなり、1歩後ずさった。

 でも、次の瞬間、私は目の前に星がちらつき、壁に激突していた。

 その後、頬がジンジンと痛んだので、頬を強くぶたれ、吹っ飛んだと理解した。

 お母さまは、――おかしい。


 恐ろしくなり、体が勝手に震えて止まらなくなった。

 この場から離れたいのに、動けない。


 コツコツとピンヒールを打ち鳴らし、私の目の前に立つお母さま。

 私に手を伸ばしてきたので、目をギュッと瞑った。

(また叩かれる!)

 震えながら、自分の体をギュッと抱きしめ、衝撃に備えた。


 だけど、訪れたのは痛みではなく、抱擁だった。


「キョウコ、痛かった?ごめんなさいね。でも、優しい気持ちなんて持つからいけないのよ。あなたは世の中のものを好きにできる存在なの。人を傅かせ、なんでも手に入れなさい。無理なら、壊してしまいなさい」


 耳元でささやく声は柔らかいのに、私の心は氷に覆われていく。

 優しさを持っていたら、私が壊されるかもしれない。

 そして、私も“あの場所“に――埋められるのかもしれない。



 生きていくために、

 この日から、私は悪女の高みを目指すことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ