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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


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5.Cafe Time with you(25)

25.奇跡が起きると信じて


 リニューアルされるゲームの名前が決まった。


 “Frontier World Online”


 本当は、最初のゲームの名前もこれになる予定だった。

 だけど、当時の流行を考えると合わないということになり違う名前で販売となったようだ。

 今回も、同じ名前を希望される人たちがいた。

 新しい名前は、最後のメンバーの人が、考えてくれた名前らしい。

 私たちの決意は固かった。



「朔と理央が今日来ることになってる。メンバー全員で、出かけるけど、瑞葵はどうする?」

「私?えっと、どこに行くの?」

「最後のメンバーに会いに行くんだ」

「あ……」

 言葉に詰まってしまった。

(きっと、あの人に会いに行くんだ)

 大事な親友だと言っていた。事故にあって、目が覚めないのだと。

(私が行っても、いいのかな?)

 一度、会ってみたかった。

 もう一人のメンバーに――。



 向かった先は、都内から少し離れた病院だった。

 病室の扉の前で、兄が足を止め振り返る。

「瑞葵、この先に俺たちの親友がいる。ずっと寝たままなんだ」

 今にも泣きそうな顔をする兄。

 奥にいる哲平さんは俯いている。

 神崎さんと黒川さん、水瀬さんは目を伏せ、眉間に皺を寄せている。


 そして、引き戸を開け、入っていく。

 最後に私が入り、扉を閉めた。


 兄が誰かと話していた。女性の声がする。

「いつもありがとうね。蓮、みんな来てくれたわよ」

 嬉しそうな声。

 でも、“蓮”さんは何も答えない。


「瑞葵、おいで。紹介するよ」

 兄が手を差し出してくる。

 導かれて前に進む。

 ベッドの上で寝ている人はとても痩せていて、体のいたるところに管が繋がっていた。

「瑞葵、俺たちの親友の、久遠蓮だ」

「久遠……さん?」

(健太郎君と同じ苗字の人、初めてかも)

 珍しいこともあるものだと何の疑いもなく、蓮さんに近づく。

(顔も、健太郎君にちょっと似てる?)

 そう思ったその時、後ろの扉が開いた。


「あれ?哲平さんじゃないですか。あ、神崎さん!え?樹さん」

 大きな男性の向こう側から、彼に似た声が聞こえてくる。

 そして、兄が右に寄って声の主の姿を捉えた。

「健太郎、君?」

 どうしてここにいるのだろう。

 何も考えられず、彼の目を見つめる。

「瑞葵、ちゃん?どうしてここに?」

 彼も、びっくりしている。

 この病室の時間が、止まったと感じた。



 兄が、かいつまんで話をしてくれた――。



 兄たちの親友の久遠蓮さんは、健太郎君の従兄なのだと。

 健太郎君は、蓮さんがヴォルフシュバルツのメンバーだと知らなかったようだ。

 そして、蓮さんは寝たまま、目を覚まさない。

 このままでは終われないから、ヴォルフシュバルツを再結成したと。

 そして、“Frontier World Online”は、蓮さんの治験も兼ねたものだと。


「治験がどういったものかは、言えない。でも、ちゃんと親族の了承はいただいてる」

 そう言って、蓮さんのお母さんに顔を向ける。

「ええ、私の時間も残り少ないから……。最後に蓮人と会話したいの」

 目に涙が浮かんでいらした。

 切ない顔だった。

「おばさん……」

 健太郎君は、言葉を続けることはできなかった。



「奇跡が起きるかもしれない。起きなかったとしても、後悔はしたくないの」

 蓮さんのお母さんは、優しい声で、でもはっきりと言葉にした。



 私達は、奇跡が起きることを願った――。


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