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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


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5.Cafe Time with you(24)

24.中毒症状


「お兄ちゃん、地獄の先って何があるんだった?」

「あ~。確か阿鼻地獄あびじごくって言うやつがあるらしい。本当の重罪人が行き着くところだろ」

「へぇ……。重罪人がね……」

(私、何かしちゃったのかな)

 目の前に見えるこの光景は、まさしくそれなのではないだろうか……。


 机に突っ伏している人が大半。

 カップ麺を食べながら寝てしまって、口から麺が垂れている人が数人。

 壁に頭を打ち続ける人が3人。

 笑いながらモニターを見ている人が、2人。

「……」

 高級栄養ドリンク2本目の栓を開けた瑞葵も、目の下のクマが黒くなっている。



「哲平!こっちは終わった!」

「俺も終わりました!」

「チェックするから持ってこい!」


 会議室の真ん中。

 哲平さんと健太郎君とお兄ちゃんが元気に声かけ合いながら最後の追い上げをしていた。


 カチャカチャカチャ……


 キーボードを打つ音が、加速する。


 カリ カリ カリ……


 チェックする音が後を追う。


 そして、哲平さんはペンを置いて、大声を出す。


「――終わった!!」



 長かった。

 絶対に、無理だと思ったこともあった。

 でも、言えなかった。

 このゲームを、待っている人がいるから。


 大急ぎで待機していたテスト人員に、バグが報告されたところの動作を確認する。


「問題ありません!」

「こっちも!」

「俺も!」


 動作も大きな問題がなさそうだ。



「哲平。雪ちゃんに、お願いできるだろうか」

「勿論。事情は話さない。その方が、いいと思ってるが……」

「ああ、きっと、その方がいい」

 兄と哲平さんは、泣きそうな顔をしている。

 声が、震えている。

(今まで、こんな姿を見たこと……。あ、一度だけ、あった、ような気がする)


 お兄ちゃんの友達が、事故にあった時。

 2人とも泣いていた。

(ご飯も食べれなくなったのよね……お兄ちゃんたち)

 昔のことを思い出す。

 仕事の鬼になったのは、確かこの後すぐのことだった。



 哲平さんはすぐに黒川理央さんに電話をし、サーバー負荷の試験をするようだ。

 この部屋にいる人たちは、体力の限界を超えた人が大半で、いびきがそこかしこから聞こえてきた。


 やっと、ここまで来た。

 あと少しでリリースへ向けて動き出す。


 兄と哲平さんは雪ちゃんのところへ向かうと声をかけてきた。

 今日はもう、みんな解散になった。


 ふと、部屋を見渡した。

 戦場だった。

 体がギシギシいってる。

 しんどかった。

 辛かった。

 でも、心が熱くなって震えを感じた。

 そして、本音が漏れた。


「楽しかった……」


 仕事中毒になる人の気持ちが、わかってしまった。


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