5.Cafe Time with you(20)
20.黄昏時 ~樹&瑞葵side~
テラスの奥。でかい図体の哲平が小さくなって体を震わせていた。
俺は、大きく息を吐いて、明るく声をかける。
「哲平!情けないな!」
ビクッと体を跳ねさせたこいつは、いろんなものを抱えている。
(仕方ないな……)
「やらかしたな~」
植垣を超え、隣に座る。
何も言い訳をしてこない。
感情を抑えられなかったのだろう。
わかっている。
でも、俺ができるのは支えることくらいだ。
だから、あえて言う。
「今回はさ、俺も悪かった。――ごめん」
「いや!俺が、悪いんだ……」
哲平は優しいから、そう言うと思ったんだ。
「本当にごめん」
小さな声でつぶやく。
泣いているこいつには聞こえていない。
納期を間に合わせるために、哲平にはいろんなものを諦めてもらうことになる。
悪いと思っている。
それでも、前に進むと決めたから。
(この埋め合わせは後で必ずするから)
(哲平、今は泣いていいよ)
ポケットから、ハンカチを取り出した。
「これ、使いなよ。鼻水、すごいことになってんだろ?」
本当に仕方ない奴だ。
人前に出れるようにはしてやるよ。
ふと空を見上げると、一番星が光っていた。
もうすぐ日が沈む。
長い夜が、やってくる。
*****
いっぱい考え事をして、ちょっとのぼせてしまった。
風に当たりたいと思ってテラスに出たが、奥にある“安全地帯”に兄と哲平さんの頭が見え、立ち止まった。
哲平さんは、震えていた。
「……」
私は音を立てずに、そっとここから離れた。
黄昏時。
きっと二人の姿は、誰にも見えていない。




