5.Cafe Time with you(19)
19.器 ~哲平side~
俺は、何をやっているんだろう――。
最近の俺はおかしかった。
自覚は、ある。
でも、感情のコントロールが出来なかった。
「どういうことだ!説明しろ!」
違う。
「黙ってて済むと思ってるのか!」
違うんだ。
そんな言い方がしたいわけじゃ、ない。
ミスは、誰でもする。
大事なのは、リカバリーをどれだけ早くするか。
取り返しのつかないところまで行くと、全てが後ろ倒しになる。
最悪、納期に間に合わない。
そうなれば、会社の信用が落ち、違約金が発生してしまう。
アースプロジェクトは大きな会社ではない。
それでも従業員がいる。
(彼らを守らなければ)
ゆくゆくは父の後を継ぐ。あの父の後を――。
重圧が半端ない。
(従業員、いったい何人いるんだ)
たまにネット検索して確認するが、年々増えていく。桁が増えているのを見た時は、トイレで嘔吐いた。
だから、この規模の会社を何とかできなければ、跡継ぎになんてなれない。
“父さん“のためにも、俺が何とかしなければならないんだ。
俺は、いろんなものを諦めて生きてきた。ただ勉強をして、いい学校を出て、政略結婚で会社のためになるご令嬢と結婚する。それが、親父に恩返しする方法だと思っていた。
だけど、あいつらが俺の世界を変えてくれた。
「哲平。難しい顔になってるぞ。そのうち、恐がられるぞ」
「まじでそれな。いっつも眉間に皺寄ってるからな」
「そう言えばこの前、職質されてたって聞いたぞ」
「俺も聞いた」
大笑いしてるこいつらは、俺の初めての親友だ。
そして、初めて人を好きになった。
「哲平君、いつもありがとう」
樹の妹の瑞葵は、俺に笑顔を向けてくれる。下心のない、純真な笑顔を。
だから、全てを守れる男になりたかった。
でも、結局は親父の助けがないと何もできていない。
ヴォルフシュバルツを作るのも、会社を起こしたのも。
親父がいなければ、できていない。
俺を庇った蓮のことも――。
俺に人の上に立つ器があるのだろうか。
従業員を守っていけるのだろうか。
今の俺は、小さい男だとしか思えない。
テラスの奥の片隅。
植垣の向こう側は、小さな避難場所だ。
人からの視線を遮ることが出来る。
(そう言えば、瑞葵もここに隠れていたな)
その瑞葵とは、最近うまく会話できていない。
嫌われたかもしれない。
彼女にはいい男だと思われたいのに。
最近は、かっこ悪い所しか見られていない。
――情けない。
今は、恋愛よりも、するべきことがあるのに――。
蓮、ごめん。
もっと頑張るから。
待っててくれ。
俺は、頭を抱え、小さな嗚咽を漏らした。




