表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/135

5.Cafe Time with you(18)

18.リニューアルの真相 ~樹side~

(何やってんだ……)

哲平が、崩れた。

俺たちには、時間がないのに!



俺と哲平が発起人のチーム、ヴォルフシュバルツが最初に手掛けたゲームのリニューアル版をずっと打診されていた。

だが、やりたいことを実現するには時期尚早だと断っていた。


だけど、状況が変わった。



「樹君、いつもありがとう。蓮も喜んでるわ……」

そう言って笑ってくれる人の顔は、疲れ切っていた。

「いいえ、俺が来たかったんです」

もう何年、ここに通っているだろうか。

「そう……。蓮は、いつになったら起きてくれるんだろうね……」

彼女は、そう言いながら息子の手を何度も何度も優しくなでる。


久遠 蓮――。

俺と哲平、朔、理央の同級生だ。

高校の頃、俺たちはゲーム制作チーム

ヴォルフシュバルツを作った。

一歳下の後輩、透も誘って。

俺たちはいつも一緒だった。


――あの時までは。


8年前、俺たちは絶望と後悔という言葉の意味を、初めて知った。


俺たちが作ったゲームは人気があり、有頂天になっていた。

大企業からのオファー。雑誌の取材。忙しかった。

だから、気が付かなかった。

蓮が、心を閉ざし始めたのを――。


「樹、俺はこのチームに必要ないんじゃ、ないかな」

蓮はたまにそんなことを言う。

「蓮?なんでそんなこと言うんだ?お前は俺たちの大事なダチだろ?」

「でも、俺はゲーム作れないし、センスないし。役立ってないだろ」

「ん~。蓮はいてくれたらそれだけでいいんだ。バカだな」

そう言うと、いつも連は苦笑いをして、お腹に手を当てていた。


バカなのは、俺達だった。


『樹!蓮が!』

「哲平?どうしたんだ?」

哲平が電話口で喚いて、何が言いたいのかわからない。

『哲平、俺が話す。樹、理央だ。……蓮が、事故に、あった。今病院で、手術してる』


笑えない冗談だ。


俺は、理央の言葉を理解できず、立ち尽くしていた。


その後のことは、正直覚えていない。

たぶん、哲平の実家から迎えが来て、病院に駆けつけたのだろう。手術室のランプが消えるのをずっと待っていた。

そして、蓮は――

一命を取り留めたが、ずっと目を覚ましていない。


事故は、飲酒運転の暴走が原因だった。

哲平を庇って、蓮は事故にあったらしい。


しばらくたった時、蓮の母親から血の付いた手紙を渡された。

蓮の文字で“樹へ”と書かれていた。


“樹へ


俺は、お前たちと友達で入れることが誇りだ。でも、チームのメンバーは、俺には荷が重すぎる。何もしていないのに、名前だけは、辛いんだ。


実は、やってみたいことがあるんだ。今からでも遅くないかな?

もしかしたら、俺に向いていないかもしれない。

でも、挑戦せずに後悔したくないんだ。


だから、チームから卒業させてほしい。


俺はお前たちとずっと親友だから。

それだけは、卒業できない

我儘で、ごめん。


久遠 蓮“


俺が、一番バカだ。

蓮の何を見ていたんだ。

その場で泣くことしかできなかった自分が、情けなかった



ずっと眠ったままの蓮。

彼の母は、重い病気を患っている。

だから、何としても目を覚まして欲しい。


俺たちは、賭けに出ることにした。

脳波に刺激を与えることを。

ドイツの医療研究機関と組み、ラットで何度も試験を繰り返した。

奇跡みたいな数字が出た。

そして、人試験の承認が下りた。

蓮の母親も、承諾してくれた。

だけど、莫大な資金が必要だった。


ある日、資金の確保と蓮の覚醒を、“ゲームのリニューアル”で解決することを思いついた。

俺たちは、何としてもやり遂げなくてはならない。

大事な親友を取り戻すために。



それなのに哲平が崩れてしまった。


テラスの隅で蹲っている大男を見つけた。

(仕方ないな……)

俺は、大きく息を吐いた。

「哲平!情けないな!」

明るく声をかけた。

ビクッと体が跳ねた奴も、意外に気が小さい。


俺は、こんなところで

止まってられない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ