5.Cafe Time with you(16)
16.団結
「瑞葵、ちょっと来てくれ」
森本さんは落ち着くまでそっとしておき、呼び出した兄の元に向かった。
「透とこれからどうするかを決めないといけない。瑞葵の方はもう大丈夫そうだな」
「あ、うん。こっちは大丈夫。何かあったら呼んでね」
そう言って退室することにした。
「あ、瑞葵ちゃん、彼女たち、どんな感じ?」
神崎さんと扉の前で鉢合わせ、状況を聞かれる。
「そうですね……。かなり怯えています。部屋の外まで大きな声を上げてましたからね」
「そうか……。樹さんと話してくる。そっちは任せていいか?」
「勿論です。何かあれば手伝います」
「ああ、頼りにしてる」
苦笑いをし、神崎さんは兄の元へ向かった。
「瑞葵ちゃん、どうだった?」
自席に戻るとカレンさんに声をかけられる。
「えっと……。あまり、よくない感じ、でした」
「あまり?」
「……いえ。かなりよくありません」
嘘は言えなかった。
「兄が神崎さんとどうするか決めるようです」
「あ~。それは、やばいね……。瑞葵ちゃん。こっちはもう次の工程だよね」
「はい、1か月前倒しなので手が空きますね。ん……カレンさん、メンバーを一時哲平さんのチームに合流……しても、いいでしょうか?」
きっと、まだやることはあるし、毎日頑張ってきた人達を休ませてあげたい。
(でも、今はできることなら、手伝いたい)
私は小さくなっていく声とは裏腹に、ギュッと強く手を握りしめ、俯いた。
「勿論!リーダーは瑞葵ちゃんだよ。でも、相手の気持ちはわからないからね。聞いてみてもいいんじゃないか?」
ハッとして、顔を上げた。
カレンさんの明るい声が、背中を押してくれる。
「はい!みんなに伺います!」
急いで高瀬さんたちと話し合いの場を設けた。
「お忙しい所、すみません。実は、哲平社長のチームで問題が起きまして……。たぶん、よくない状態、なんです。皆さんお疲れだと思うのですが、お手伝いがしたいと思って、います。もしよろしかったら、私と一緒にお手伝いしていただける人、いない、でしょうか」
嫌だと、言われるかもしれない。
手伝いに行きましょうとは言えなかった。
(だって、みんな頑張ってくれて、本当に疲れてるはずだもん)
断られると思い、自分で言い訳をする。
(私だけでも、いないよりまし、よね)
「あ、えっと、強制じゃないので、皆さんは仕事に戻ってください」
誰も、動かなかった。
当然だと思った。
だって、もう十分頑張ってくれたから。
(うん、大丈夫)
落ち込んではいない。
穏やかな気持ちで視線を下げ、言葉を続けた。
「皆さん、ありがとうございます。私は兄のところへ――」
そう言いかけた時。
「私、手伝いに行きます。里奈はどうする?」
「私も行く。山本さん、いいかな?」
高瀬さんと吉岡さんが挙手してくれた。
「それなら、私も行きます」
坂口さんも一緒に手伝ってくれるようだ。
「じゃあ、私と田中君でこっちは進めておくよ。な、田中君」
「勿論であります。カレン様」
(((ん?カレン様?)))
田中君の言葉に、完全に時間が止まった。
(これは、“聞き流す“がベストアンサーなの、かな)
戸惑って目を見開き、キョロキョロしていると、高瀬さんと吉岡さんが無言でコクコクと首肯してくる。
(ベストアンサーね!)
私も彼女たちに頷いた。
「皆さん、ありがとうございます」
ミニ会議が終わってすぐ、私たちは兄と神崎さんの元へと向かった。
誰も、迷っていなかった。
1人も、後ろ向きな言葉が出なかった。
私だけだと思っていたのに、みんなが協力してくれる。
更なる困難がどれだけのものなのか、全くわからない。
でも、なんとかしたいという気持ちが私たちを突き動かした。




