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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


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5.Cafe Time with you(15)

15.張り詰めた空気


「どういうことだ!説明しろ!」


 どこかの部屋から怒鳴り声が聞こえてきた。

(あの声は、哲平さんじゃ……)

 ハッと顔を上げ、どの部屋からなのかを確認しようすると、カレンさんと目が合った。

「瑞葵ちゃん、行こう」

 私は頷き、駆け出した。


 少しあたりを見回すと、1か所に人が集まっていた。

「きっとあそこだ。急ごう」

 カレンさんの顔にも焦りの色が見える。

 ざわつく人だかりのその先から、また怒鳴り声が響く。


「黙ってて済むと思ってるのか!」


(どうして?)

 哲平さんが怒鳴る声なんて、聞いたことがない。

 きっと何かあったのだと、そう思いたい気持ちが少なからずあった。

 いつも、どんなことがあっても、みんなのフォローに徹していた人だ。

 私も、たくさん助けてもらったからこそ、信じたい。


「すみません、通してください」

 前に、とにかく前に進みたい。

 そして、この目で確認したいと思った。

 なのに、なかなかあの扉に行き着かない。

 焦る気持ちがどんどん膨らむ。

 胸騒ぎしか、ない。


「集まってるみんな、邪魔だよ。退いてくれるかな」

 後ろから兄の声がした。

「お兄ちゃん!哲平さんの声が!」

(よくわからないけど、よくないことが起きている。なんとか、しなくちゃ)

 兄の服を掴み、縋った。


「瑞葵、俺の後ろからついてきて」

 そう言って、強引に人を掻き分け、進んで行く。


 扉の向こうは、哲平さんと数人の人たちが、真二つに分かれていた。

 怒りの形相の哲平さんを石川さんが何とかして抑えようとしているが、反対側の泣いている人に今にも掴みかかろうとしているように、見えた。

(哲平さん……)

 張り詰めた空気。書類が、部屋中に散らばっていた。


「哲平、何してるんだ」

 兄の声が、低く、響く。


「樹……」

 兄の顔を見た彼が、視線をこちらに向け、睨む。


「石川さん、状況は?」

「……、一人が、ミスを。ですが、報告が遅く。状況は、悪いです」

「そうか。……で?怒鳴ったんだ、哲平」

「……」

 哲平さんは、俯き、何も言わない。

「お前こそ、だんまりかよ」

「……」

 それでも、何も答えない。


「哲平。頭、冷やしてこい」


 静かに、ゆっくりと、退室を促す。

 部屋の外では、神崎さんが集まってた人を戻していてくれたみたいだ。

 哲平さんは、俯いたまま、どこかへ行ってしまった。


 兄は石川さんの元へ向かい話をしている。

 私は、泣いている人のところへ向かった。顔を見ると、高瀬さんの仲の良い森本さんだった。

「あの、とりあえず、椅子に座りましょう」

 怯えて、青い顔をし、震えている。

 椅子に座ることを促しても、体が動かないようだ。

 周りに3人いたが、その人たちも固まって動けないようだ。


 椅子を彼女たちの後ろに移動させ、肩を少し強めに押して無理やり座らせる。

 私も隣に座り、彼女の背中をゆっくりとさすった。

「あの、ミスは、前から気が付いていたんですか?」

 小さな声で、優しく尋ねる。

 森本さんが、小さく頷く。

「いつから、ですか?」

「……2週間前、から」



 息を、飲んでしまった。

 そんな前からだと、立て直しは……。

 私は、眉間に皺を寄せ、目を閉じる。

 そして、細くため息をついた。


 哲平さんが怒りたくなる気持ちも、わかる。

(だけど、そうなるまでに――)

 いろんな解決方法を思い浮かべるが、私がするべきことではない。



 兄の顔を見つめた。

 珍しく険しい顔に――なっていた。


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