↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
建国スキルがぶっ壊れている件。歴史の偉人をガチャ召喚して、俺は悠々自適に暮らしたい  作者: 阿鼻恭介
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/140

第2章 第53話 移住希望者がやってきた! 俺の街に住みたいって本当か⁉︎

 リューデン谷から来た三世帯がアストレアの西門に到着したのは、朝の陽射しが城壁を照らし始めた頃だった。


 先頭の荷車には小さな子どもが三人と、水筒や弁当の入った荷物が載っている。その後ろには大人たちが歩いて続き、御者台では農民らしい男が手綱を握っていた。


 訪れたのは大人七人、子ども三人の合計十人。いずれもリューデン谷で暮らす家族で、アストレアへの移住を考えている者たちだった。


「……ここが、アストレアか」


 御者台から降りた男が、目の前の城壁を見上げた。


 ルドルフという名のその男は、谷で麦や豆を育ててきた農民だった。妻のアンナと二人の息子を連れている。


 隣には織物を仕事にしているヘレナと夫のヨーゼフ、まだ幼い娘の姿があった。最後の三人は年配のオットー夫婦と成人した息子のレオンである。


 三世帯は昨日の夕方、エリサから見学の案内を受けていた。新しい石橋が完成したことで道中の不安も減り、相談の末、翌朝一緒に出発することになったのだ。


 もっとも、全員が移住を決めているわけではない。今日は街を見て、実際に暮らせそうか確かめるための訪問だった。


「おはようございます。見学にいらした方々ですね」


 門番のディランが声をかけ、預かっていた名簿と人数を確認する。


「はい。ルドルフと申します。よろしくお願いします」


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


 ディランに案内された一行は、西門の迎賓広場へ入った。


 異世界生活四十一日目。


 その頃、神城皇牙は城館の庭にある東屋で、ようやく訪れた平穏を満喫しようとしていた。


「くうっ……。いい天気だなあ。昨日は石橋まで造ったんだし、今日は一日何もしなくてもいいだろ」


 長椅子へ寝転がり、皇牙は気持ちよさそうに伸びをした。


 そこへ、巴が静かに近づいてきた。


「殿。リューデン谷から、見学のご家族が到着されたそうです」


「……ん?」


 皇牙は片目を開けた。


「例の三世帯か?」


「はい。クラリス殿が迎賓広場で対応しておられます」


「おおっ! もう来たのか!」


 皇牙は勢いよく起き上がった。


「よし、会いに行こうぜ! せっかく俺の街を見に来てくれたんだからな!」


 巴は長椅子に残されたクッションへ目を向けた。


「お昼寝はよろしいのですか?」


「後回しだ! 昼寝は逃げねえからな!」


 その答えがおかしかったのか、巴は声を立てて笑った。


 迎賓広場では、クラリスが三世帯の家族に見学の流れを説明していた。


 皇牙が現れると、ルドルフたちは慌てて立ち上がった。


「ようこそ、アストレアへ! 俺が神城皇牙だ!」


「こ、皇牙様! 昨日、石橋を造ってくださった方ですよね?」


「おう! 今日、あの橋を渡ってきたか?」


「はい! あんなに立派な橋ができるなんて、今でも信じられません!」


 ルドルフが興奮気味に答える。


 その隣で、幼い息子の一人が皇牙の後ろに見える城を指さした。


「父ちゃん! あのお城、すっごく大きい!」


「だろ? あれも俺が造ったんだぜ!」


 皇牙が胸を張ると、子どもたちは目を輝かせた。


 しかし、大人たちの表情には期待だけでなく、不安も混じっている。


 見たこともない立派な城と街並み。魅力的である一方、自分たちのような普通の村人が本当に暮らせる場所なのか、まだ判断できないのだろう。


 皇牙はその様子を見て、少しだけ表情を和らげた。


「まあ、難しく考えなくていいぜ。今日は見学なんだろ? 気になることがあったら何でも聞いてくれ!」


 その言葉に、ルドルフたちの肩から少し力が抜けた。


 最初に案内されたのは住宅地だった。


 石畳の道の両側には、さまざまな大きさの家が並んでいる。玄関先には洗濯物が干され、窓辺には花を飾っている家もあった。


「……随分きれいな家ばかりですね」


 アンナが感心したように呟いた。


 谷の村では、家を建てるにも木材や職人が必要で、古くなった屋根を直すだけでも大仕事だった。


「ここでは、家を建てるのにどれくらいお金がかかるんですか?」


 ヨーゼフが尋ねる。


「建物そのものは、俺が無料で造れるぜ!」


 皇牙は得意げに答えた。


「ただし、家具とか道具は別だけどな。何もかも勝手に出てくるわけじゃねえんだ」


 その説明に、見学者たちは驚いたように顔を見合わせた。


 皇牙は彼らの家族構成を思い浮かべ、頭の中で間取りを考え始めた。ルドルフ一家なら子ども部屋を二つ用意して、ヘレナ一家には織物の作業場を付けてやるのも面白そうだ。


 しかし、今ここで家を造っても仕方がない。まだ誰も移住を決めていないのだから。


「……よし。まずは実際に住んでる奴の家を見てもらおうぜ!」


 皇牙はそう言って、トーマス一家の家へ案内することにした。


 トーマス一家が移住してきたのは数日前のことだ。新しい土地での暮らしを知るには、ちょうどよい相手だった。


 家の前では、マリアが洗濯物を干していた。


「あら、皇牙様。今日はどうなさったんですか?」


「おう、マリア! 谷から見学の家族が来てるんだ。家の中を見せてもらってもいいか?」


「もちろんです。少しだけお待ちくださいね」


 マリアは笑顔で答え、家族を中へ招く準備を始めた。


 居間に通された見学者たちは、室内を興味深そうに見回した。


 台所には持参した鍋や食器が並び、窓際には小さな棚が置かれている。家そのものは立派だが、家具や生活用品は一家が少しずつ整えている最中だった。


「ここへ来れば、何でも揃っているわけではないんですね」


 ヘレナが呟く。


「そうなんです。でも、困ったときは周りの方が助けてくださいますよ」


 マリアは穏やかに答えた。


 引っ越してきた日のこと。リーナに厨房の使い方を教えてもらったこと。近所の人が水場や市場の場所を案内してくれたこと。


 そんな何気ない話を聞くうちに、見学者たちの表情が少しずつ柔らかくなっていった。


「うちの息子は、畑仕事を手伝いながら工房にも通うようになりました。今まで知らなかった仕事を覚えられるのが、嬉しいみたいです」


 マリアが笑う。


 その言葉を聞いたレオンが、少し興味深そうに顔を上げた。


「……ここでは、農民以外の仕事にも挑戦できるんですか?」


「もちろん、空いている仕事や覚えられることがあればね」


 皇牙が答えると、レオンは父親のオットーをちらりと見た。


 オットーは黙って頷いたが、その顔にはまだ迷いが残っていた。


 次に向かったのは、アストレアの農地だった。


 広々とした畑では、マルクたちが作業を進めていた。二宮尊徳も待っており、見学者たちへ農地の様子を説明する。


 ルドルフは土を手に取り、慣れた手つきで状態を確かめた。


「……いい土ですね。ここなら麦も育ちそうだ」


「土の状態は悪くありません。ただし、実際に作物を育てるには、人手と道具、それから種が必要になります」


 尊徳が穏やかに答えた。


「もしこちらで農業を続けたいのであれば、これまでの経験を伺い、どの畑を任せるのがよいか一緒に考えましょう」


 ルドルフは真剣な表情で頷いた。


「俺は麦と豆を育ててきました。妻も畑仕事はできます」


「それは心強いことですな」


 尊徳は満足そうに頷いた。


 ルドルフはしばらく畑を見つめていたが、やがて小さく息を吐いた。


「……実は、谷の畑では毎年水のことで苦労してるんです。作物が育つかどうか、雨に頼るしかない年もあって」


「そうでしたか」


「でも、ここへ来たら必ず収穫できるってわけじゃないんですよね」


「もちろんです。しかし、畑を管理する人員も増えてきております。皆で工夫しながら、少しずつ生産を安定させていくつもりです」


 尊徳の言葉に、ルドルフは深く頷いた。


 その表情には、先ほどまでなかった決意のようなものが浮かび始めていた。


 続いて見学者たちは工房へ向かった。


 ガルドは作業中の木箱を見せ、工房でどのような物を作っているか説明した。


 ヘレナは布を扱う作業場に興味を示したが、見学しているうちに少しだけ眉をひそめた。


「……織物の仕事をするには、織機が必要ですよね」


「そりゃそうだな。今の工房には、お前さんが使ってたような織機はないぞ」


 ガルドは正直に答えた。


 ヘレナは少し残念そうだった。


「私は谷で布を織っていました。もしここで仕事を続けられるならと思ったんですけど……」


「織機があれば、仕事はできるんだな?」


 皇牙が尋ねる。


「はい。ただ、作るにも道具や材料が必要でしょうし、すぐには難しいかもしれません」


 その言葉に、ガルドが腕を組んだ。


「どんな織機を使ってたか、あとで詳しく教えてくれ。俺たちだけで作れるかどうかは分からねえが、構造が分かれば考えようはある」


 ヘレナは少し驚いた顔をした。


「……相談してもいいんですか?」


「もちろんだ。無理なら無理って言うが、最初から諦める必要はねえだろ」


 ガルドは笑った。


 そのやり取りを見ていた皇牙は、満足そうに頷いた。


 自分なら織物用の作業場を一瞬で造れる。しかし、中で使う織機や糸まで勝手に生まれるわけではない。


 だからこそ、実際に道具を作るガルドたちの力が必要なのだ。


「いいじゃねえか! 必要になったら作業場は俺が造ってやる。道具のことはガルドたちに任せればいい!」


 皇牙が笑うと、ヘレナもようやく表情を和らげた。


 見学が一段落したところで、一行は来客用休憩所へ移動した。


 リーナたちが用意した温かなスープとパンが並び、子どもたちは嬉しそうに食事を頬張っている。


 大人たちも食事を取りながら、今日見たものについて話し合っていた。


 ルドルフは何度も農地の話をし、ヘレナは織機のことを考えているようだった。


 一方、オットーは窓の外を見つめ、なかなか口を開かなかった。


 皇牙はその様子に気づき、隣の椅子へ腰を下ろした。


「なあ、オットー。何か気になることでもあったか?」


 オットーは少し驚いた顔をしたが、すぐに苦笑した。


「……いや。立派な街だと思うよ。家も畑も、今の村よりずっと整っている」


「だったら、何でそんな顔してんだ?」


「俺たちはもう若くない。村には小さいながら畑もあるし、長年暮らしてきた家もある。息子は新しい土地に興味があるようだが……俺たち夫婦がここへ来て、うまくやっていけるかどうか」


 オットーは静かに息を吐いた。


「正直、怖いんだ」


 皇牙は少しだけ考えた。


 立派な家なら、いくらでも造れる。畑も道路も一瞬で整えられる。


 しかし、住み慣れた土地を離れる不安まで、魔法で消せるわけではない。


「……そりゃ怖いよな」


 皇牙はあっさり答えた。


「別に無理して来なくていいぜ。俺は住民の数だけ増やしたいわけじゃねえんだ。ここで暮らしたいって思った奴が来てくれりゃ、それでいい」


 オットーはゆっくりと顔を上げた。


「……本当に、それでいいのか?」


「おう。だって、嫌々住んでも楽しくねえだろ?」


 皇牙は肩をすくめた。


「俺だって嫌な仕事はしたくねえしな!」


 その言葉に、オットーは思わず笑った。


 隣にいたレオンも、少し安心したように息を吐いた。


「父さん。俺はここで仕事を探してみたいけど、無理に一緒に来てほしいわけじゃないんだ」


「……そうか」


 オットーは息子の顔を見つめた。


「なら、もう少し家族で話してから決めよう」


 その結論に、皇牙は満足そうに頷いた。


 午後も遅くなった頃、クラリスと尊徳が三世帯の意向を確認した。


 最初に口を開いたのはルドルフだった。


「……皇牙様。俺たち一家は、ここへ移住したいと思います」


「おおっ!」


 皇牙は思わず身を乗り出した。


「本当か!?」


「はい。妻とも話しました。子どもたちのことを考えても、ここで新しい暮らしを始めたいんです」


 アンナも静かに頷いた。


 尊徳は二人へ、農地での仕事と生活の準備について改めて確認した。


 ルドルフ一家は四人全員で移住する意思を固め、クラリスは正式な受け入れの手続きを進めることになった。


 ただし、家財道具を取りに一度村へ戻る必要があるため、実際に住み始めるのは数日後の予定だった。


「よっしゃ! じゃあ、家族四人で暮らしやすい家を造ってやるぜ!」


 皇牙は満面の笑みを浮かべた。


 続いてヘレナ一家は、織機の準備についてガルドと相談してから決めたいと答えた。


 オットー一家は、故郷の家や畑のことも含めて、もう少し考えることになった。


 皇牙はそれぞれの返事を聞き、満足そうに頷いた。


「いいじゃねえか! 急ぐ必要なんかねえよ!」


 ルドルフ一家の移住が決まっただけでも、今日の見学は大きな成果だった。


 夕方、三世帯は荷車へ乗り込み、リューデン谷へ戻っていった。


 皇牙は西門からその姿を見送り、少しだけ満足げに息を吐いた。


「……へへっ。四人も新しい住民が増えるのか」


「正式に暮らし始められるのは、もう少し先でございますね」


 巴が穏やかに言った。


「分かってるって。家を造る準備をしとかなきゃな!」


 皇牙は楽しそうに笑った。


 その日の夕方、城館へ戻った皇牙は、いつもの無料ガチャを開いた。


【無料召喚:3/3回】

【国家人口:131人】

【SR以上排出率:5%】


「さてと! 今日は移住者も決まったし、そろそろ内政系の偉人でも来てくれねえかな!」


 一回目に現れたのはN畑作業補助のフリッツ。二回目はR衣類製作補助のエレナ、そして三回目はN倉庫清掃補助のパウルだった。


「……おおっ! 衣類製作補助!」


 皇牙はエレナの職種を見て、少し嬉しそうに笑った。


「今日、織物の話が出たばっかりじゃねえか! これ、いい組み合わせになるんじゃね?」


「殿。まだヘレナ殿の移住は決まっておりませんよ」


 巴が微笑む。


「分かってるって! でも、こういう人材が増えるのはいいことだろ!」


 皇牙は三人を歓迎し、それぞれの仕事についてはクラリスたちへ相談してもらうことにした。


【無料召喚:0/3回】

【国家人口:134人】

【SR以上排出率:5%】


「百三十四人か。いい感じだな!」


 皇牙は満足そうに画面を閉じた。


 夜、城館の窓から見えるアストレアには、家々の明かりがともり始めていた。


 今日、ルドルフ一家はこの街へ移住することを決めた。


 ヘレナ一家も新しい仕事の可能性を見つけ、オットー一家は故郷で暮らし続けるかどうか、家族で考えることになった。


 それぞれの答えは違う。


 けれど、皇牙はそれでいいと思っていた。


「……へへっ。住みたい奴が来て、楽しく暮らしてくれるのが一番だよな」


 皇牙は小さく笑った。


 自分は相変わらず面倒な仕事が嫌いだし、できれば毎日ガチャを引いて昼寝をしていたい。


 それでも、自分の造った街を新しい故郷に選んでくれる人がいるのは、悪い気分ではなかった。


「よし。ルドルフ一家が来たら、最高の家を造ってやるか!」


 皇牙はそう呟き、明日の建築を少しだけ楽しみにしながら、窓の外へ目を向けた。


 アストレアの人口は百三十四人。


 そして今、新たな四人の住民を迎える準備が、静かに始まろうとしていた。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマークや評価をいただけると励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。