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建国スキルがぶっ壊れている件。歴史の偉人をガチャ召喚して、俺は悠々自適に暮らしたい  作者: 阿鼻恭介
第二章

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第2章 第52話 七つの村をつなぐ石橋! 俺の建築スキルが大活躍!?

 朝食を終えた神城皇牙が執務室を覗くと、机の上には見覚えのある川の図面が広がっていた。


「おおっ、昨日の橋じゃねえか! もう設計ができたのか?」


 異世界生活四十日目。アストレアの城館では、山本勘助とフェリクスが朝からリューデン谷の測量記録を確認していた。二人の前には、古い木橋と新しい橋の候補地、それぞれにつながる街道が描かれている。


「大まかな形は決まりました。こちらをご覧ください」


 フェリクスが指さしたのは、古い橋から少し下流に離れた場所だった。川の両岸の高さが比較的近く、橋を架けても前後の道路を緩やかにつなげられるという。


 勘助はさらに、村人たちから聞いた増水時の水位を図面へ書き込んでいた。


「橋の下に十分な空間を確保すれば、普段の流れを妨げずに済みましょう。荷車がすれ違える幅も必要にございます」


「なるほどな。つまり、でっかくて頑丈で、しかも格好いい橋なら完璧ってわけか!」


「最後の条件は殿のお好みでございましょう」


「当たり前だろ! どうせ造るなら、百年後まで自慢できる橋にしたいじゃねえか!」


 皇牙が目を輝かせると、勘助は小さく笑った。


 初めて荒野に城を造ったときから、皇牙はこういう仕事が大好きだった。面倒な書類や会議には興味がないが、頭の中に思い描いた壮大な建物を現実にできるとなれば、いくらでも時間を使える。


「両側には重厚な欄干、入口には立派な石柱だな。中央にはアストレアの紋章を刻んで……いや、いっそ巨大な竜の像でも置くか?」


「殿。荷車の通行に邪魔にならない大きさでお願いいたします」


 いつの間にか隣へ来ていた巴が、楽しそうに口を挟んだ。


「分かってるって! 実用性と格好よさの両立こそ、真の建築美ってやつだ!」


 そんなことを言いながら皇牙が図面へ身を乗り出したとき、クラリスが扉を叩いた。


「皇牙様。リューデン谷から使者がお見えです。七村の村長の連名で、書状を預かっているそうです」


「……おっ!? もしかして!」


 皇牙は勢いよく立ち上がった。


 昨日、ハロルドとエリサは橋の調査結果を持ち帰った。七つの村の村長たちは、あらかじめ結果を受け取るために集まる予定だったらしい。そこで話し合いがまとまり、今朝早く伝令が出発したという。


 来客用休憩所で書状を受け取ると、クラリスが内容を読み上げた。


 七村の村長全員が、測量で選ばれた場所への新しい石橋の建設と、既存の街道につながる道路の整備を承認した。古い木橋は工事中も残し、撤去するかどうかは新橋の完成後に改めて協議する。


 皇牙は最後まで聞くなり、拳を握りしめた。


「よっしゃあ! つまり、造っていいんだな!」


「はい。七つの村から、正式にお願いしたいとのことです」


「待ってました! じゃあ今すぐ行こうぜ!」


 皇牙は早くも扉へ向かったが、勘助に呼び止められた。


「殿。現地で最終確認をしてからにいたしましょう。橋を造る場所に人や荷車が残っていては危険です」


「おう、もちろん! 今日はお前らの指示に従うぜ。俺は完成させるところが一番楽しいからな!」


 その返事に、クラリスはどこか安心したようだった。


 ほどなくして、皇牙は巴、勘助、フェリクスとともに城館の中庭へ集まった。フェリクスは測量道具と昨日の記録を持ち、勘助は完成予定の橋の図面を確認している。


「じゃあ、行くぞ。《空間転移EX》!」


 皇牙が能力を発動すると、四人の景色が一瞬で切り替わった。


 次に見えたのは、リューデン谷の入口を流れる川だった。


 古い木橋は、昨日と変わらず街道の途中に架かっている。荷車が渡るたびに板が軋み、御者は慎重に馬を進めていた。橋の手前では、順番を待つ村人が数人集まっている。


「おお、皇牙様!」


 声をかけてきたのはハロルドだった。隣にはエリサの姿もあり、村の道や橋の管理に携わっている男たちが待機していた。


「おう! 許可の書状、ちゃんと受け取ったぜ!」


「ありがとうございます。村長たちも、昨日の調査結果を見て安心しておりました」


 ハロルドは新橋の候補地へ目を向けた。


「何より、古い橋を残したまま工事ができるという話に、皆が喜んでおります。ここが通れなくなると、谷の村々は本当に困ってしまいますので」


「心配すんな。あっちの空いてる場所に造るからな!」


 皇牙が指さすと、勘助とフェリクスはすぐに最終確認へ取りかかった。


 フェリクスは測量具を使い、昨日調べた両岸の高さをもう一度確かめた。川岸には大雨のときに水が届く場所が分かる跡が残っており、村人から聞いた水位とも照らし合わせる。


 勘助は橋の前後に続く道を歩き、荷車が無理なく曲がれることと、橋の入口で見通しが悪くならないことを確かめた。


「この位置でよろしいでしょう。橋の幅にも余裕を持たせ、両端の道を緩やかにつなげれば、往来がずいぶん楽になります」


「測量した高さとも合っています。皇牙様、図面の位置で問題ありません」


「よっしゃ! じゃあ、いよいよ俺の出番だな!」


 皇牙は腕まくりをした。


 巴はその間に、村人たちへ工事場所から離れるよう声をかけていた。新橋の予定地には誰もおらず、古い橋の通行にも影響しない位置であることを確認する。


 好奇心旺盛な子どもたちが川岸へ駆け寄ろうとすると、巴は優しい口調で呼び止めた。


「ここから見ている方が、橋のできる様子もよく見えますよ」


 子どもたちは素直に頷き、大人たちのそばへ戻った。


 やがて勘助が皇牙へ合図する。


「殿。準備が整いました」


「おう!」


 皇牙はゆっくりと川へ向き直った。


 澄んだ水が石の間を流れ、対岸では乾いた草が風に揺れている。その間には今、何もない。人も荷車も、ずっと上流の傷んだ木橋を渡るしかなかった。


 ここに、新しい道を造る。


「ふっふっふ……。さあ、見せてやるぜ。これがアストレア式、超絶建築だ!」


 皇牙は右手を掲げた。


「《国家創造EX》!」


 瞬間、川の両岸に白銀を帯びた石造りの橋台が出現した。


 どよめく村人たちの目の前で、橋台から重厚な石のアーチが伸びていく。水面に影を落としながら両側から迫った石の曲線は、川の中央でぴたりと重なり、一つの美しい橋となった。


 続いて滑らかな石畳が敷かれ、その両側へ丈夫な欄干が立ち上がる。欄干の外側には細かな装飾が浮かび、入口には威厳のある石柱が四本そびえた。


 最後に、橋の両端から既存の街道へ向けて緩やかな石畳の道が伸びた。地面の起伏に合わせて道が整い、荷車が無理なく上り下りできるようにつながっていく。


 すべてが完成するまで、ほんのわずかな時間だった。


「……完成だ!」


 皇牙が腕を下ろした。


 川の上には、朝日を受けて輝く立派な石橋が架かっていた。幅広い路面の中央にはささやかな装飾が施され、橋の入口に刻まれたアストレアの紋章が静かに存在感を放っている。


 派手すぎず、それでいて見る者の記憶に残る姿だった。


「……は?」


 最初に声を漏らしたのは、古い橋の通行を待っていた御者だった。


「い、今……橋が生えたぞ?」


「石橋だ……。あんな立派な橋が、一瞬で……」


 村人たちは目を見開いたまま、目の前の光景から視線を離せなかった。


 エリサは書類を抱える手を止め、ハロルドは何度も橋と皇牙を見比べている。


「どうだ! 俺の最高傑作の一つだぜ!」


 皇牙は満面の笑みを浮かべた。


 もっとも、勘助は感動に浸るより先に橋へ足を向けた。


「見事な造りにございます。まずは通行に支障がないか確かめましょう」


 フェリクスも後に続き、橋の傾斜や道幅を確認した。図面で決めた高さは再現され、橋の下には川の流れを妨げない空間が確保されている。


 巴も欄干に手を添え、歩く者が安心して通れる幅を確かめた。


「殿。これなら、荷車が通る横を人が歩いても余裕がありますね」


「だろ! そこは勘助たちが考えてくれたからな!」


 皇牙が言うと、フェリクスは少し照れたように頭を下げた。


 次は、実際の使い勝手を確かめる番だった。


 最初に名乗り出たのは、麦の袋を積んだ荷車を引く年配の男だった。男は長年この橋を使ってきたらしく、古い木橋の方をちらりと振り返った。


「今までなあ、あの橋を渡るたびに車輪が板の隙間へ落ちねえか心配だったんだ。荷を積んでる日は、なおさらでよ」


 男はそう言って、馬の手綱を握り直した。


 巴が橋の入口で周囲を見守る中、荷車はゆっくりと新しい石橋へ進んだ。


 車輪が石畳の上を滑らかに転がる。橋の中央に差しかかっても、古い木橋のような軋む音はしない。馬の足取りも落ち着いており、御者は何度も路面を見下ろしていた。


 やがて荷車が向こう岸へ到着すると、男は手綱を引いて振り返った。


「……こりゃ驚いた。もう橋板が割れる音に怯えなくていいのか」


 その声は、少し震えていた。


 見守っていた村人の中から、一人の女性が安堵の息を漏らした。


「これなら、子どもを連れて隣の村へ行くときも安心ね」


「雨が降ったあとでも、前みたいに橋板を一枚ずつ確かめずに済むぞ」


 別の村人が言うと、周囲から次々と声が上がった。


 皇牙はその様子を眺め、思わず笑みを深くした。


 自分にとっては、格好いい石橋を造れたことが何より楽しい。けれど、村人たちにとっては、その橋を安心して渡れることの方がずっと大切なのだろう。


「……へへっ。造ってよかったな」


 小さく呟くと、隣にいた巴がこちらを見た。


「はい。皆様の顔を見れば、よく分かります」


 巴はいつものようにからかうのではなく、穏やかに微笑んだ。


 その言葉が妙に嬉しくて、皇牙は少しだけ鼻の下をこすった。


 その後、もう一台の荷車も無事に新橋を渡り、通行に問題がないことを確認した。


 勘助は村人たちと相談し、新橋へ誘導するための案内を古い橋の手前に置くことを提案した。村側は手持ちの木札と縄を使い、ひとまず荷車が旧橋へ入らないようにする。


 古い木橋を撤去するかどうかは、七村の村長たちが改めて決めることになっている。それまでは危険な利用を避け、村の担当者が通行を見守ることになった。


「皇牙様。本当にありがとうございました」


 ハロルドは改めて深く頭を下げた。


「これで七つの村を行き来する者たちも、安心して荷物を運べます」


「おう! 俺もいい橋が造れて満足だぜ!」


 皇牙は胸を張った。


 すると、さきほど橋を渡った年配の御者が近づいてきた。


「あんたの街にも、これで行きやすくなるな。うちの孫が、そっちの街を一度見てみたいって言っててよ」


「おっ、そうなのか?」


「畑が広くて、家も立派だって聞いたらしい。若い連中は、ああいう話が好きだからな」


 皇牙は嬉しそうに笑った。


「だったら見に来りゃいいじゃねえか! 見学するだけでも大歓迎だぞ!」


 その会話を聞いていたエリサが、手元の記録を開いた。


「実は、移住を考えている方々のうち、三世帯がアストレアを見学したいと申し出ています」


「おおっ! ついに来るのか!」


「まだ日程を調整している段階です。見学してから移住するかどうか決めたいとのことですので」


「それでいいって。住む場所を決めるんだから、ちゃんと自分の目で見てもらわねえとな!」


 皇牙はあっさり頷いた。


 エリサはほっとしたように微笑んだ。七村でアストレアへの移住に関心を示しているのは十数世帯だが、実際に動こうとしている家族はまだ少ない。皇牙が急かさないと分かり、安心したらしい。


「見学の日程が決まったら知らせてくれ。案内はクラリスや尊徳に頼んでおくからさ!」


「皇牙様はご案内なさらないのですか?」


 エリサが思わず尋ねる。


「俺? いや、もちろん会うけど、細かい説明は専門家の方が上手いだろ!」


 皇牙は当然のように答えた。


「その代わり、住むって決まったら最高の家を造ってやるぜ!」


 その言葉にエリサが笑い、ハロルドも嬉しそうに頷いた。


 昼過ぎ、皇牙たちは《空間転移EX》でアストレアへ戻った。


 城館ではクラリスが待っており、石橋が完成したと聞くと驚いた顔をした。


「もう橋が完成したのですか?」


「おう! しかも、めちゃくちゃ格好いいぞ!」


 皇牙が得意げに答える横で、勘助は完成した橋の位置と旧橋の通行案内について説明した。フェリクスも測量記録を整理し、七村へ渡すための完成図をまとめることになった。


 クラリスは橋の維持管理については七村の担当者が引き受けると確認し、アストレアでは今後の往来の増加に備えて、商人や見学者の受付を整えることにした。


 その話を聞いた皇牙は、すっかり満足した顔で椅子へ腰を下ろした。


「いやあ、いい仕事したぜ。今日はもう何もしたくねえ」


「殿。今日はお好きな建築をなさったのでは?」


 巴が尋ねる。


「そうだけど、好きなことでも疲れるもんは疲れるんだよ!」


 皇牙は堂々と言い切った。


 その日の夕方、皇牙は城館の中庭で、いつもの無料ガチャを開いた。


【無料召喚:3/3回】

【国家人口:128人】

【SR以上排出率:5%】


「さあて、今日は橋も完成したし、ガチャも景気よく頼むぜ! そろそろ大物偉人、来い!」


 一回目に現れたのはN道路清掃補助のマティアス。二回目はR石工職人のロレンツ、そして三回目はN倉庫運搬補助のアニカだった。


「……おおっ! 石工職人!」


 皇牙はロレンツの職種を見て、目を輝かせた。


「今日、石橋を造ったばっかりなのに! これ、運命じゃねえか?」


「殿。橋はもう完成しておりますよ」


 巴が笑う。


「分かってるって! でも、石造りの設備を見たり、修理したりできる奴がいるのは心強いだろ!」


 皇牙は三人を歓迎し、それぞれの仕事については担当者たちへ相談してもらうことにした。


【無料召喚:0/3回】

【国家人口:131人】

【SR以上排出率:5%】


「百三十一人か。よしよし、順調だな!」


 皇牙は満足そうに画面を閉じた。


 夜、城館の窓から見えるアストレアには、家々の明かりがともり始めていた。


 今日、リューデン谷には新しい石橋が架かった。谷の七つの村はもちろん、これからアストレアを訪れる商人や移住希望者にとっても、その橋は大切な道になるだろう。


 皇牙は椅子に深く腰を下ろし、今日の光景を思い返した。


 石橋を見上げて驚いた村人たち。荷車が無事に渡った瞬間の歓声。そして、安心したように笑っていた年配の御者。


 そのどれもが、思いのほか気分のいいものだった。


「……へへっ。やっぱり建築って最高だな」


 皇牙は小さく笑った。


 自分は立派な建物を造るのが好きなだけだ。政治も商売も、できることなら優秀な人材に任せてしまいたい。


 それでも、自分の造ったものが誰かの役に立つのは悪くない。


「よし。次に何か造るなら、もっとすげえのにしてやろう!」


 窓の外へ向かってそう宣言すると、皇牙は満足そうに伸びをした。


 リューデン谷の川には、古い木橋と並んで新しい石橋が架かっている。


 それは七つの村をつなぐ橋であり、同時に、アストレアと外の世界を結ぶ新しい道でもあった。

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