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建国スキルがぶっ壊れている件。歴史の偉人をガチャ召喚して、俺は悠々自適に暮らしたい  作者: 阿鼻恭介
第二章

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第2章 第51話 七つの村から正式依頼!? だったら橋の下見に行こうぜ!

 朝日に照らされた西門の前で、荷運び人のグレンが馬の首を軽く撫でていた。


 荷車には、ガルドたちが製作した蓋付き木箱が二つ積まれている。定期市まで運び、買い手が見つかれば一個銀貨四枚で販売する。売れなければ持ち帰るという、アストレア初の試験運送だ。


「よし。縄も緩んでねえし、車輪も問題なしだな」


 グレンは荷台を一周すると、傍らのカイルへ頷いた。


「それじゃ、行ってくるぜ」


「よろしくお願いします。戻られたら、売れ行きにかかわらずお話を聞かせてください」


 カイルは記録帳を閉じた。昨日結んだ契約では、往復の運送報酬は銀貨二枚。売れたかどうかを確かめるのは、グレンが帰ってきてからだ。


 そこへ城館の方から、神城皇牙が巴を連れて現れた。


「おーい、グレン! 出発する前に間に合ったか!」


「おう、皇牙様。今から門を出るところだ!」


 異世界生活三十九日目の朝。皇牙は、自分の街の商品が初めて外の市場へ運ばれるところを見ようと、いつもより早く朝食を済ませていた。


「頼んだぜ! うちの木箱を定期市の連中に見せつけてやってくれ!」


「二つしかねえけどな!」


「最初は二つでも、いつかは荷車百台分だ!」


 皇牙が大きく腕を広げると、グレンは豪快に笑った。


 巴は荷車から少し離れた場所に立ち、門を通る住民たちが馬の前へ出ないよう気を配っていた。


「道中、どうかお気をつけて。無事に戻られることが、何より大切です」


「分かってるよ。荷運び屋が荷物と一緒に帰れなきゃ、商売にならねえからな」


 グレンは片手を上げ、荷車をゆっくりと動かし始めた。


 西門の向こうへ消えていく後ろ姿を、皇牙はしばらく眺めていた。


「……へへっ。あの荷車が帰ってくる頃には、俺の街も少しは有名になってるかもな」


「木箱二つで、そこまで有名になるでしょうか」


「巴、お前は夢がねえなあ!」


 そんな軽口を交わしながら城館へ戻った皇牙は、今日こそ昼寝を満喫しようと考えていた。


 ところが、その願いは長く続かなかった。


「皇牙様。リューデン谷から、ハロルドさんとエリサさんがいらっしゃいました」


 廊下でクラリスに呼び止められ、皇牙は思わず足を止めた。


「おっ、あの二人か! 七つの村の話、まとまったのか?」


「橋の調査について、正式なお返事をお持ちだそうです」


「橋!? あの古い木橋か!」


 皇牙の目が一気に輝いた。


 先日、ミルデ村へ向かう途中で渡った橋である。傷んだ板や亀裂の入った支柱を見て以来、立派な石橋に造り替えたいと思っていたのだ。


「よし、すぐ会おうぜ!」


 昼寝の予定は、あっさり吹き飛んだ。


 来客用休憩所では、ハロルドとエリサが待っていた。


 ハロルドは皇牙の姿を見つけると、深く頭を下げた。


「皇牙様。先日はミルデ村の水路を直していただき、ありがとうございました」


「おう! あれから水はちゃんと流れてるか?」


「はい。ロベルトからも知らせが届いております。下流の畑まで水が届くようになり、村の者たちも喜んでおります」


「そりゃよかった!」


 皇牙が笑うと、同席していた二宮尊徳も穏やかに頷いた。


「ただし、川の水量そのものが増えたわけではございませぬ。ほかの村の水不足については、引き続き考えていく必要がありましょう」


「はい。そのことも、各村で話し合っております」


 エリサは答えながら、持参した書類の束を机へ置いた。


 七つの村の村長たちは、昨日までにそれぞれの返答を出していた。最後の村から返事が届いたあと、ハロルドとエリサは今朝早く谷を出て、荷車でアストレアを訪れたという。


「今回は、こちらをお持ちしました」


 差し出された書状には、七人の村長が調査を認めたことが記されていた。


 対象となるのは、谷の入口にある古い木橋と、その周辺の川岸や道路である。新しい橋を架ける場所を調べることまでは認められているが、実際に工事を始めるかどうかは、調査結果を見て改めて決めるという内容だった。


「なるほど。要するに、下見していいってことだな!」


「はい。橋の管理に詳しい村人にも立ち会ってもらえるよう、話をつけております」


「だったら今日行こうぜ!」


 皇牙が勢いよく立ち上がると、エリサは驚いたように目を瞬かせた。


「きょ、今日ですか?」


「せっかく二人が来てるんだし、俺もあの場所は一度行ってるからな。現地に着けば話が早いだろ!」


 山本勘助は書状を確認し、しばらく考えてから頷いた。


「調査に必要な者が揃うなら、今日のうちに下見をするのもよろしいでしょう。ただし、調査しただけで工事は始めませぬ」


「分かってるって! そこはちゃんと守る!」


 皇牙は胸を張った。


 さらに、話し合いの中で移住の件も少し進んでいることが分かった。


 七つの村では、十数世帯がアストレアに関心を示している。ただし、実際に見学したいと申し出ているのは、そのうち三世帯だけだった。ほかの家族は、村を離れるかどうかさえ決めていないらしい。


「三世帯か。いいじゃねえか! 見に来るなら大歓迎だぜ!」


「ありがとうございます。正式に移住するかどうかは、見学してから各家族が決めることになっています」


 エリサの言葉に、皇牙は頷いた。


「おう。無理に来いなんて言わねえよ。住みたいと思った奴が来ればいいんだ」


 尊徳はその話を引き受け、クラリスとともに見学時の案内や仕事の相談を進めることになった。


 皇牙としては、住宅を造る仕事が増えるかもしれないのが少し楽しみだったが、今はそれ以上に橋の方が気になっていた。


「よし! じゃあ、行く準備だ!」


 皇牙は巴、勘助、フェリクスを伴い、中庭へ向かった。


 ハロルドとエリサも同行する。測量に使う道具はフェリクスが用意し、勘助は現地で確認すべき場所を整理した。


「普通に荷車で行ったら、また数時間かかるんだよな……」


 皇牙は少し考え、にやりと笑った。


「……そうだ。俺には便利な魔法があったじゃねえか!」


 皇牙が選んだのは《空間転移EX》だった。


 先日、ミルデ村へ行った際に、谷の入口や橋の周辺は自分の目で確かめている。同行者も六人だけなので、転移できる人数の上限には十分余裕があった。


「全員、俺の近くに集まってくれ!」


 ハロルドとエリサは驚いた様子だったが、巴たちに促されて皇牙のそばへ寄った。


 次の瞬間、周囲の景色が一変した。


「……うわっ!?」


 エリサが思わず声を上げる。


 そこは、リューデン谷の入口にある街道だった。少し先には例の古い木橋が見え、川の流れる音が聞こえている。


「ど、どうなって……?」


「《空間転移EX》だ! 俺が行ったことのある場所なら、こんな移動もできるんだぜ!」


 皇牙は得意げに笑った。


 ハロルドは目を丸くしたまま、しばらく言葉を失っていた。


「……皇牙様のお力は、本当に規格外ですな」


「まあな!」


 皇牙は満足そうに頷いたが、勘助はすでに橋の方へ目を向けていた。


「殿。せっかく早く着けたのです。明るいうちに調査を進めましょう」


「おう! 頼んだぜ!」


 橋の手前では、村の道を管理している男が二人を待っていた。


 ハロルドが事情を説明すると、男たちは頷き、古い橋の周囲を案内してくれた。


 近くで見ると、木橋は以前よりも傷んで見えた。橋板の一部は深くすり減り、支柱には亀裂が走っている。


 巴は橋へ近づき、板の状態を確かめながら足を止めた。


「殿。この部分は、体重をかけると大きく沈みます。しばらく荷車の通行には注意が必要でしょう」


「うわ、マジかよ。これ、結構危ねえな」


 勘助は橋の両端を見比べ、さらに川岸の様子を確かめた。


「問題は橋そのものだけではございませぬ。こちらの岸は道が高く、向こう岸は少し低くなっております」


「ん? それがどうしたんだ?」


「橋をまっすぐ架け直すだけでは、向こう側の道へ急な下り坂ができるかもしれませぬ。荷車が通るには、取り付ける道も考える必要がございます」


「なるほど……。ただ橋を造りゃいいってわけじゃねえのか」


 皇牙が腕を組むと、フェリクスが測量具を取り出した。


「勘助様。こちらの高さを確かめてみます」


 フェリクスは簡単な測量具を使い、両岸の高さと川幅を確認していった。勘助はその結果を地面に描いた図へ書き込み、川の曲がり方や周辺の道とのつながりを整理する。


 しばらく調べたところで、フェリクスが一つの場所を指さした。


「こちらです。古い橋から少し下流になりますが、この辺りなら両岸の高さが近く、道も緩やかにつなげられそうです」


 勘助は川岸を見渡し、静かに頷いた。


「ふむ。こちらなら荷車も通しやすいでしょう。ただし、川が増水したときのことも考えねばなりませぬ」


 案内役の村人が、川岸の少し高い位置を指さした。


「大雨のあとには、あの辺りまで水が来ることがあります」


「なるほど。それなら橋の高さにも余裕が必要ですな」


 勘助はその場所を確認し、フェリクスへ測量結果をまとめるよう伝えた。


 皇牙は二人のやり取りを眺め、感心したように息を吐いた。


「……お前ら、ほんとすげえな。俺なら何も考えずに、でっかい石橋を造ってたわ」


「殿のお力なら立派な橋を造ることはできましょう。しかし、長く使うのであれば、場所と形を決めることも大切にございます」


「だよな。よし! そこは全部任せる!」


 皇牙は満足そうに笑った。


 そのあと、フェリクスは調査結果をもとに、橋を架ける候補地を簡単な図にまとめた。


 古い木橋は残したまま、新しい橋を少し下流へ架ける。そこへつながる道を緩やかに整えれば、荷車も通りやすくなる見込みだった。


「おおっ! いいじゃねえか!」


 皇牙は図を覗き込み、目を輝かせた。


「だったら、橋の両側に格好いい石柱を立ててさ! 真ん中にはアストレアの紋章を……!」


「殿。まだ建設の許可は出ておりませんよ」


 巴が静かに言った。


「……あっ」


 皇牙は動きを止めた。


「そ、そうだったな! 今は下見だけだった!」


 周囲から小さな笑い声が漏れた。


 それでも皇牙は楽しそうだった。自分が造る橋を想像するだけで、頭の中には次々と案が浮かんでくる。


 勘助は橋の候補地を確認し、最後に村人たちへ尋ねた。


「この場所を新しい橋の候補として、七つの村へ伝えてもよろしいでしょうか」


「もちろんです。今の橋が使えなくなる前に、何とかしたいと思っていたところですから」


 村人たちは揃って頷いた。


 ハロルドも調査結果を受け取り、ほっとしたように息を吐いた。


「ありがとうございます。これなら、村長たちにも具体的な話ができます」


「おう! ちゃんと許可が出たら、俺がすげえ橋を造ってやるからな!」


 皇牙は笑いながら拳を握った。


 調査を終えると、一行は《空間転移EX》でアストレアへ戻った。


 まだ夕方には少し早い時間だった。ハロルドとエリサはその日のうちに村へ戻る予定だったため、調査結果を預け、次の会議で七人の村長へ伝えてもらうことになった。


 皇牙は二人を西門まで見送り、満足そうに伸びをした。


「ふう! 今日は結構働いたな!」


「殿。実際に測量されたのはフェリクス殿でございますよ」


「分かってるって! 俺は転移でみんなを運んだだろ!」


「はい。それは大変助かりました」


 巴が笑うと、皇牙もつられて笑った。


 その日の夕方、皇牙はいつもの無料ガチャを開いた。


【無料召喚:3/3回】

【国家人口:125人】

【SR以上排出率:5%】


「よーし! 今日は橋の調査も進んだし、そろそろ建築系の偉人が来てくれねえかな!」


 一回目はN畑作業補助のエドワード。二回目はR建築資材管理補助のハインツ。そして三回目はN厨房片づけ補助のロッテだった。


「……おおっ! 建築系、来たっちゃ来たな!」


 皇牙はハインツの職種を見て、少し嬉しそうに笑った。


 橋そのものを造るために資材を用意する必要はないが、今後の工房や倉庫の管理には役立ちそうだった。


「まあ、悪くねえな! みんな、よろしく頼むぜ!」


 三人を歓迎し、仕事の配置についてはクラリスたちへ相談してもらうことにした。


【無料召喚:0/3回】

【国家人口:128人】

【SR以上排出率:5%】


「百二十八人か。順調、順調!」


 皇牙は満足そうに画面を閉じた。


 夜になると、城館の窓から見える街には、ぽつぽつと明かりがともり始めた。


 西の街道では、グレンが木箱を積んだ荷車を進めている頃だろう。


 そしてリューデン谷では、七つの村の代表者たちが、新しい橋を架ける場所について話し合うことになる。


 皇牙は窓の外を眺めながら、小さく笑った。


「……へへっ。何だか、本当に街が大きくなってきたな」


 最初は自分が楽をするために造った城だった。それが今では、周辺の村々からも頼られるようになっている。


 もっとも、皇牙の目標が変わったわけではない。


「よし! 面倒な話は全部任せて、俺は格好いい橋を造るぞ!」


 皇牙はそう宣言すると、明日こそ昼寝を満喫するつもりで寝室へ向かった。


 その頃、勘助とフェリクスは、今日の調査結果をもとに橋の候補地をまとめていた。


 古い木橋を残したまま、新しい石橋を架ける計画。


 まだ工事の許可は出ていない。


 それでも、リューデン谷とアストレアをつなぐ新しい道は、少しずつ形になり始めていた。

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