↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
建国スキルがぶっ壊れている件。歴史の偉人をガチャ召喚して、俺は悠々自適に暮らしたい  作者: 阿鼻恭介
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/40

第1章 第3話 本物の巴御前

 乾いた風が吹き抜ける荒野を、神城皇牙は三人の召喚者とともに歩いていた。

 

 先頭を進むのは、赤い鎧を身につけた女武者、巴御前。その少し後ろに皇牙が続き、農民のマルクと職人のガルドが並んで歩いている。

 

 もっとも、皇牙の視線は先ほどから巴の背中にばかり向けられていた。

 

 長い黒髪を後ろで束ね、薙刀を携えて歩く姿は、まるで歴史画から抜け出してきたようだった。何度見ても、あの巴御前が目の前にいるという事実には興奮してしまう。

 

「……なあ、巴。一つ聞いてもいいか?」

 

「はい。何でございましょう、殿」

 

「巴って、昔のことはどれくらい覚えてるんだ?」

 

 皇牙の質問に、巴は少し意外そうな表情を浮かべた。

 

「昔のことでございますか?」

 

「ああ。俺のいた世界じゃ、巴は歴史上の人物として知られてるんだ。だから、どんな人生を送ってきたのか気になってさ」

 

 巴はすぐには答えなかった。歩く速度を緩め、遠くの岩山を眺めながら、何かを思い出そうとするように目を細める。

 

「……不思議なことに、昔のことはあまり鮮明ではございません」

 

「そうなのか?」

 

「はい。武芸を学び、戦場に立っていたことは覚えております。木曾殿にお仕えしていたことも……。ですが、いつ、どこで、何があったのかと尋ねられますと、思い出せぬことが多いのです」

 

 巴は少し困ったように微笑んだ。

 

 その表情に悲しみや動揺はなく、単に思い出せないことを不思議に感じているようだった。

 

「なるほどな。記憶が全部残ってるわけじゃないのか」

 

「申し訳ございません」

 

「いやいや、謝ることじゃないって。別に歴史の試験をするつもりじゃないし」

 

 皇牙は慌てて手を振った。

 

 歴史好きとしては、本人から源平合戦の話を聞いてみたかったのも事実だ。しかし、覚えていないことを無理に思い出させるつもりはない。

 

 それに、目の前にいる巴が本物の武人であることに変わりはなかった。

 

「じゃあ、槍とか薙刀の使い方は覚えてるんだよな?」

 

「無論にございます。身体に染みついた武芸を忘れることはございません」

 

 巴はそう答え、手にした薙刀を軽く持ち直した。その動作は驚くほど滑らかで、長い得物を扱っているとは思えないほど自然だった。

 

「おお、頼もしいな」

 

 皇牙は満足そうに頷いた。

 

 歴史上の細かな出来事を覚えていなくても、戦闘技術や経験が残っているなら問題ない。むしろ、異世界で新しい人生を送るうえでは、その方が気楽なのかもしれなかった。

 

 もっとも、皇牙にとって本当に気になっていたのは、彼女の戦闘能力だった。

 

「そういえば、まだ巴のステータスをちゃんと見てなかったな」

 

 皇牙は立ち止まり、万能鑑定EXを発動した。

 

 すると、目の前に半透明の青い画面が現れる。

 

【人物ステータス】

 

名前:巴御前

レアリティ:SR

分類:武将

所属:神城皇牙

 

【能力評価】

 

総合:B+(A-)

統率:B

武勇:A+(S-)

知略:C+

財務:D

内政:D+

外交:C-

忠義:S

農業:D

工芸:E+

商業:D-

 

【固有スキル】

《忠義の武者》

 

「……おおっ! 武勇A+!?」

 

 皇牙は思わず目を見開いた。

 

 能力評価は全部で十一項目。その中でも、巴の武勇は飛び抜けていた。統率もBと高く、単に個人で戦うだけでなく、兵を率いる能力も十分に備わっているらしい。

 

 一方、財務や農業、商業などはそれほど高くない。

 

 もっとも、皇牙にとってはむしろ好都合だった。

 

「やっぱり巴は戦闘特化だな。内政とか農業まで得意だったら、それこそ何でもありになっちまう」

 

「殿?」

 

 巴が不思議そうに振り返った。

 

「ああ、悪い。今、万能鑑定で巴の能力を確認してたんだ」

 

「私の力量を、でございますか?」

 

「そう。俺には人の能力を調べられるスキルがあるんだよ」

 

 皇牙が簡単に説明すると、巴は感心したように頷いた。

 

「人の得手不得手を知ることができるとは、便利な術にございますね」

 

「だろ? これなら仕事を任せるときにも役立ちそうだ」

 

 皇牙は嬉しそうに笑った。

 

 優秀な人物を召喚できたとしても、その才能を活かせなければ意味がない。軍事が得意な者には軍事を、農業が得意な者には農業を任せればいい。

 

 何でも自分でやるより、専門家に任せた方が効率的だ。

 

 それに、皇牙自身が楽をできる。

 

「しかし、忠義がSっていうのもすげえな」

 

 皇牙が画面を眺めていると、巴は真剣な表情で口を開いた。

 

「殿にお仕えすると決めた以上、武人として恥じぬ働きをする所存にございます」

 

「お、おう。期待してるぞ」

 

 真っ直ぐな眼差しを向けられ、皇牙は少し照れくさくなった。

 

 召喚されたばかりなのに、ここまで忠義を示してくれるとは思っていなかった。ただし、巴には自分の考えもあるのだろう。先ほどから皇牙の安全を気にかけ、必要なことは遠慮せずに進言している。

 

 何でも言いなりになる家臣より、そういう人物の方が頼りになる。

 

 そこで皇牙は、武勇の評価に括弧付きの数字が表示されていることに気づいた。

 

「……ん? このA+の横にあるS-って何だ?」

 

 詳しく調べると、固有スキルによる能力上昇を示した参考値らしい。現在の能力が上昇しているわけではなく、条件を満たした際の評価が括弧内に表示されているようだった。

 

 皇牙は固有スキルの詳細を開いた。

 

【固有スキル《忠義の武者》】

 

主君から半径30メートル以内で戦闘している場合、筋力・敏捷性・耐久力・反応速度が1.5倍になります。

 

発動条件を満たすと自動的に発動します。

 

主君が危険にさらされている必要はありません。

 

「……身体能力一・五倍?」

 

 皇牙は画面を二度見した。

 

 もともと武勇A+という高い能力を持っているのに、条件を満たせばさらに強くなるらしい。しかも、皇牙から三十メートル以内で戦っていれば自動的に発動するという。

 

「これ、めちゃくちゃ強いじゃねえか!」

 

「殿、どうかなさいましたか?」

 

「巴、お前、俺の近くで戦うと身体能力が一・五倍になるらしいぞ」

 

「私が、でございますか?」

 

 巴は驚いたように自分の手を見つめた。

 

「そのような力があるとは、存じませんでした」

 

「まあ、今は戦ってないから発動してないみたいだけどな。実際に戦うときは相当強くなるはずだ」

 

「なるほど……」

 

 巴はしばらく考え込んでいたが、やがて静かに頷いた。

 

「ありがたい力にございます。しかし、いかに優れた力を授かろうとも、油断してはなりませんね」

 

「さすが本物の武将だな」

 

「戦場では、一瞬の油断が命取りになりますゆえ」

 

 その言葉には、実際に戦場を経験した者ならではの重みがあった。

 

 皇牙も素直に頷いた。

 

 自分には全属性魔法EXという規格外の能力がある。しかし、強い魔法を使えることと、実際の戦闘で適切に行動できることは別だ。

 

 その点、巴がそばにいてくれるのは心強かった。

 

「まあ、戦闘になったら頼むわ。俺も魔法は使えるけど、実戦経験なんてないからな」

 

「承知いたしました。殿は私がお守りいたします」

 

 巴は迷いなく答え、周囲へ鋭い視線を向けた。

 

 皇牙はその横顔を眺めながら、改めて初回ガチャの結果に満足した。

 

 SRというレアリティだけでも十分に当たりだが、初めての偉人が巴御前だったのは、歴史好きとして本当に嬉しい。

 

 すると、少し離れた場所で二人の会話を聞いていたガルドが口を開いた。

 

「なあ、皇牙。その鑑定ってやつ、俺たちにも使えるのか?」

 

「ああ、もちろん。ちょっと待ってくれ」

 

 皇牙はガルドへ視線を向け、万能鑑定EXを発動した。

 

 目の前に表示された情報には、名前やレアリティとともに、十一項目の能力評価が並んでいた。

 

 さすがに巴ほど高い評価はなかったが、工芸が他の能力より優れている。続いてマルクを調べると、こちらは農業の評価が最も高かった。

 

「なるほどな。やっぱり専門分野に強いんだな」

 

「そりゃそうだ。俺に畑仕事を任されても、いい出来になる保証はねえぞ」

 

 ガルドが肩をすくめると、マルクも穏やかに頷いた。

 

「私も家具や道具を作るのは専門外でございます。それぞれが得意な仕事を担当するのがよろしいでしょう」

 

「だよな。やっぱり適材適所が一番だ」

 

 皇牙は満足そうに笑った。

 

 一般人材も単なる人数合わせではない。専門分野の知識や経験を持ち、自分の判断で行動できる。これなら、今後人材が増えたときにも仕事を任せやすいだろう。

 

 もっとも、現時点では四人しかいない。

 

 農民が一人、職人が一人、武将が一人。そして、できるだけ働きたくない大学生が一人。

 

 改めて考えると、随分と心許ない集団だった。

 

「……とりあえず、今は生活を何とかしないとな」

 

 皇牙は近くに建つ石造りの小屋へ視線を向けた。

 

 国家創造EXで作った小屋は頑丈そうだが、中には家具も寝具もない。雨風をしのぐには十分でも、四人が快適に暮らすには足りないものだらけだった。

 

 それに、もっと大きな問題がある。

 

 食料と飲み水だ。

 

「そういや、水ってどうするんだ?」

 

 皇牙の問いかけに、マルクが周囲を見渡した。

 

「近くに川か泉があればよいのですが……この辺りには見当たりませんな」

 

「うーん。水源を探すにしても、どこにあるか分からないしな」

 

 皇牙は腕を組んで考え込んだ。

 

 そこで、ふと思いついた。

 

「……あれ? 俺、水魔法が使えるじゃん」

 

 国家創造EXやガチャのことばかり考えていたが、自分には全属性魔法EXがある。

 

 転生直後に小さな水球を作ることにも成功していた。あの水を飲み水として利用できるなら、当面の問題は解決するはずだ。

 

「ちょっと試してみるか」

 

 皇牙は小屋の前に戻り、右手を差し出した。

 

 頭の中で透明な水を思い浮かべると、手のひらの上に小さな水球が現れた。水球は空中に浮かんだまま形を保ち、日の光を受けてきらきらと輝いている。

 

「おおっ、やっぱり出せた!」

 

 マルクとガルドが驚いたように目を見開いた。

 

「皇牙様、今のは魔法でございますか?」

 

「ああ。水魔法ってやつだな」

 

「へえ、便利なもんだな。これなら水を運ぶ必要もねえじゃねえか」

 

 ガルドは感心したように言ったが、皇牙はすぐには水を飲まなかった。

 

 見た目が綺麗だからといって、安全とは限らない。魔法で作った水が飲めるものなのか、確認しておいた方がいいだろう。

 

「よし、こういうときこそ万能鑑定だな」

 

 皇牙が水球へ鑑定を使用すると、小さな画面が現れた。

 

【鑑定結果:魔法生成水】

 

水属性魔法によって生成された水。

有害な不純物は含まれておらず、飲用可能。

 

「……おお! 飲めるじゃん!」

 

 皇牙は思わず笑顔になった。

 

 これなら少なくとも、飲み水がなくて困ることはなさそうだった。

 

 ただし、目の前にあるのは空中に浮かぶ水球だ。このままでは飲みにくい。

 

「……入れ物が欲しいな」

 

 皇牙がそう呟くと、ガルドが自分の腰に下げた道具を見下ろした。

 

「俺の工具じゃ水は入れられねえぞ。容器を作るにしても材料が必要だ」

 

「だよなあ」

 

 皇牙は少し考えたあと、国家創造EXの画面を開いた。

 

 建物は無料で作れるのだから、簡単な設備なら作れるはずだ。

 

 そう考えて小屋の横に小さな石造りの水槽を設定すると、建設可能という表示が現れた。

 

「おっ、これならいけるな」

 

 皇牙が創造を実行すると、小屋の隣に腰ほどの高さの石造りの水槽が完成した。内側は滑らかに仕上げられており、水を溜められる構造になっている。

 

「おいおい、また一瞬で作りやがった!」

 

 ガルドが呆れたように笑った。

 

 皇牙は得意げに頷き、水球を水槽の中へ移動させた。

 

 そのまま水魔法を使い続けると、透明な水が少しずつ溜まっていく。やがて水槽の半分ほどまで満たされたところで、皇牙は魔法を止めた。

 

「よし。これで当面の飲み水は確保できたな」

 

 マルクは水槽を覗き込みながら、感心したように頷いた。

 

「これはありがたいことでございます。水を確保するだけでも、大きな労力が必要になりますので」

 

「まあ、俺の魔力は無限らしいしな。水くらいならいくらでも作れるぞ」

 

 皇牙はそう言って笑った。

 

 ただし、魔法で水を作れるからといって、川や井戸が不要になるわけではない。今は四人しかいないが、将来何百人、何千人と住民が増えれば、毎日の水を皇牙一人が用意するわけにもいかない。

 

 何より、そんな仕事を毎日続けるのは絶対に嫌だった。

 

「……やっぱり、城を建てる場所は水源の近くがいいな」

 

「はい。長く人が暮らすのであれば、安定して水を得られる場所が望ましいでしょう」

 

 マルクの言葉に、皇牙は素直に頷いた。

 

 国家創造EXと無限魔力EXがあれば、当面の生活は何とかなりそうだ。しかし、国として発展させるなら、自分が何もしなくても生活できる仕組みが必要になる。

 

 そう考えると、優秀な家臣を集めるだけでなく、住みやすい土地を選ぶことも重要だった。

 

「よし。水は何とかなったし、次は食料だな」

 

 皇牙は改めて周囲を見渡した。

 

 小屋の近くには雑草がまばらに生えているだけで、食べられそうな植物は見当たらない。遠くには岩山があり、その手前には背の低い木々が集まっている場所もある。

 

 しかし、何が食べられるのかも分からない状態で、適当に植物を口にするわけにはいかなかった。

 

「食料については、周辺を調べる必要がありそうだな」

 

「そうでございますね。ですが、むやみに遠くへ向かうのは危険かと存じます」

 

 巴がそう言って、薙刀を持ち直した。

 

 皇牙は彼女の視線を追い、遠くの岩山を眺めた。

 

 この荒野には魔物が生息しているらしい。今のところ姿は見えないが、どこに潜んでいるか分からない以上、慎重に行動した方がいいだろう。

 

「じゃあ、まずは小屋の近くを調べる程度にしておくか」

 

「はい。それがよろしいかと」

 

 巴は頷き、皇牙たちの前へ出た。

 

 その姿を見て、皇牙は少しだけ安心した。

 

 自分には圧倒的な魔法があるとはいえ、実際の戦闘経験はない。何かあったときに頼れる武人がいるだけでも、心強さがまるで違う。

 

 皇牙は小屋の方を振り返った。

 

 石造りの建物が一つと、その隣に新しく作った水槽があるだけの小さな拠点。立派な城もなければ、街道や農地もない。

 

 それでも、少しずつ生活に必要なものが揃い始めていた。

 

「……何か、建国ゲームの序盤みたいで楽しくなってきたな」

 

「殿?」

 

「いや、こっちの話。とりあえず今日は、この辺りで生活できるようにしようぜ」

 

 皇牙がそう言うと、マルクとガルドも頷いた。

 

 マルクは食べられる植物や農業に使えそうな土地を探し、ガルドは木材などの材料を確認したいらしい。巴は周囲の警戒を担当し、皇牙は必要に応じて魔法や国家創造EXを使う。

 

 自然と役割が分かれていく様子を見て、皇牙は満足そうに笑った。

 

 やはり、自分一人で何もかも考えるより、専門家に任せた方が効率的だ。

 

 しかも、これから毎日三回ずつ無料ガチャを引ける。人材が増えれば、もっと多くの仕事を任せられるようになるだろう。

 

 もっとも、今すぐ次のガチャを引きたいところだが、残念ながら今日はもう三回とも使い切っている。

 

「……次は料理人とか欲しいな」

 

 皇牙が小さく呟くと、ガルドが振り返った。

 

「何だ? 腹でも減ったのか?」

 

「いや、まあ、それもあるけどさ。料理が得意な奴がいれば、毎日美味いものを食えるだろ?」

 

「まずは食材を確保しねえと、料理人がいたって何も作れねえぞ」

 

「……それもそうか」

 

 皇牙は苦笑した。

 

 どれほど優秀な人材を召喚しても、必要な材料や設備がなければ仕事はできない。農業も料理も建築も、その点では同じだった。

 

 それでも、何もない場所から少しずつ生活を整えていくのは、思っていた以上に面白い。

 

「よし。まずは食料探しだな。城を建てる場所については、ちゃんと周辺を調べてから決めよう」

 

「承知いたしました、殿」

 

 巴は力強く頷き、周囲に視線を走らせた。

 

 皇牙は彼女の隣へ並び、マルクとガルドにも声をかける。

 

「それじゃあ、行くか。あんまり遠くまで行かないようにな」

 

「お前さんがそんなこと言うとはな」

 

 ガルドがからかうように笑った。

 

「当たり前だろ。こんな何もない場所で迷子になったら面倒じゃねえか」

 

 皇牙が真顔で答えると、マルクも思わず笑みを浮かべた。

 

 巴だけは周囲への警戒を続けていたが、その表情は先ほどよりも少し柔らかくなっていた。

 

 四人は小屋を目印にしながら、近くの岩場へ向かって歩き始めた。

 

 皇牙の頭の中では、すでに巨大な城の構想が膨らんでいた。黒い城壁に高くそびえる尖塔、広い庭園に温泉施設。考えるだけで楽しくなってくる。

 

 しかし、今はまだ小さな石造りの小屋が一つあるだけだ。

 

 豪華な城で悠々自適に暮らすという夢を実現するには、まず安全に生活できる場所を確保しなければならない。

 

「……早く城を建ててえな」

 

 皇牙がぽつりと呟くと、巴が隣で微笑んだ。

 

「殿のお望みの城を築けるよう、私もお力添えいたします」

 

「おう、頼りにしてるぞ」

 

 皇牙は嬉しそうに笑い、再び荒野へ視線を向けた。

 

 どこに城を建て、どんな国を作るのか。まだ何も決まっていないが、考えるだけで胸が躍る。

 

 もっとも、彼が思い描いているのは壮大な国家の未来ではなく、豪華な城で昼寝をしながら毎日ガチャを引く生活だった。

 

 その理想を実現するためなら、最初の少しくらいは頑張ってもいい。

 

 ただし、面倒な仕事をいつまでも続けるつもりはない。

 

「……やっぱり、次は内政に強い偉人が欲しいな」

 

 皇牙はそう呟きながら、巴たちとともに荒野を歩き続けた。

 

 夢のスローライフへの道のりは、まだ始まったばかりだった。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマークや評価をいただけると励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。