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建国スキルがぶっ壊れている件。歴史の偉人をガチャ召喚して、俺は悠々自適に暮らしたい  作者: 阿鼻恭介
第二章

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第2章 第28話 人手が足りない!

「……おい、ドラン。その荷車、俺にも押させろ!」


「えっ!? 皇牙様がですか?」


「おう。ちょっと面白そうじゃねえか!」


 異世界へ来て十四日目の朝。神城皇牙は西の城門へ続く石畳の道で、ドランが押している小さな荷車を指さした。城館で朝食を終え、巴と散歩していたところ、荷台いっぱいに荷物を積んだドランが、曲がり角で苦戦しているのを見つけたのだ。


 車輪が石畳の継ぎ目に引っかかり、ドランは何度も荷車の向きを変えている。見たところ、たいして難しい作業には思えない。力いっぱい押せば進むだろうと、皇牙は軽い気持ちで取っ手を握った。


「殿。あまりご無理はなさらぬよう」


「心配すんなって。これくらい余裕だろ!」


 ところが、勢いよく押してみると、荷車は思ったほど素直に進まなかった。荷物の重さで前輪が溝に沈み、取っ手だけがぐらりと傾く。


「うおっ!? ちょ、待て! これ、曲がりにくくねえか!?」


 慌てて踏ん張る皇牙の横で、ドランが荷台を支えた。車輪の向きを直してもらうと、ようやく荷車が動き出す。


「……なんだよ。見た目より難しいじゃねえか」


「荷物が重いと、狭い角では苦労するんです。特にこの荷車は、前輪が大きく曲がる造りじゃありませんから」


 ドランは申し訳なさそうに笑った。


 今使っているのは、以前から物資運搬に使っている小型の手押し荷車だ。一度に運べる量は限られるが、重い木箱を人が抱えて何度も往復するよりはずっと楽になる。ただし、運搬の仕事はこの荷車一台だけでは回りきらず、ドランやボルクが手分けして荷物を運んでいた。


「だったら、この角を広くすりゃいいんじゃねえか?」


 皇牙が石畳を見渡すと、ドランは少し驚いたように目を瞬かせた。


「……それなら助かります。でも、困っているのはここだけじゃないんです」


「ほう?」


 興味を引かれた皇牙は、ドランに詳しい話を聞くことにした。


 今朝、工房へ届ける予定の木箱が六つ、倉庫に用意されていた。だが、ドランは厨房へ届ける荷物を頼まれており、ボルクは共同住居へ寝具を運んでいたため、工房行きの六箱にはまだ一つも手を付けられていないという。


「……つまり、荷物はあるのに運ぶ奴が足りねえってことか」


「人数もそうですが、頼まれる順番が重なってしまうんです。厨房へ行って、倉庫へ戻って、今度は共同住居へ行って……。同じ道を何度も通ることがあります」


 ドランは荷車を押しながら説明した。


 皇牙は少し考え、ふと口元を吊り上げた。


「……お前、いいこと教えてくれたな。ちょっとついてこい!」


 予定していた散歩は、その場で中止になった。


 皇牙が向かったのは、生活用倉庫だった。棚の前ではヘルダが在庫の記録を確かめ、その隣で昨日召喚されたローディンが工房へ出す荷物を仕分けている。


 六つの木箱はすべて倉庫の入口に並んでいた。中には縄や金具、道具の修理に使う材料が収められているという。


「おっ、六箱とも残ってるな。じゃあ、今日は俺が運んでやる!」


 皇牙が《空間収納EX》を使うと、目の前の木箱が一瞬で消えた。


 それを見たドランは、何とも言えない表情で笑った。


「……皇牙様がお運びになるなら、最初から苦労しませんね」


「いやいや、毎回俺が運んでたら昼寝できねえだろ。今日は特別だ!」


 皇牙はきっぱりと言い切った。


 その横で、ローディンがヘルダへ木箱の番号と行き先を伝え、出庫を記録する。ヘルダは倉庫の在庫を管理し、ローディンは出庫する品物を揃えて数量を確かめる。二人の役割はすでに分けられているらしい。


「へえ。ちゃんと仕事が分かれてるんだな」


「はい。ヘルダさんがすべてを抱え込まなくて済むように、私が荷物を確認することになりました」


 ローディンの返事に、皇牙は満足そうに頷いた。


 やはり、人に仕事を任せるという考え方は間違っていない。問題は、その仕事がうまくつながっていないことだった。


 工房へ到着すると、ガルドとフィンが材料を待っていた。皇牙が六つの木箱を取り出すと、ガルドは驚いた顔をしたあと、すぐに中身を確かめ始める。


「助かりましたぞ、皇牙様。これが届かねば、道具の修理に取りかかれませんでした」


「……やっぱりか。人も道具もあるのに、荷物が届かねえだけで止まるんだな」


 ガルドが頷くと、皇牙は工房の入口を見渡した。


 建物は立派だ。だが、荷物を置く場所が狭く、作業する者が出入りする通路に木箱が並んでいる。運搬の順番だけでなく、届けたあとの置き場所まで考えた方がよさそうだった。


「……よし。ここに荷物を置く場所を造っちまおうぜ!」


 皇牙は早速《国家創造EX》を開いた。


 しかし、すぐに建築を始めようとしたところで、ガルドに止められた。


「皇牙様。できれば、実際に荷物を運ぶ者にも場所を見てもらいたいですな」


「……ああ、そうか。俺が勝手に決めたら、また曲がりにくい道ができるかもしれねえな」


 皇牙は素直に手を止めた。


 そこでドランとボルク、それに測量士のリヒトを呼び、工房の周囲を一緒に歩くことにした。ドランは荷車を押したときに曲がりにくい場所を指摘し、ボルクは重い荷物を一度置いて持ち直せる場所が欲しいと話した。


「ここなら荷車を停められます。でも、入口の前まで荷台を寄せると、工房の人が通れなくなるんです」


「だったら、道の脇に荷物を下ろす場所を造ればいいんじゃねえか?」


「それなら、かなり楽になります」


 ボルクが頷いた。


 リヒトも地面の位置を確かめ、道を塞がずに荷車を寄せられる場所を示した。


 皇牙はようやく《国家創造EX》を発動した。


 工房の脇へ石畳が広がり、荷車が停まりやすい緩やかな曲がり角ができる。荷物を一時的に置ける低い固定式の台も設け、上には簡素な屋根を付けた。雨を完全に防げる大きな倉庫ではないが、積み下ろしの際に荷物を濡らさずに済む。


「……くくく! これぞ我が国の第一号、皇牙式超便利荷捌き場だ!」


「殿。名前はともかく、よい設備にございますね」


 巴の冷静な返事に、周囲から笑いが漏れた。


 皇牙は少し不満そうにしたものの、完成した場所を眺めるとすぐに機嫌を直した。大きな城を造るのも楽しいが、こうした小さな改良が人の役に立つのを見るのも面白い。


 荷捌き場ができると、ドランは早速荷車を押して確かめた。今度は曲がり角で車輪が引っかからず、荷物を下ろす場所にも余裕がある。


「……おお、これはいい! 今までみたいに何度も切り返さなくて済みます!」


「だろ? やっぱ俺の建築センスは最高だな!」


 皇牙は得意げに胸を張った。


 その後、ドランとボルクはクラリスのもとへ向かい、今朝の運搬について相談した。


 クラリスはすでに住民台帳から運搬を担当できる者を確認していたが、実際の道順や荷物の重さについては、二人の方が詳しい。そこで、予定を決める前に、どの荷物をまとめて運べるかを尋ねた。


「厨房へ行くなら、帰りに共同住居へ届ける品も積めます。倉庫から同じ方向へ何度も往復する必要はありません」


 ドランがそう言うと、ボルクも頷いた。


「ただ、重い荷物を積みすぎると荷車が動かしにくくなります。急ぎの物を優先して、残りは次の便にした方がいいですね」


 クラリスは二人の話を聞き、ユリウスと相談しながら簡単な運搬予定をまとめた。


 といっても、すべての荷物を厳密に管理するわけではない。重い物や大きな物、時間が決まっている仕事だけを前もって知らせてもらう。小さな荷物は各仕事場で運び、急な用事が入った場合は担当者同士で相談する。


「……なるほど。現場の人に聞けば、机の上じゃ分からないことも見えてきますね」


 クラリスが感心すると、ドランは照れくさそうに笑った。


「毎日運んでますからね。どこが通りやすいかくらいは分かりますよ」


 皇牙はそのやり取りを聞きながら、少し嬉しくなった。


 クラリスが予定を整理し、ドランとボルクが現場の経験を伝える。自分は必要な場所を造っただけだが、それぞれが得意な仕事をしているからこそ、街の暮らしがよくなっていくのだ。


 午後、試しに新しい順番で荷物を運ぶことになった。


 ドランは厨房へ届ける品を運び、その帰りに共同住居へ向かう荷物を載せた。ボルクは倉庫から工房へ運ぶ品をまとめ、完成した荷捌き場へ下ろしていく。


 以前なら、同じ道を行ったり来たりしていた仕事が、少ない往復で済むようになった。


「……おお。ちゃんと早くなってるじゃねえか!」


 皇牙が感心すると、ドランは額の汗を拭いながら笑った。


「荷物を下ろす場所が決まってるのも助かります。工房の入口で待たずに済みますから」


 ボルクも満足そうに頷いた。


 ただし、荷車はまだ一台しかない。運ぶ人が増えても、同じ時間に荷車を使いたい仕事が重なれば、また調整が必要になるだろう。


「……なあ、ガルド。もう一台荷車を作れたりしねえか?」


 皇牙が尋ねると、ガルドは少し考えた。


「材料と作業する時間が確保できれば、いずれは可能です。ただ、今は道具の修理もありますから、すぐには難しいでしょうな」


「そっか。じゃあ、急がなくていいぜ。今ある物をうまく使おう」


 皇牙は素直に引き下がった。


 建物を造るのと違い、動かして使う荷車には材料も職人の時間も必要だ。そこを無理に増やしても、別の仕事が止まってしまう。


 それに、今日の改良だけでも、運搬の負担は確かに減っている。


「……よし。だったら今日はここまでだな!」


 皇牙は大きく伸びをした。


 夕方、クラリスから短い報告が届いた。工房への材料は予定どおり届き、厨房と共同住居への運搬も遅れなく終わったという。ドランとボルクには、次の仕事まで休む時間もできたらしい。


「……最高じゃねえか。俺だけじゃなくて、みんなも楽になったんだな」


 皇牙は満足そうに笑った。


 そこへ巴が戻ってきた。


「殿。先ほど工房の前を通りましたが、道がずいぶん使いやすくなっておりました」


「おう! ドランたちが教えてくれたんだ。俺一人だったら、見た目ばっかり格好いい場所を造ってたかもしれねえ」


「ふふ。殿も少しずつ、皆のお話をお聞きになるようになられましたね」


「……なんだよ。前は聞いてなかったみたいじゃねえか」


 皇牙が口を尖らせると、巴は楽しそうに笑った。


 そんなやり取りをしているうちに、夕日が城壁の向こうへ傾いていく。


 皇牙は中庭に立ち、《英霊召喚ガチャEX》を開いた。十四日目の無料ガチャは、まだ三回残っている。


【無料召喚:3/3回】

【国家人口:43人】

【SR以上排出率:5%】


「……さあて、今日は何が出るかな!」


 一回目に現れたのは、N荷物整理係のデニスだった。倉庫での仕分けや荷物の積み込みを得意としているという。


 二回目は、N清掃補助のマレーナ。ティナやアニエスと協力し、共同住居や公共の通路を清潔に保つ仕事を手伝える人材だった。


「……おお、いいじゃねえか! 二人とも歓迎するぜ!」


 皇牙は上機嫌で最後の召喚ボタンを押した。


 淡い青色の光が中庭に広がり、一人の男が姿を現す。


【R:運搬管理人 ヴァルター】


「……おっ、Rだ! しかも運搬管理人かよ!」


 皇牙は目を丸くした。


 ヴァルターは荷物の運搬計画や人員配置を得意とする一般人材だった。今日の出来事を考えれば、今の拠点に役立つ人物だろう。


「……くくく! 今日は運がいいな!」


 皇牙は嬉しそうに笑い、ヴァルターへ簡単に事情を説明した。


「今日、ドランたちが荷運びのやり方を考えてくれたんだ。明日から一緒に働いて、もっと楽にできるところがあったら教えてくれ!」


「承知しました。まずは、実際に運んでおられる方々のお話を伺いたいと思います」


 ヴァルターは落ち着いた口調で答えた。


 皇牙はその返事を聞き、ますます機嫌をよくした。現場を知らないうちから勝手にやり方を変えるのではなく、今ある仕組みを確かめてくれるらしい。


【無料召喚:0/3回】

【国家人口:46人】


「……よし。これで四十六人だな!」


 新しく現れた三人は、エドガーとクラリスに案内され、住まいや仕事について説明を受けた。昨日整えた住民台帳も、早速役立っているようだ。


 皇牙はその様子を見ながら、満足そうに頷いた。


 最初は四人しかいなかった拠点も、今では四十六人の暮らす場所になった。人が増えれば仕事も増えるが、得意なことを持つ仲間たちが協力すれば、少ない人数でも工夫できる。


 今日の荷運びだってそうだった。ドランとボルクが困り事を伝え、クラリスが仕事の順番を整理し、皇牙は必要な設備を造った。それぞれができることをしただけで、街は少し働きやすくなったのだ。


「……よし! 明日からもその調子で頼むぜ!」


 皇牙が上機嫌で城館へ戻ろうとしたとき、ヴァルターがドランへ声をかけるのが聞こえた。


「ところで、荷車は今、一台だけなのですね?」


「ええ。ほかは人が抱えて運んでます」


「なるほど。では明日、荷物の量と運ぶ道を一緒に確かめてみましょう。今ある一台を、もっと上手に使えるかもしれません」


 皇牙は足を止めずに笑った。


 自分がいなくても、もう次の相談が始まっている。これなら明日も、好きなことをして過ごせそうだった。


「……くくく。やっぱり、人に任せるって最高だな」


 夕食の匂いが漂う城館へ向かいながら、皇牙は明日の無料ガチャに思いを馳せた。

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