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建国スキルがぶっ壊れている件。歴史の偉人をガチャ召喚して、俺は悠々自適に暮らしたい  作者: 阿鼻恭介
第一章

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第1章 第11話 忠義の武者

 城の中庭に戻った神城皇牙は、今度こそ誰にも邪魔されまいと、《英霊召喚ガチャEX》の画面を開いた。


 朝から灰牙狼という魔物が現れ、巴御前が見事な戦いぶりを披露してくれた。初めて本物の魔物を目にした興奮はまだ残っているが、それ以上に皇牙の心を占めているものがある。


「……よし! 今度こそ無料ガチャだ!」


 目の前には、三日目の無料召喚回数が表示されていた。


【無料召喚:3/3回】

【国家人口:7人】

【SR以上排出率:5%】


「今日こそ二人目の偉人を引いてやる。頼むぞ、俺の豪運!」


 皇牙が召喚ボタンに触れると、金色の魔法陣が中庭に浮かび上がった。光の中から姿を現したのは、茶色い髪を後ろで束ねた若い女性だった。落ち着いた服装をしており、どこか家庭的な雰囲気がある。


【N:家事係 ミア】


「お初にお目にかかります、皇牙様。ミアと申します。掃除や洗濯、身の回りのお世話などを得意としております」


「おおっ、家事係か! それはありがたい!」


 皇牙は素直に喜んだ。偉人ではなかったものの、広い城で暮らしているのに掃除を担当する人間がいなかったのだ。家具も道具も少ないとはいえ、七人が生活していれば汚れは増える。日常の仕事を任せられる人材は大歓迎だった。


「ただ、掃除道具も洗濯に使うものも、まだ十分に揃ってねえんだ。その辺はガルドに相談してくれ」


「承知いたしました。まずは今あるものを確認いたしますね」


 ミアは丁寧に頭を下げた。皇牙は早速エドガーに彼女の仕事について相談し、当面は城内の生活を整える手伝いをしてもらうことにした。


「よし、次だ!」


 二回目の魔法陣は青白く輝き、革の上着をまとった男性が姿を現した。三十歳前後に見える、引き締まった体格の男だった。


【R:狩人 カイル】


「カイルと申します。獣の追跡や狩猟、それから野外での行動には自信があります。よろしくお願いいたします」


「Rか! しかも狩人! いいじゃねえか!」


 皇牙は目を輝かせた。


 食料不足は相変わらず続いている。農地を作ったとはいえ、昨日植えた荒野芋がすぐに収穫できるわけではない。狩りができる人材は、今の拠点にとって頼もしい存在だった。


「カイル、さっき魔物が出たばかりなんだけど、そういうのも分かるか?」


「足跡や痕跡から行動を調べることはできます。ただ、相手がどんな魔物かによりますな。狩猟と、武装した魔物を相手に戦うことは別ですので」


「なるほど。じゃあ無茶なことは頼まねえよ。狩りに出るときは巴と相談してくれ」


「承知しました」


 自分の得意分野と限界をきちんと説明できるところも、Rらしいと皇牙は感じた。食料確保だけでなく、周辺の獣の痕跡を調べる仕事も任せられそうだ。


「……さて、最後の一回だな」


 皇牙は期待を込めて召喚ボタンを押した。


 今度は白い光が広がり、大柄な男性が姿を現す。肩幅が広く、日に焼けた顔には人懐っこい笑みが浮かんでいた。


【N:運搬人 ドラン】


「ドランと申します! 荷物を運ぶ仕事ならお任せください!」


「おっ、運搬人か。確かに荷物を運ぶ人手も必要だよな」


 今は建物を作れても、その中で使う材料や食料を運ぶ人間が足りない。皇牙には空間収納EXがあるが、日常の運搬まで毎回自分が担当していては、いつまでたっても自由な時間が増えなかった。


「よろしくな、ドラン。荷車とかもまだねえけど、その辺はこれから揃えていこうぜ」


「はい! できることから頑張ります!」


 こうして三日目の無料ガチャも終了した。


【無料召喚:0/3回】

【国家人口:10人】


「……結局、偉人は出なかったか」


 皇牙は少し残念そうに肩を落とした。しかし、すぐに新しい三人へ目を向ける。家事係、狩人、運搬人。誰もが今の生活に役立つ人材だ。


「まあ、十分当たりだな! 明日こそSR以上を引けばいいだけだ!」


「殿は本当に召喚がお好きでございますね」


 隣にいた巴が微笑んだ。


「そりゃそうだろ。毎日三回も無料で引けるんだぞ? こんな神スキル、楽しまずにいられるかって!」


 皇牙は笑いながら答えた。


 新しく加わった三人には、エドガーとリーナから城の現状を説明してもらうことにした。皇牙自身は巴と相談し、昨日作った農地の防衛設備を整える予定だった。


 午前中に灰牙狼が現れた以上、何も対策せずに農作業を再開するわけにはいかない。


「よし、巴。畑の周りに柵を作りに行こうぜ」


「承知いたしました。ただし、周辺の安全を確かめながら進みましょう」


 皇牙は頷き、巴とともに城門を出た。


 新しく整備した道路を歩いていくと、やがて低地にある小さな農地が見えてきた。まだ作物の芽は出ていないが、真っ直ぐに並んだ畝を見るだけで、皇牙は少し嬉しくなった。


「……くくく。やっぱり、こうして自分の土地が増えていくのは楽しいな」


「殿は、建物や街を造ることがお好きなのですね」


「まあな。ゲームでも拠点を発展させるのが好きだったし。実際に城や道路ができるんだから、そりゃ楽しいだろ」


 皇牙はそう答え、農地の周囲を見渡した。


 畑の外側には草がまばらに生え、少し離れた場所には大きな岩が点在している。開けた土地ではあるものの、岩陰に何かが潜んでいてもおかしくない。


「……柵だけで大丈夫かな?」


「大型の魔物を防ぐには、柵だけでは心許ないかと。ですが、小さな獣が畑に入り込むのを防ぐには役立つでしょう」


「なるほど。じゃあ、畑を囲う柵と、その外側にもう少し丈夫な囲いを作るか」


 皇牙は《国家創造EX》を開いた。


 農地の周囲を囲む石柵を設定し、作業用の出入口を設ける。さらに、その外側には高さのある防護壁を作り、道路に面した場所だけ門を設置することにした。


 もちろん、城壁ほど巨大なものではない。農作業の邪魔にならず、将来畑を広げるときにも変更しやすい構造だ。


「巴、こんな感じでどうだ?」


「よろしいかと。ただ、こちらの岩場からは内部が見えにくくなります。門の位置を少し変えた方が、周囲を確認しやすいでしょう」


「おっ、なるほど。じゃあ、こっちにずらすか」


 皇牙は巴の意見を取り入れ、建設位置を調整した。


 完成予想図に問題がないことを確かめると、迷わず建設を実行する。


 黄金色の光が農地の周囲を包み込み、一瞬で石造りの柵と防護壁が完成した。


「おおっ! いいじゃねえか!」


 皇牙は満足そうに笑った。何もなかった場所に新しい設備が現れる光景は、何度見ても飽きることがない。


 巴も完成した防護壁へ近づき、出入口や周囲の見通しを確かめていた。


「これなら、農地の中で作業する者も少しは安心できるでしょう」


「だよな。まあ、これで全部安全ってわけじゃねえけど」


「はい。ですが、何も備えがないよりは遥かによろしいかと」


 皇牙は頷き、壁の外側を確認しようと歩き出した。


 そのとき、巴が突然足を止めた。


「殿、お待ちください」


「……ん?」


 皇牙が振り返ると、巴はすでに薙刀を構えていた。


 彼女の視線の先では、道路脇の岩陰から低い唸り声が聞こえてくる。続いて、黒灰色の大きな影が姿を現した。


「……おいおい。また灰牙狼かよ!」


 現れたのは、今朝倒したものと同じ種類の魔物だった。


 ただし、今回の個体は一回り大きく、肩の棘も太い。鼻先を地面に寄せながら、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。


 皇牙は思わず顔をしかめた。


「……まったく。せっかく畑を守ろうとしてるのに、早速出てくるとかタイミングよすぎだろ」


「殿、私の後ろへ」


 巴はそう告げ、皇牙の前へ進み出た。


 皇牙もすぐに状況を確認する。背後には完成したばかりの農地があり、灰牙狼は道路を挟んだ岩場の手前にいる。魔物との距離は二十メートルほどだった。


「巴、俺が魔法で倒そうか?」


「いえ、私にお任せください。先ほどと同じ種類であれば、対処できます」


「分かった。ただし、無理はするなよ」


 皇牙が頷くと、巴は自信に満ちた表情を浮かべた。


「ご安心ください。この程度の魔物に、殿のお手を煩わせるつもりはございません」


 その言葉を聞き、皇牙は思わず笑った。


 やはり巴は頼もしい。自分が戦えば早いかもしれないが、こうして任せられる相手がいるのはありがたかった。


 皇牙は農地の出入口付近に立ち、巴の動きを見守った。巴との距離は十メートルほど。魔物の動きだけでなく、周囲の岩場にも注意を向ける。


 灰牙狼が身を低くした。


 次の瞬間、地面を蹴って一気に飛びかかってくる。


 しかし、巴が迎え撃とうとした瞬間、皇牙の視界に突然見慣れない表示が浮かび上がった。


【固有スキル《忠義の武者》発動】


「……ん?」


 皇牙が目を見開いた直後、巴の身体が驚くほど素早く動いた。


 今朝の戦闘でも、彼女の動きには無駄がなかった。しかし、今回は明らかに違う。灰牙狼が跳躍するより早く横へ踏み込み、相手が空中で向きを変えられない位置へ回り込んでいた。


 薙刀の柄が魔物の前脚を払い、その勢いを崩す。


 灰牙狼は着地と同時に体勢を立て直そうとしたが、巴はすでに次の動作へ移っていた。


「はあっ!」


 鋭い気合いとともに薙刀が振るわれ、刃が魔物の肩口を捉えた。


 灰牙狼は悲鳴を上げ、横へ転がった。


「……おいおい、速すぎだろ!」


 皇牙は思わず声を上げた。


 今朝の巴は、魔物の攻撃を見極めてから反撃していた。だが、今は相手が動き始めた瞬間に次の位置へ移動している。


 しかも、踏み込みだけでなく、武器を振る速度や身体の切り返しまで明らかに鋭くなっていた。


 灰牙狼は立ち上がると、今度は巴へ向かって低く突進した。


 しかし、その攻撃が届くより早く、巴が薙刀を突き出す。


 刃を避けようとした魔物の動きに合わせ、巴は素早く武器を引き戻した。続けて踏み込むと、相手が体勢を崩したところへ一閃を放つ。


 灰牙狼の巨体が大きく傾き、そのまま地面へ倒れ込んだ。


 巴は追撃の必要がないことを確かめると、薙刀を構えたまま周囲を警戒した。


 その一連の戦闘は、すべて農地の出入口から二十メートル以内で行われていた。


「……すげえ。今朝とは全然違うじゃねえか」


 皇牙は思わず呟いた。


 灰牙狼の大きさは違っても、動きそのものは今朝の個体と似ていた。それなのに、巴はほとんど攻撃の機会を与えず倒してしまった。


 皇牙はすぐに《万能鑑定EX》を発動した。


【巴御前】


【レアリティ:SR】


【武勇:A+(S-)】


【固有スキル:《忠義の武者》】


【効果:主君から半径30m以内で戦闘中、筋力・敏捷性・耐久力・反応速度が1.5倍】


【発動状態:有効】


「……ああっ! そういうことか!」


 皇牙は思わず手を打った。


 巴を召喚したとき、固有スキルの効果は確認していた。だが、実際に戦闘で発動するところを見たのは初めてだった。


 今朝は皇牙が城壁の上に残り、巴は百メートル以上離れた岩場で戦っていた。そのため、固有スキルは発動していなかった。


 しかし、今回は皇牙がすぐ近くにいる。


「……なるほど。俺が三十メートル以内にいるだけで、あんなに強くなるのか!」


 皇牙は興奮しながら巴へ駆け寄った。


 ただし、巴はまだ周囲の警戒を続けていたため、皇牙もすぐに立ち止まる。彼女が安全を確認して薙刀を下ろしたところで、ようやく声をかけた。


「巴! 今のすげえぞ! 朝よりずっと速かった!」


「……ありがとうございます、殿。私自身も、身体が軽くなったように感じておりました」


「それだよ! 固有スキルが発動してたんだ!」


 皇牙が鑑定結果を説明すると、巴は驚いたように目を見開いた。


「なるほど……殿のお近くで戦うことで、私の身体能力が高まるのでございますね」


「ああ。しかも筋力だけじゃなく、敏捷性も耐久力も反応速度も一・五倍だぞ!」


 皇牙は嬉しそうに頷いた。


 元々の武勇がA+というだけでも十分強い。それがさらに強化されるのだから、まさに規格外の能力だった。


「……くくく。これ、俺が戦わなくても近くにいるだけでいいんだよな?」


「そのようでございますね」


「最高じゃねえか! ますます俺の理想に近づいてきたぞ!」


 皇牙が満面の笑みを浮かべると、巴は少し呆れたように微笑んだ。


「殿らしいお考えでございますね。ただし、戦場で私の近くにおられるということは、それだけ危険も増えるということです」


「……ああ、そうか」


 皇牙は少し考え込んだ。


 確かに、巴を強化できるからといって、毎回近くへ行けばよいわけではない。自分には強力な魔法があるが、周囲に仲間がいれば守る必要もある。


「まあ、無理に近づく必要はねえな。安全に使えるときだけ使えばいいか」


「はい。それがよろしいかと存じます」


 巴は満足そうに頷いた。


 皇牙も、その考えに異論はなかった。何より、自分が戦わなくても巴が強くなるというのは十分すぎるほど魅力的だ。


 その後、皇牙は倒れた灰牙狼を《空間収納EX》へ収めた。毛皮や牙は今後の材料として使えるかもしれないし、城の近くへ放置しておく理由もない。


 周辺にほかの魔物がいないことを確かめると、二人は農地の防護壁をもう一度確認した。


「……これで少しは安心できるかな」


「そうでございますね。ただ、殿。一つ申し上げてもよろしいでしょうか」


「ん? 何だ?」


 巴は城の方へ視線を向けた。


「私がこちらで戦っている間、城門の警戒をする者がおりません。今は皆が城内におりますが、今後は農地で働く者も増えましょう。そうなれば、私一人ではすべてを見守ることが難しくなります」


「……ああ、確かにな」


 皇牙は腕を組んだ。


 巴がいくら強くなっても、同時に二つの場所へ立つことはできない。城と農地が離れている以上、片方を守っている間は、もう片方の警戒が手薄になる。


 今日召喚したカイルは狩猟に詳しいが、城の警備を専門にする人材ではない。今のところ、武装した魔物へ確実に対処できるのは巴だけだった。


「……なるほどな。強い奴が一人いれば何とかなるってわけじゃねえのか」


「はい。守るべき場所が増えれば、それに応じた備えが必要になります」


 巴の言葉に、皇牙は深く頷いた。


 自分が魔法で守ることもできる。しかし、それでは結局、何かあるたびに呼び出される生活になってしまう。


「……よし。城に戻ったら、警備についてちゃんと考えるか」


「ありがとうございます、殿」


「いや、巴一人に全部任せるのも大変だろ。それに、俺だって毎日見回りに呼ばれるのは面倒だしな!」


 皇牙が笑うと、巴も思わず口元を緩めた。


 二人が城へ戻る頃には、二つの太陽が空の高い位置に昇っていた。


 中庭では、新しく召喚されたミアがリーナから仕事の説明を受け、ドランはガルドと一緒に材料の整理を手伝っていた。カイルはロイと話し込み、周辺で採集や狩猟をする際の注意点を確認している。


 皇牙はその光景を眺めながら、満足そうに笑った。


 仲間は十人になった。


 食料の確保も、城の生活も、少しずつ便利になっている。さらに、巴の固有スキルがどれほど強力なのかも確かめることができた。


 それでも、まだ足りないものは多い。


「……くくく。やっぱり、もっと人材が欲しいな」


 皇牙は楽しそうに呟いた。


 無料ガチャは今日の分を使い切ってしまったが、明日になればまた三回引ける。


 優秀な仲間を増やし、面倒な仕事を任せ、自分は豪華な城で好きなことをして暮らす。


 そんな理想を実現するためにも、まずはこの小さな拠点を安心して暮らせる場所にしなければならない。


「……さて。次は城の警備をどうするかだな」


 皇牙は城門を見上げ、少しだけ面倒そうに頭をかいた。


 どうやら、悠々自適な生活を手に入れるまでには、まだまだやることがありそうだった。

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