第七話 平手打ち
教師たちが、最初に崩れた。
一斉にではなかった。始まりは田中だった——ずっと静かに、抑えていたのに、それが崩れた。これは容認できないと言い出した。帰る手段があるはずだと。自分には預かっている学生がいて、異世界の見知らぬ玉座の間に彼らを置き去りにするつもりはないと。
何人かの学生が頷いた。ほとんどは頷かなかった。
それから別の誰かが、もっと大きな声でそれを言い、堰が一気に決壊した。
「家に帰して」
「これは私たちの戦争じゃ——」
イリュリアは壇上に立ったまま、何も言わなかった。表情も変わらなかった。
ユウトが席から立ち上がる。彼が言葉を発するより先に、部屋がそれを察知した。その静けさに、近くにいた者たちが半歩、後ずさった。
「戻って、具体的に何をするんだ」
疑問符はついていなかった。疑問の形をした、ただの断定だった。
彼の背後で、誰かが話し始めた——低く、早口で、言葉が転がるように重なっていく。初めて力を感じている声だった。「武僧」と書かれたクラス画面が、本当に意味を持っていた。
部屋は、十分前にはなかった線に沿って分裂していく。教師たちは一方へ、散らばった学生たちはもう一方へ。残りの者たちは、どちらへ動くかの合図を待ちながら、その間で立ち尽くしていた。
ミズキはその真ん中にいた。顎を引き締め、両手を体の脇に、状況を目録に収めていく。それから視線がヤガミを見つけ、彼女はそちらへ歩いていった。
彼は柱のところにいた。この広間に入ってから、ずっとそこにいた。
「残るって言うつもりでしょ」
彼女は言った。
「ああ」
「なんで」
「戻る場所なんてない」
短く。事実として。
彼女は一メートルほど手前で足を止めた。「あなたには家族がいる。弟が——」
「わかってる」
「なのにどうしてそんな——」
「ミズキ」
彼はまっすぐ彼女を見た。「二年前、医者に言われた。今のままの生活を続ければ、三十まで生きられないって。正確な言葉じゃないが、要はそういうことだった」一拍。「ランクF。何も読み取れない」自分の手に目をやる。「それでも、まだこっちのほうが分がいい」
彼女はその一言を間に置いたまま立ち尽くし、それを何度も裏返し、どこが間違っているのかを探した。
「あなたに、みんなの分まで決める権利はない」
彼女は言った。
「決めてない。俺は自分の分を決めただけだ」
「あなたはただそこにいるだけで、みんなに影響を——」
「お前もだろ」
彼女は彼を叩いた。
鋭く、乾いた音。そのあとに、部屋全体を押し潰すような静寂が続いた。
彼女の手が震えていた。まるでその手が、自分の許可なく何かをしたかのように、それを見つめた。
彼は顔に手を当てなかった。もとの場所に立ったまま、頬にはもう跡が浮かび始めていた。
「やめて」
声が裂ける。「まるであなたの痛みだけが特別な通貨で、私たちには手が届かなかったみたいな顔で立たないで。まるで私たちみんなが、あなたの手の届かなかった人生を生きてきたみたいに」
彼は何も言わなかった。
彼女は無理やり続けた。「私は完璧でいなきゃいけなかった。どんな試験も。どんな部屋に入るときも、やることは一つ——失敗しない、迷いを見せない」拳を太もとに押し当てる。「毎晩、自分に問いかけてた。本当に強いのか、それとも強く見せるのが上手いだけなのか」
彼の顔に、何かがよぎった。一瞬だけ。
「私は、帰れると信じてる」
声が落ち着きを取り戻す。「そう信じなきゃいけない。置いてきた人たちを見捨てるような人間には、なれない」
ヤガミはしばらく黙っていた。
「わかってる」
そう言った。
反論することもできたはずだった。だが出てきたのは、二言だけ——すでに戦う気力の抜けきった二言だった。
大理石の上を歩くリョウタの足音は、一定で、急いでいなかった。
彼が部屋を横切ると、みんな気づかないうちに道を空けていた——教師が椅子を後ろへ引き、二人の学生が無言で分かれていく。
彼はヤガミとミズキの間に割って入った。まるで問題を一つ、整えるかのように。
「もういい」
静かに、絶対的に。「二人とも」
彼はミズキを見た。一度、頷く。「お前は間違ってない。それは手放すな」それから視線がヤガミへ移る——二秒間、慎重に、ミズキがまだ見たことのない気の遣い方で。その間が長くなる前に、彼は部屋の方へ向き直った。
「情報が必要だ」
空間全体に届くだけの声量で言った。「口論じゃない。ここはどこで、実際の状況はどうなっていて、俺たちに何ができるのか」壇上を見る。「誰か、教えてもらえないか」
部屋がそちらを向く。教師の一人の肩が下がった。泣いていた少女が瞬きをして、背筋を伸ばした。誰かが「その通りだ」と言った——許可を待っていた者の口調で。
部屋がこれほど簡単にリョウタに従うとは、ヤガミも思っていなかった。だが予想外だったのは、さっきリョウタが向けてきた視線のほうだった——あの二秒間の値踏み、今度は切り捨てるためというより、測るためのものだった。地球では、リョウタはすでにどの枠に収まる人間かを決めてしまった者の、屈託のない自信でヤガミを見ていた。だが今回は違った。まるでヤガミが、もう一度確かめる価値のある変数になったかのように。
それは新しい感覚だった。それに対する台本を、彼はまだ持っていなかった。
レオンが階段を降りてくる。彼が最後の段に着く前に、部屋はもう静まっていた。
「戻る道はない」
レオンは、その言葉が沈み込むのを待ってから続けた。「召喚は一方通行だ。汝らをここへ導いたものは、汝らを送り返すことはできない——我らの力では、そしておそらくは、いかなる力をもってしても」そう言いながら教師たちを見据え、言い終えるまで目を逸らさなかった。
室内の静寂は、重く、完全なものになった。すでに気づいていた者もいた。まだ望みを捨てていなかった者たちは、じっと動かなくなった。
ミズキは目を閉じた。開く。肩を引き、両手は体の脇で開いたまま。何を抱えているにせよ、彼女はそれを抱え続けていた。
ヤガミは自分の両手を見た。
右。左。右手の関節に浮かんだ査定の紋様が薄れていく。墓掘り、ランクF。スキルなし、読み取れる属性なし。彼を分類できないというシステムの注記。それをシステム側の不備として読むことに、彼は決めた——自分の不備としてではなく。
もっと悪いスタート地点もあったはずだ。三時間前に辿り着いたばかりの世界の、王国の玉座の間に立ちながら、そのひとつを思い出そうとした。だが、思い出せなかった。
よし。
顔を上げた。
イリュリアが彼を見ていた。集中した、的確な視線——温かみは一切ない。査定のときからずっと、彼女は彼だけを追い続けていた。部屋の他の注目をリョウタやSランクたちに任せたまま、自分の視線だけは彼に固定して。
彼はその視線を受け止めた。一拍、そのままに。先に目を逸らしたのは彼のほうだった——前の二回と同じように。
好きにしろ。




