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日本異世界始末記  作者: 能登守
2035年
299/303

戦力配分

 大陸東部

 日本国 葦原特別行政区

 大陸総督府


 新総督円法寺円楽は執務をそつなくこなせるようになっていた。

 最初の外交もアル・キヤーマ市アブドゥル・ザヒド・ヒマディ市長との会談を終えて執務室から窓を眺めていた。


「財務省やら外務省が急にあさぎり型護衛艦の売却を口に出してきたのはアル・キヤーマ市が乗り気だったんですな」

「ブリタニアもさらにFFMの購入を進めたいと言ってきました。

 呂栄も03型中距離地対空ミサイルの購入に意欲を示しています。

 まあ、艦艇では高麗がライバルとして存在を示していますが、相手国の資金の方が問題ですね」


 秋山補佐官としては喜ばしい話のようだが、僧侶として円楽は渋い顔をする。


「個人装備なら治安維持や対モンスターとして納得出来るんですがね。

 今回のは明らかに軍事的だ。

 せめて同盟国、同盟都市間では使われないよう監視は強化すべきですな」


 もちろん公人として、国益に反する発言は円楽はしていない。

 笑顔で関係省庁への口添えを約束している。


「しかし、我が国売るほどの量を生産できるんですか?」

「近年は産業再生の為に本国の各都市で兵器の工場が増築されています。

 自衛官の増員で装備品が大量に必要になりましたからね。

 いずれは民生品の工場に転用される見通しですが、経産省は国産兵器の輸出に舵を切りたいようで」

「本国の自衛隊は装備品の補充は完了したとは聞いてましたが、新たな販路が必要と」

「本国は本国で苦労しているようですが」

「なにかありましたか?」

「隊員の増員で四国の第14師団の駐屯地がついにパンクしたようでして」






 日本国

 香川県 善通寺市

 陸上自衛隊 善通寺駐屯地


「困った。

 北徳島駐屯地が完成したのはいいが、まだ足りない」


 第14師団師団長の九条三等陸将は幕僚達を集めて隊員の受け入れ先を探していた。

 転移前に四国には駐屯地が四つと分屯地がひとつあった。

 まだ移民が行われていないが、使用されてないことを良いことに徳島飛行場を接収した北徳島分屯地を駐屯地に拡大させ、第14後方支援連隊や第14高射特科大隊を受け入れさせた。

 近年は方面隊の仕事は各師団に移管されている。

 音楽隊は師団本部大隊、特殊武器防護隊は偵察中隊、会計隊や基地業務隊は各駐屯地所属部隊からの抽出といった具合である。

 雇用確保の為に即席自衛官だけは増やしたが、高齢や練度、装備不足で、娑婆にいた頃の職業も考慮した結果だ。

 問題は防衛大臣直下の警務隊で、第14師団管轄の第14警備地区には中部方面警務隊第133地区警務隊、中部情報保全隊派遣隊など100名近く隊員が居場所を確保出来なくなった。


「まあ、各駐屯地を転々としてる連中だが、本部的箱物がいるよな」

「その件ですが、総監部が愛媛県警と交渉して松山西警察署の建物と敷地を譲って頂けそうだと」


 幕僚の片山二等陸佐の言葉に九条三将は頭を捻る。


「松山西?

 ああ、旧松山駐屯地か」


 現在の松山駐屯地は、設置時は小野駐屯地と呼ばれていた。

 元々の松山駐屯地は警察予備隊松山訓練所を改称したものである。

 小野駐屯地に部隊の移転、改称に伴い、旧松山駐屯地は廃止並び松山県警に移管、松山西警察署になっていた。


「愛媛県も大部分の移民が終わり、県民も少なくなりました。

 旧松山市にあった警察署も松山東警察署に集約するそうです」


 旧松山市には県警本部もあるから十分だということである。

 警察官も自衛官同様に基本的には移民の対象外だが、植民都市が出来る度に昇進を餌にされるので独身の若手警官には志願が多い。

 結果として県警に残る警官も年々少なくなりつつあり、警察署の廃止も行われている。


「第9師団や第15師団はどうしてるんだ?

 あいつらも手狭だし、移民も行われてないから拡張も出来ないだろ」

「その代わり旧在日米軍の基地が返還されてますので、三沢駐屯地や瑞慶覧駐屯地、普天間駐屯地とか続々と開設されてますよ」

「ずっけえな。

 話には聞いてたがもう一回、駐屯地一覧の資料読み漁らんとな。

 50代になると新しいことには手を付け難くなるな」





 大陸西部

 華西民国

 首都 新香港

 在華日本国自衛隊駐屯地


 街道で捕まった『断罪と雷の教団』の神官戦士達は、黄茉莉(ホアン モーリー)道士見習いの取りはからいで、日本に引き渡されることが決まった。

 華西民国首脳は難色を示したが、襲撃された黄道士見習いと捕まえてきた劉文哲少佐がゴリ押しをしたところにある。


「意外なことだが、うちの姪っ子は宗教家として、教義は違えど、シンパシーみたいなもんを感じたらしい。

 お偉いさんの説得にも自ら乗りだし、えらい剣幕だった。

 しかし、もう少し反発されかと思ったが、妙に50代以上の軍幹部や文官がうちの姪に優しいんだ。

 気を付けなければいけないかな」


 劉文哲少佐に相談された駐屯地司令の安西三等空佐は苦笑した顔をする。


「あの世代は80年代美少女道士アイドルに脳を焼かれてた少年期を過ごしてたそうですから」

「ああ、うちの国ってそうなんだ。

 困ったもんだ」


 と、劉少佐は呟くが


「いや、うちの国もなんですけど」


 安西三佐に呟かれて反応に困らされた。


「しかし、神官戦士だけですか?」

「ああ、聖騎士とか神殿騎士の類いは一人もいない。

 強い奴らは皆、吸血鬼を倒すために北部に集結中だとか」

「あっちでも一悶着有ったとは聞いてましたが、そんなに戦さがしたいんですかね?」


 吸血鬼の本拠地アシュトン侯爵領や連中の本拠地神殿領アンルシアへ比較近いのは問題だ。

 今までは皇国による抑えと米軍による皇都大空襲で教団の神官戦士団や聖騎士団が壊滅していたから矛先が納められてきたに過ぎず、ここ最近の小競り合いで教団の勢力が回復してきた事を示していた。


「まあでも、あんまり武断的な処理はしたくないんですよね。

 知ってますか、彼等は我々には迷惑系でも庶民からはモンスターから守ってくれるヒーローなんですよ」


 安西三佐の元には大陸西部の各地から届けられた様々なギルドや村々、弱小貴族の連盟の仲介を依頼する嘆願書が、執務室の机に山と積まれていた。

 あれが無ければ彼等の身を引き取るなど引き受けなかったに違いない。


「しかし、あれらをどうするんだ。

 処分も出来ないだろ」

「彼等の教義に反せず、信仰のままに戦える場所で放逐します。

 大陸北部と東部に股がり分断する大山脈の旧ドワーフ侯爵領、現魔神占領区です。

 存分に正義と信仰の名のもとに解放に尽力して頂きます」


 現在はドワーフ戦士団による解放戦線が侯爵領を取り戻すべく戦いが繰り広げられている。

 ドワーフの優れた技術力を背景に稼いだ経済力を持って、傭兵や装備を用意し、解放された集落を持ってドワーフ侯国を名乗っている。

 エルフ大公国と違い、王国もこの独立には好意的だ。

 また、酒好きが講じて気があったのか、北サハリン軍が時折、空爆などで支援をしている。

 日本も技術論で彼等を難民として受け入れつつ、演習代わりに第16特科連隊や第16戦車大隊の砲撃や第9航空団の空爆演習のマトにしている。


「そっちは理解したが、もう一つ気になるんだが、吸血鬼側の戦力だ。

 昼日中に行われた皇帝親征パレードは各亜人族も戦士団を参加させていた。

 しかし、日が出てる最中は外に出られない吸血鬼の戦士団はパレードに参加できずに空爆には晒されなかったんじゃないのか?」

「可能性はあります。

 現地に派遣された国際連隊には注意を喚起させて起きます」


 だとすると『断罪と雷の教団』はアシュトン侯爵領領邦軍である吸血鬼の軍団の戦力見積りを見誤ってる可能性があった。



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