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日本異世界始末記  作者: 能登守
2035年
298/303

来々僵尸隊

 大陸西部

 華西民国


 草木も眠る丑三つ時、華西民国第二の植民都市陽城市と第三植民都市窮石市を結ぶ街道を道服を着る少女を先頭に二列横隊で十人の男女が、足首だけを利用して跳ねるように移動している。

 バランスを取るためか、腕を前に伸ばし、額には鶏の血で掛かれた符が貼られている。

 いわゆる僵尸(キョンシー)と呼ばれる集団であり、先頭の道士見習いの少女は、道長という旅先などで死亡した者に法術を施してキョンシーに仕立て、それぞれの故郷へ送り届ける役割を担っていた。

 道服に冠巾を着用し、魂を込めた灯明を旗で守り、鐘を鳴らしながら紙銭をばら蒔いている。


「さあ道をあけろ、僵尸様のお通りだ!!

 人間どもは道をあけろ、邪魔する者は道連れにするぞ!」


 威勢よく声を張り上げるが、黄茉莉(ホアン モーリー)道士見習いの声はどこか震えている。

 才能もあり、可愛らしい容姿の彼女は配信業の傍らに道士の勉強をしていた。

 しかし、先日同級生の少年が行っていた道長の道中、謎の武装集団に襲われて負傷し、引き連れていた僵尸が全滅する事態に陥った。

 次の道長に白羽の矢が立った茉莉だが、こんな夜更けに少女を街道に送り出すのは駄目じゃないかという意見も有ったが、単位に目が眩んだ彼女はそれを引き受け、激しく後悔していた。

 両市を結ぶ街道の中間地点に白い皮鎧に身を包んだ武装した集団に取り囲まれたからだ。


「お嬢さん、我らは『断罪と雷の教団』の使徒である。

 お嬢さんの行為は死者を冒涜する物であり、我等の教義から外れるものである。

 もちろん風習や他の教団には別の教義があるのは理解しているが、ここは一つ運が悪かったと思って後ろのアンデッドを討伐させて頂けないだろうか」


 随分、礼儀正しい賊だなと思いつつ、茉莉は受けて立つ。


「この御遺体は御家族の元に送り届ける為の巡行です。

 邪魔立てする行為こそ、死者に対する冒涜!!

 泰山府君の名に掛けて、押し通らせて頂きます」


『断罪と雷の教団』はネクロンシー的行為を悪と断じているが、弔いの為の宗教的儀式なら理解を示す寛容さがあった。


「しかしねぇ、君ら車とか有るんだから普通に運べばいいじゃないか。

 何で暗い街道をわざわざ遺体をアンデッドにして移動させるかは、理解に苦しむのだよ」


 それはそうと、茉莉自身も思うが単位のためには引き下がれない。

 僵尸を操る鈴を鳴らして、八方を固め、銅銭剣を懐から出して抗戦の意思を示す。

 銅銭剣は銅銭を赤い糸や紐で縛って剣の形に繋ぎ合わせたものだ。

 丸い形に四角い穴が開いた銅銭は天地を現し、連ねることで強力な霊力と魔除けの力(陽の気)を発揮させる。

 古銭が望ましいが、この世界では手に入らないのでレプリカだ。

 僵尸達は人間を超える怪力を発揮でき、『断罪と雷の教団』達のメイスや棍棒をものともせず、剣や槍で斬られ、刺されても痛覚が無いので、そのままへし折る働きを見せた。


「『断罪と雷の神』よ、我等に悪しき魂を退け、肉体に安らぎを与える力を与えたまらん!!」


 リーダー格の男が放った光りに僵尸の一体の身体が灼かれる。


「天地自然、穢気分散。洞中玄虚、晃朗太元……」


 激しい動きを施しながら茉莉が間に割り込み、銅銭剣で光を断ち切るが、他の賊達からも同じ光が次々と放たれて、対応が出来なくなる。

 僵尸達もその怪力を生かし、賊達を腕をぶつけて吹き飛ばしたり、器用にスライディングして転倒させたりしているが、一体、また一体と身体を灼かれて動けなくなっていく。

 茉莉自身が都市と都市の間を徒歩で行かされるという行為に疲弊し精彩を欠いていた。


「神の名のもとに!!」


 教団の男が僵尸にトドメを刺そうとした瞬間、銃声が鳴り響き、教団の男達が次々と倒れていく。


「おら、急所は外しといてやったから自分で回復しな。

 回復したらまた撃って、魔力を浪費させておけ」

「おじさん、遅~い」


 陽城基地の第1自動車化狙撃連隊にて、第2大隊を率いる劉文哲少佐は部下達ともに森の中から現れ、03式自動歩槍で賊の手足を撃ちながら合流してくる


「悪い遅れた。

 ケガはないか?」


 心配そうに駆け寄る劉少佐の行動に部下の一人が忠告してくる。


「少佐殿、作戦中に……パパ活は控えた方が」

「妹の娘、姪っ子だバカやろう。

 誤解を招くようなこと言うな」


 皇国派エルフや西部貴族連合軍を蹴散らしてきた劉少佐の迫力は一味違う。

 茉莉は全員が治癒の祈りを唱える『断罪と雷の教団』を見てため息を吐く。

 自分が囮となって『断罪と雷の教団』をおびき出したのだが、目の前の惨状に心苦しくなっていた。


「おじさん、この人達どうなるの?」

「山賊か、街道の通り魔として死刑か、強制労働かな」

「モンスターの討伐に来たんだから冒険者的行為に該当しない?」

「前の道長で負傷者を出してるから傷害罪だけは免れないぞ。

 まあ、死刑や強制労働よりはマシだろうが」


 上が事態にお怒りなのをどう納めるか頭が痛かったが、可愛い姪のお願いに一肌脱いでやる気になっていた。









 日本国

 石川県金沢市

 陸上自衛隊 金沢駐屯地


 金沢市の移民が始まり、金沢駐屯地の第27普通科連隊にも市民の誘導、引越の手伝い、駐屯地の拡充に動員されて忙しい日々を送っていた。

 金沢市は宝達志水町以南の市町村を統合し、旧金沢市民以外は全て大聖寺市に植民することになった。


「旧金沢市民の植民都市は名前がまだ決まってないか」

「福山市や藤沢市も話を振られて困ってますよ」


 第27普通科連隊連隊長の黒木一等陸佐は、駐屯地に隣接する大学附属施設の敷地接収の指揮を取っていた。


「うちの駐屯地より広いんだぞ、嫌になるな」


 その敷地が駐屯地になるのだから顔はにやけている。


「市民に見られたら大変ですよ。

 旧金沢市民はまだほとんど残ってるんですから」

「近いうちに中央か、名古屋に返り咲くから問題はない。

 市民の九割がいなくなるから今更だな」


 これには手伝いに派遣された航空自衛隊小松基地の第6基地警備中隊隊長の井川一等空尉も苦笑を禁じ得ない。


「小松の方はどうなんだね?」

「共用で使ってた小松飛行場が完全に専用になりましたが、広すぎて扱いきれてないですよ」


 民間との共用空港だった小松飛行場も異世界転移後は使い道もなく、航空自衛隊に管理を委託していた。

 金沢市民の植民が開始され、正式に小松基地の一部となることが決まった。


「中央も河童やら帰還派に悩まされてるようですが、こっちにも『入らずの森』や河童寺なんか有りますからね。

 警備の割り当ても考えませんと」

「能登の方はそっちでやってくれよ。

 輪島の分屯地が空自には有るだろ」


 第27普通科連隊は、北陸西部石川県と福井県の警備を鯖江駐屯地の第10特科連隊と担っているが、日本海側からの脅威は少ないと判断されていた。

 山岳部に阻まれ、第10師団の警備区が広範囲なのは問題視されたが、富山県を第12師団の警備区に委ね、静岡県の富士教導旅団が北陸、中部、東海地方の警備をカバーしていく。

 最も現在、富士教導旅団は西方大陸アガリアレプトに派遣されて不在である。


「しかし、市名が決まってないのはやはり不便だな。

 来年には36普連が駐屯するんだろが、今はどこが防衛してるんだ?」

「葦原警視庁の機動隊2個中隊と国境保安庁の国境警備群第5群、空自の移動警戒隊。

 有志による自警団、建立中の寺社を守る僧兵に衛士。

 インフラ企業が派遣した武装警備員」


 ようするに各組織がどうにかこうにか捻出した戦力だ。

 主力の第36普通科連隊の到着は年明けになるので、無事に済んで欲しかった。

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>>君ら車とか有るんだから普通に運べばいいじゃないか ミスリルのキルドーザーもどきの時もそうだけどこの迷惑宗教団体正論でぶん殴ってくるなw
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