2話 ちょっとどういうことなのよぉぉぉぉ!!(妹視点)
「証人が貴族達とはどういうことだ?」
国王が姉に聞き返す。
本当よ。どういうこと?
私はちゃんとメイドに姉が自室にいるか確認したのに。
王子の手をぎゅっとにぎると、デント王子が
「そうだ!!そんな言い逃れできると思っているのか!!!」
と、指をさし叫んでくれた。
「言い逃れもなにもデント……。
それに国王陛下あなた達は本当に貴族たちの話を聞いてないのですね」
凛とした声。
その声の主に視線を向けると、声の主は姉アメリアではなかった。
なぜか現国王の姉。他国に嫁いだ王姉である大公妃だった。
大公妃は私と王子、それに国王陛下を交互に見て、これみよがしにため息をつく。
え!?なに?ちょっと、どうなってるの!?
大公妃はとっても口うるさくて、私も王子も国王陛下もみんな苦手。
時々嫁いだ先の国境付近の領地から来ることがあるけれど、みんな彼女を避けていた。
「い、いきなりどうしたのですか大公妃殿下」
デント王子があわてて大公妃の機嫌を取る。けれど大公妃はばんっと持っていた扇子を手で叩くと。
「国王陛下。私は報告したはずです――豊穣祭の日に、貴族たちと催した茶会に、このアメリア嬢が乱入してきて、茶会を台無しにしたと!」
――へ?
「そうです!国王陛下!私アメリア嬢をはっきりとみましたわ!この方、わざと紅茶をもっていた執事にぶつかって、私のドレスにお茶をこぼしました!」
「私の自慢の宝石も見せてといって近づいたあと、間違ったと言って私の宝石を生クリームまみれしました!」
「厩舎の馬をわざとはやし立てて興奮させたせいで催しものができなくなりました!」
「私のプレゼンも邪魔されたと報告したはずです!」
貴族たちが次々と前に進み出て姉の悪行を告げる。
え?なんで、屋敷にいたはずの日にそんなことしてるの!?
デント王子も国王陛下も顔を青ざめてる。
姉の惨状を貴族が訴えてくるなんて、いつものことすぎて、私も他の二人も――あまりよく聞いてなかった。だっていつものことじゃない。
慌てて、姉の方を見ると――
「とのことですわ♡ わたくし、その日は元気に大公妃殿下の茶会に参加していましたの」
小首をかしげて上目遣いで私たちの方に訴える。
「そんなわけない!!!」
デント王子が叫ぶけれど――
「それでは私が嘘をついてると?」
大公妃がギロリと、王子とその隣にいた私をにらむ。
姉に嫌がらせされたという貴族たちの視線も険しくなる。
その敵意の対象は――私たちだ。
「え? いや違……」
デント王子が一歩たじろいで、慌てて国王陛下に視線を向けるが
「ふむ……大公妃、それは間違いないのだな?」
うなずきながら、玉座で冷や汗をかいていた。
「もちろんです」
「……」
国王陛下と大公妃の間に沈黙が流れ――
「少なくとも宝石盗難については、再調査が必要だな」
国王陛下があっさり日和った。
え? あ? へ? ちょ!?
ちょ、ちょっと待ってよ!!!
どうなってるのかわからなくて私が慌てていると
「そ・れ・で?」
姉のアメリアが嬉しそうに私たちに歩み寄ってきた。
「なぜ大公妃殿下のお茶会に参加していて、いるはずのない王城で、わたくしを見た人がいるのかしら?」
「そ、それは……」
デント王子が一瞬たじろぐ。そりゃそうよ、だってまさか屋敷にいるはずのお姉さまがよりによって大公妃のお茶会に出ているなんておもわないじゃない!
でもきっとデント王子ならなんとかしてくれるはず!
私が期待のまなざしでみつめると
「どういうことだ!メイド!」
びしっとメイドに問いただす。
………
…………。
(違うそうじゃなぁぁぁぁぁい!!)
何を考えてるの!?そっちに話を振ったらますます話をそらしにくくなるじゃない!
メイドに嘘の証言を頼んだのは私なのよ!?
わ・た・し!!!!
王子も知っているはずなのに!!
私がおそるおそる視線を向けると
「も、もしかして見間違いだったかもしれません」
メイドは顔を真っ青にして、か細い声で答えた。
そりゃそうなるわよ!!
その様子に姉はうふふーと笑う。
「あらぁ♡ それじゃああなた」
姉がニコニコとメイドに歩みよる。
「王族の宝石を盗んだ。これって貴族であろうとも死刑にされる可能性のある大罪ですわ。そ・れ・を、見間違い程度の記憶でこの場で証言したと?」
メイドの顔を覗き込みながらニマニマと問う。
(やばい!!やばいわ!!ここで私に頼まれたなんて証言されたら!?)
「も、もういいではありませんか。単なる勘違いだったようですし」
私が慌てて間に入る。このまま問い詰めさせられたらやばい。
もう話題を変えてうやむやにするしかないわ。
「それを決めるのはあなたではありません。あらぬ罪を着せられたアメリア嬢でしょう?」
大公妃殿下が間に入ってきた。
このおばさんうざっ!!!
ああ、本当にうざい! 無駄に正義感強くて融通きかないから嫌いなのよこの人! ってか今回の舞踏会大公妃殿下を呼んだ覚えなんてないんですけど。
私が思わず睨むと、ばっちりと視線が大公妃殿下と合ってしまう。
え、ちょっとやばいんですけど。
私が慌てて目をそらすけれど、大公妃殿下ははぁーと大きなため息をついた声がはっきり聞こえてきた。
「まったく、謝罪をするから密かにこの舞踏会に参加してくれとアメリア嬢に言われてきてみたら――まさかこんな茶番劇を見させられるとは思いませんでしたわ」
と、つぶやいた。
は?
呼んだ?姉が?ってことは何、これってもしかして私の目論見がばれてたってこと!?
恐る恐る姉に視線を向けると姉がにんまりと笑った。
それはもう、はっきりと勝ち誇った表情で。
「いかに行動が問題ともあろうとも、法を犯していないものを陥れるような真似は許されません。
ましてや王族が冤罪をでっちあげたとなれば信用問題です。
貴族達は、王族に付き従うのをやめるでしょう。断じてあってはならぬこと。
このことは私が責任をもって徹底的に調べましょう」
凛とした声で告げる大公妃殿下の言葉に
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
私は心の中で思いっきり絶叫するのだった。




