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1話 お約束の婚約破棄ですわぁぁぁぁぁ!!

「アメリア・ファル・ディトリミレーデ!

 貴公は同級生の令嬢に嫌がらせをした!間違いないか!」


 王宮のホール。王国内の貴族たちが集まる盛大な舞踏会会場に王子――デント様の声が響く。

 デント王子の指さすその先にいるのは、姉のアメリア。

 金髪ロールのいかにもいじめっ子と思わせる釣り目で赤いドレスを身にまとった姉の姿がある。

 もちろん派手すぎて周りから浮いていた。


(まぁ、そういう服装が似合うってそそのかしたのは私なんだけどね)


 私は心の中で笑う。


 姉は王子とその隣にいる私――クラリスをにらみつけてくる。


 もちろん、誰一人姉を擁護するものはいない。

 父と母でさえも。

 私が姉を孤立させ、姉も孤立したせいですっかり荒れ果てみんなから嫌われるようになった。


「デント皇子の言うことは間違いないのか?」


 玉座のハキーノ王が嫌がらせされた令嬢に聞く。


「間違いありません、アメリアは私に嫌がらせをしました!!」


 ホールに響くように被害を訴える同級生。


「私もこの間の晩餐会で邪魔をされたわ!」

「アメリア嬢は呼んでもいないのにお茶会にきて、荒らしていきました!」


 続くように貴族たちが次々と惨状を訴える。


 その様子に私は笑みをこらえた。

 だって、ここで笑っちゃったらかわいそうな妹のイメージが崩れてしまうもの。

 お姉さまの最後なんだから我慢しなきゃ。


 そう――今ここで大嫌いな姉が裁かれる。

 頭がよくて父と母の寵愛を受けた姉。

 だから私の魅了の力で父と母、使用人たちも姉を嫌うように仕向けた。

 そして今、その成果が実ろうとしてる。

 父と母の愛情を受けられず癇癪持ちになった姉。

 いろいろな貴族に嫌がらせを繰り返し、いま王宮では誰からも嫌われていた。


 ホールの中央に立つ姉を、貴族たちも敵意のまなざしで、露骨に敵意を向けている中――。


「なるほど。では、王子の婚約者に与えられる宝石を盗みだしたのも貴公かな?」


 玉座に座った王が、無慈悲に姉に告げた。


 ざわり。


 会場がどよめく。



 もちろん犯人は姉じゃない。私とデント王子で結託して王宮の宝物庫から持ち出し、姉の部屋に移動しておいたものだ。姉を窃盗犯にするために。


 宝物庫に入れるのは皇族とデント王子の婚約者だった姉だけ。

 悪評高い姉だ。宝石を盗んだ罪を着せれば誰もがみな喜んでその罪を姉のものだと認めるだろう。ろくな調査などせず、犯人は姉とされる。


(そして裁かれて死ぬんだわ。ああ、いい気味)


「宝石が盗まれた?それは何のことでしょう?初耳ですわ」


 姉が手を頬にあてて反論する。


 もちろん姉が知るはずがない。王子にはこの日の断罪劇のために伏せておいてもらったのだから。


「しらばっくれるな!!豊穣祭の日に盗んだのだろう!!」


 デント王子が姉を指差し追及する。


「豊穣祭の日?間違いありませんこと?わたくしその日は王城にはきておりませんわ」


「嘘をつくな!!メイドがお前をはっきりとみている!!」


 デント王子が言うと、メイドもこくりとうなずいた。

 この日は姉が屋敷に一日中いたのを確認している。アリバイはない。

 そしてメイドはもちろん買収ずみ♡この日のために用意しておいた偽証人。

 ぬかりはないわ。


「はい。間違いありません豊穣祭の日――アメリア様が部屋をでていくのをはっきりみました!!」


 メイドの言葉に――会場が一瞬揺れた。

 貴族たちの嫌疑の目が一斉に集まる。


「どうだ?貴公が王城にいたという証言がでている。

 また貴公の屋敷の者も、屋敷にはいなかったと証言している。これを覆すことができるのか?」


 国王が聞き、痛いほどの視線が姉――アメリアに注がれた。


 痛いほどの敵意。


 ああ、たまらない。

 ここで姉は裁かれる。

 ――お姉さま私の勝ちよ。お姉様には最高の死に場所を用意してあげたから。


 断頭台という素敵な場所を♡


 私が勝利を確信した――その瞬間。


「はい、もちろん覆すことはできますわ」


 姉はにっこり笑ってとんでもないことを言う。


 ――はぁ?何言ってるの?

 もう屋敷のメイドも全部買収済みなのよ。

 覆せるわけが――


 私がそう思った瞬間。

 姉はくるりと貴族たちの方に振りかえった。

 とても嬉しそうに。


 そしてばっと手をひろげると――


「私の証人は――ここにいる貴族の方々ですわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 姉の声が――舞踏会場中に響き渡った。

 



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