15話 犯人は貴方ですわぁぁぁぁぁぁぁぁ?
「……シャンデリアトリック?」
静まった室内。
静寂を破ったのは――第一皇子だった。
「見てください。このシャンデリア。
わたくしたちの部屋にあるものより少し青いと思いませんか?」
そういってアメリアが持つガラスは確かに心なしか青く感じる。
…が。
「……そうだったっけ?」
ウィルが首をひねった。
「そもそもシャンデリアまで見てなかったしなぁ」
「そうだ!!そんなの記憶にないぞ!
仮にそれが本当だったとして、それが何だっていうんだ」
ゲオルグが兵士に制止されながら叫ぶ。
「問題?おおありですわ。
照明を消したのに青白く光が残ってしまう照明など、欠陥品以外の何物でもない。
第一皇子はそのようなものを発注したのでしょうか?」
「いや、確かに魔力量によって光の微調整はできる物だけど、魔力供給をやめたのに光る照明にした覚えはないな」
「だ、そうです。
何なら同じ照明が設置されている、他の部屋に確認にいってもかまいませんよ?
少なくとも、第三皇子の割り当てられた自室も同型のシャンデリアが使われていましたが、ガラス部分がこんなに青くありませんでしたわ」
アメリアのセリフに、一瞬、ゲオルグ表情が曇る。
「そうか!同じ規格のシャンデリアのはずなのに一つだけ違うのはおかしいな!」
ウィルが目を輝かせた。
「た、例えこの部屋だけだったとしたら、それこそ不良品だった証拠じゃないか!!
設備管理を怠った兄上の責任になる!!」
ゲオルグが叫ぶが、アメリアが首を横に振る。
「同じものを発注してこのシャンデリアだけ不良品。
しかも照明部分の材質だけ違う――そんな不良品があるとお思いですの?」
「そ、それは」
「そう。
この照明部分のガラスの材質の違い。
それこそがこのシャンデリアがトラップとして仕組まれた証拠にほかなりませんわ」
「それだけでは少々根拠が薄いかと。
トラップだったとはどういうことか説明していただけますか?
アメリア嬢」
マークがアメリアの目を見つめた。
まるで発言を促すように。
「この照明。魔力を通すとガラスが重くなるように設計されておりますの。
そうですね。持ってみたらわかるのではないかしら?」
そういってアメリアは、手に持っていたガラスをウィルに手渡した。
「確かに重い!」
ウィルが想像していた重さとは違うことに驚きの声をあげると、第一皇子が目を細める。
「なるほど。魔力を通した瞬間重くなり、徐々に魔力が切れると軽くなる仕組みか。
でもおかしいな、さすがに試運転くらいするよ?
照明をつけて重かったら、試運転の時に落下してたんじゃないのかい?」
ウィルの手にあるガラスを少し遠くからまじまじと眺めていう。
「そこがポイントですわ。
このガラス、おそらくマナド魔石をガラスに使用したもので、特定の魔力を通さないと、重くならないのですの」
「なるほど。
試運転では正常な魔力が流れるから問題がなく――ターゲットが使うときだけその魔力を通せばトラップの完成というわけですか」
マークもガラスを手に取って見つめた。
「ご名答。ここが犯人の頭のいいところですわ。
普通の魔力を通した時はいままで通りのシャンデリアなので例え現場検証したとしてもさすがに材質まで調べる人はいませんわ。例え現場検証をしたとしても取付が悪くて落下したにしかなりませんもの」
「なるほど。確かにそれだと僕の責任になるね」
そういって第一皇子はシャンデリアの落ちた根本を見る。
取り付けた金具がべりっと外れており、施工の問題にみえるだろう。
「特にシャンデリアなどの内装は僕自身がこだわったところだからね。
僕に責任を押し付けるにはちょうどいいトリックだったんじゃないかな」
第一皇子がそう言って険しい視線で第二皇子に視線を向けた。
「さて、まず消去法で考えよう。
このシャンデリアの受注は皇室しかできないメーカーだ。
僕はもちろんそんなシャンデリアを発注などしていない」
「……そして」
ウィルに視線を向けるが、ウィルはぶんぶんと首をふる。
「もちろん、彼にはそんな予算も権力もない。
――残りは君しかいないよゲオルグ」
第一皇子がゲオルグの瞳をまっすぐ見つめるのだった。
***
――だから反対だったんだっ!!
ゲオルグは視線を浴びながら、唾を飲み込んだ。
その場にいる者たちの視線が痛い。
彼女の言っていることは間違っていない。
そう――シャンデリアトリックは第一皇子を追い落とすために、仕組んだのは母だ。
船から降りて、調査がはいれば、第二王妃が第三皇子を殺すためにシャンデリアを入れ替えたのがばれるだろう。
そして関係者を洗い出せば、ゲオルグがそのことを知っていたのも、ばれるだろう。
――状況から見れば犯人は誰から見ても俺じゃないか!!
ゲオルグが、何も言い返せず、うつむいていると、アメリアがふぅっとため息をついた。
「認めないというのならいいでしょう」
そういってスタスタ歩き出す。まるでゲオルグに早く吐けと言わんばかりに彼の周りを。
「そもそも、この部屋には本来ならあるはずのものがありません」
アメリアの言葉にゲオルグはぎくりとする。
「本来あるはずのもの?」
「そう、この照明トリックのトラップを作動させるための魔力を送る魔道具です」
アメリアが部屋を見渡した。
「そこにあるスイッチは違うのか?」
ウィルが照明をつけるスイッチを指すが、アメリアは首を横に振った。
「普通の照明がつくスイッチとは別ですわ。
普通の照明と同じにしてしまっては、設備管理の試運転でばれてしまいますもの」
そう言って、アメリアが目を細めた。
視線の先は――もちろんゲオルグだ。
「確かにね。さすがに普通のスイッチならこちらで気づく。
なかなか用意周到なことだ」
第一皇子がマントをかけられて倒れている第二王妃を見て、ため息をついた。
「そう――、ですから、トラップを作動させる魔道具は別に存在するはずですわ」
どくん。
それ以上言うな――。
ゲオルグが願う。
「事件が起きた直後、マーク伯爵によってこの区画は封鎖されました」
――がアメリアは無慈悲にも言葉を止めない。
やめろ。やめてくれ。
「以降、誰もこの区画から出ておりません。つまり――、犯人は所持しているはずです」
ぴたりと。アメリアの歩みがゲオルグの前で止まる。
まるで死を宣告するかのような死神のような笑みを浮かべ
「お持ちですよね。ゲオルグ皇子――」
と、告げるのだった。




