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10話 狩猟祭ですわぁぁぁぁぁぁ!!!


「狩猟祭?」


 第三皇子の自室で、ウィルはマーク伯爵に聞き返した。

 ウィルの隣にはアメリアが座り、対面で第一皇子とマーク伯爵が座っている。


「はい、皇室の管理する森林で獲物の数を競う祭りです。

 そしてそこで、第二皇子が第三皇子に危害を加えるつもりではないかという噂がでています」


「なんで、俺なんだよ。

 こういったらなんだけど、俺なんか皇位継承争いじゃ、一番立場が弱いだろ。

 狙う意図がわからない」


 マークの説明にウィルが憮然とした表情で言うと――


「狙いが僕だからさ」


 にっこりと第一皇子がほほ笑んだ。


「兄上……がですか?」


「ウィル。君が怪我もしくは死亡した責任を管理責任者であり主催者である僕に押し付けるためだよ。

 下級貴族ではうやむやにできるが皇族であれば不問にできない。

 だが僕自身を狙うには警護が厚すぎて手が出せない。

 君は後ろ盾がないから不要な敵を作ることなく、責任は最大限に押し付けられる。

 そういった意味ではウィルを狙うのは当然ともいえる」


「……で、なんでそれを俺に話してくれるのですか?」


 第一皇子の言葉にウィルが問う。

 言っていることは納得できる。だが第一皇子が自分に話してくれる意図がわからない。

 いままで接点があまりなく、どちらかというと無視されていた気がするからだ。


「ふふ。いい質問だ。何か裏があると思っているなら、否定しないよ。

 君には狙われてるという自覚をもってもらいつつ、僕は敵じゃないと君に認識してもらいたいという下心ありだ。これで満足かな?」


「……ええ、まぁ」


「それで、君達には護衛をこちらからつけたいと思う。

 君のところの予算だといい護衛をつけるのは無理だろう?」


「なるほど。

 もしもの事態になったとき、兄上は護衛を付けていたとなれば面目は保たれるわけですね」


 ウィルが言うと、


「ご名答」


 と、第一皇子は嬉しそうに答えた。


「なかなかいい読みをしてくるようになった。

 家庭教師がいいおかげかな?」


 第一皇子がアメリアを見ながら目を細めた。


***


「狩猟祭ですわぁぁぁぁぁぁ!!!」


 森の中。

 ハルバードでモンスターを切り刻みながらアメリアが歓喜の声をあげた。


「なんでお前が一番はりきってるんだよ」


 第一皇子のつけてくれた護衛と一緒にウィルがあきれたようにアメリアの戦闘を見守っている。


「わかっておりませんわ!皇族の狩猟場はレアモンスターばかりなのですわよ!

 この狩場で捕れたものはそのままその領地を潤す金額が手に入ります。

 いわば褒美のようなものですわ。

 その狩に合法で参加できるのですわよ!

 もちろん狩れるだけ狩って現金化するにきまってるじゃありませんか!」


「……お前、俺が命を狙われてるの忘れてるだろ」


「忘れておりませんわ!

 優先順位がちょっと下になっただけのこと!」


「ちょ!ひでぇ!」


「おーほっほっほ。金ですわ!

 金はすべてを解決いたしますわぁぁぁぁ!!あそこの魔物も一殴り……」


 言った途端

 ざしゅ!!!


 後ろから放たれた矢がアメリアの横を通り、モンスターの眉間を貫いた。


 どさっ。

 モンスターが倒れこむ。


 皆で一斉に視線を向けるとそこにいたのは複数の護衛をつれた状態で弓を構える第二皇子。


「なんだチビ。こんなことにいたのか。あまりにも小さくて視えなかった」


 と、護衛とともに第二皇子がケラケラ笑う。


「……」


『あら、やりましょうか』


 アメリアがハルバードの柄をもつ手に力を入れた。


『いや、やめろって!! 毎年のことだから手だすなって言ってるだろ!!』


 ウィルが慌ててアメリアの腕を掴む。


『甘いですわ、わたくしの獲物を奪ったことを、ぐぅの音もでないほど後悔させて、ゴーイングランウェイ!!レッツ。他大陸に逃亡ですわ』


『その嫌がらせ全振りの人生やめろ!!


 ……それにこれでも昔は一応仲良かったんだからそんなことしたくない』


 そう、ウィルの母親――第三王妃が健在だった時は遊んでくれた。兄貴分でもあった。


『なら仕方ありませんわね、ちょい嫌味を言うくらいで我慢しますわ!』


『お前の中に黙っているという選択肢は存在しないのかよ!!」


 ウィルが突っ込んだその瞬間。


「火事だー!!」


 男性の声が響き渡った。

 

 そちらに視線を向けると確かに森の上の方から煙が立ち上っている。


「ちょ、近いな!?」


 ウィルがアメリアの腕を掴みながら言う。


「火事だー!!!水属性の魔法が使えるものは消火を手伝ってくれー!!!」


 火の発生源の方からきたであろう兵士が一生懸命走りながら叫んでいる。


「おい!消火に向かうぞ!

 お前みたいな雑魚はさっさと本拠地にかえれ!足手まといだ!」


 第二皇子がウィルに叫び、そのまま護衛を連れて、火事の方向に向かった。

 その様子にウィルの護衛についていた第一皇子の部下が顔を青ざめさせた。


「そうか、これは罠だ」


「どういうことだ?」


 護衛にウィルが訪ねると、顔を青くしたまま


「おかしいと思いませんでしたか?

 アルベルト殿下にまでウィル皇子を狙っているという噂が耳にはいるのは。

 本当にウィル皇子を狙っているのなら第二王妃の権力なら徹底的に隠すことができたはずです。

 アルベルト殿下の注意をウィル皇子に向けるためにわざと流した情報だとしたら――」


「そうか。

 本命は火事の責任で兄上の罪を問うつもりなのか」


「幸い私たちは水魔法の得意なものが多い、われわれは消火にあたります。

 護衛は戦闘に手練れなものを一人残しますのでキャンプまでお戻りください」


 その言葉にウィルが頷くと、護衛についていた数名が火事の方向に向かって走り出した。


「……」


「どうかしたのか?アメリア?キャンプまでもど……」


 いつまでも彼らの背を見送るアメリアにウィルが言った途端。


 がっ!!!


 矢が残った護衛の腕に刺さり、護衛は声も上げずに倒れこんだ。


「なっ!!」


 とっさの出来事にウィルが固まっていると。


「ウィル皇子。きましたわ。わたくしの背後に隠れてくださいまし!」


 アメリアは嬉しそうな声をあげて、ウィルを自分の後ろに引っ張った。


 数秒後。

 ウィルがアメリアの視線を追うと、木の陰からでてくるフード姿の男たち。


「お前たちに恨みはないが死んでもらおう」


 フード男のリーダー格らしき男が告げる。


「……まさか、火事のほうがフェイクだったのか!?」


「答える必要はない」


 ウィルの問いに暗殺者が答えた瞬間。


 ザシュ!!

 

 別の暗殺者の一人がアメリアのハルバードで切られて、悲鳴を上げる間もなく倒れこんだ。


「な!?」


 暗殺者が慌ててアメリアに視線をうつすと


「激しく同意ですわ!! 答えなど不要!言葉など交わす必要は皆無!」


 ハルバードをびしっと構えてまっすぐに暗殺者たちを見据え――


()()()()()とっての悪人に人権はありません!! 悪・即・斬!死にやがれですわぁぁぁ!!」


 と、問答無用で暗殺者に切りかかった。


 不意をつかれ、リーダー格以外の暗殺者たちはあっけなくやられていく。


「こいつ、まじでやばいやつだ」


 喜々として戦うアメリアにウィルはげんなりするのだった。


***


 ――この女強い。


 ハルバードを構えるメイドに暗殺者は身構えた。

 彼の部下はすべて切り捨てられている。

 

 ――だが生きてはいる。


 これは恐ろしい事だ。

 ギリギリ生きていて、それでいて行動不能になるまでの微妙なラインをたった一撃でやってのけたのだ。



 ――だが、攻撃自体は甘い。



 暗殺者は余裕で女の攻撃をよけた――つもりだった。


 ざしゅ!!


 暗殺者の胸元から血があふれ出す。


 斧部分を確かに避けた――はずだった。


 が、ハルバードの頂端に槍部からまっすぐのびた魔力が伸びていて、その魔力で切られたのだ。


「残念♡形状に惑わされましたわね♡」


 女が笑う。


(――そう気づくべきだった。

 あの女の力であのような武器が簡単に振るえるわけがない。

 それなのに斧部でモンスターを倒したことでハルバードと思い込んでしまった。


 あれは――杖だ!!)


 気づいたときには、女の第二撃が襲い掛かっていた。


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