第11話 女だからって甘く見てもらってわ困りますわぁぁぁぁ!!
(だが所詮は女!! プロの我々にかなうわけが)
女の第二撃をかわそうと、右に飛ぼうとし――体勢を崩してぐらりと揺れる。
本来力をこめて踏ん張るはずが――
(な!! ――足元の土がいびつにへこんでる!!)
「まさか!!土魔法」
がんっ!!
暗殺者が声に出した瞬間――魔力をわき腹にたたきつけられ、ぶっ飛ばされる。
「ご名答!!あなたが足に体重をかけるタイミングで土魔法でへこませましたわ。
日々の嫌がらせで貴族を転ばせるために習得した魔法。
血のにじむような努力で編み出した、この技術、褒め称えてくださってよろしくてよ!!」
「努力の方向性!!」
ウィルが突っ込んだその瞬間。
ざんっ!!
暗殺者の眉間を――一条の矢が貫いた。
「な!?」
予想外の展開にウィルが声をあげ、アメリアも矢の飛んできた方向に構えた。
その途端――
「よかった。無事かい、二人とも」
と、森の中から現れたのは、第一皇子アルベルトだった。
***
「無事でよかったよ。
火事が起きたと聞いてきてみたんだけど、念のためとこちらのルートを選んで正解だった」
護衛達が死体を処理している中、第一皇子がウィルの肩をたたく。
「……心配してくれたのか?」
「当たり前だろ。僕らは兄弟なんだから」
「アルベルト殿下。火事の方も無事鎮火したようです」
「それはよかった」
そんな様子を聞きながら、ウィルは心配そうに、最初に暗殺者に射抜かれた護衛を見つめる。
「なぁ、護衛の兄ちゃんは大丈夫なのか?」
「ええ、傷自体は大したことはありません。
ただ、毒が塗ってあったため気を失っただけです。
幸い矢についていた毒の解毒剤をもちあるいていたので処置が間に合いました」
護衛の言葉にウィルはほっと肩をなでおろす。
「あら、護衛の身まで気遣えるのは偉いですわ」
「そ、そんなのあ、あたり前だろ!俺を守って死ぬとかそんなのごめんだ!」
顔を赤くして、キャンプに戻ろうとする第一皇子の後を追うウィル。
その背を見送りながら――
「何を怒ってるのかしら」
褒めたつもりだったのに地雷を踏んだと首をかしげるアメリアに
「……ウィル殿下の母君はもともと産後の体調がよくないのもありましたがウィル殿下をかばって体調を崩しお亡くなりになりました」
と、アルベルト皇子と現場に駆けつけていたマーク伯爵がアメリアに答えた。
その言葉にアメリアは目を細め
「――ああ、なるほどですわ」
と、ため息をつくのだった。
***
「火事は鎮火され、兄が捕まった?」
自室で、第二王妃が苛立ちながら従者に問う。
「はい。放火とウィル皇子暗殺容疑……だそうです」
(――してやられた!!)
王妃は歯ぎしりした。
予定ではもっと火事は広がるはずだったのに、そうなる前にあっけなく鎮火され、アルベルト皇子を落とすどころか、手柄にされてしまった。
(水魔法の使い手が、あの場にいるなんて——都合がよすぎる
完全に第一皇子に王妃側の目論見が読まれていた)
第一皇子の人を小ばかにしたような微笑が脳裏に浮かぶ。
(憎たらしい!!!!!!)
王妃はバチンと扇子を閉じる。
(こうなったら……最後の手段だわ……)
視線の先には書き込みだらけのメモと一緒に置かれた豪華客船のパンフレットがあった。




