プロローグ編006/悪い噂と雰囲気の悪さと【恭侍】への悪評
「お兄さん、こういう所、初めて?」
「あ、私もそう思った。
何となく落ち着かない雰囲気だからこういう所に慣れてないでしょ?」
「ひょっとしてチェリー?
お兄さん、イケメンだから私が相手してあげようか?」
「駄目だよ、私が目を付けたんだから」
着飾った女性達が1人の男性に色気を振りまく。
男性の名前は【芦柄 吟侍】。
こういう所・・・いわゆる【キャバクラ】には行ったためしがない。
彼は幼い頃から、【カノン・アナリーゼ・メロディアス第7王女】と言う彼女が居たし、結果的に彼女と結婚している。
冒険中はたくさんの女性に言い寄られたものの、こういうお金を払って女性に相手をしてもらう店に入るのはほぼ初めてと言っても過言ではなかった。
(似たような所には行った事があるが、【キャバクラ】そのものは初体験)
【吟侍】は、
「お、おい・・・
本当にこんなとこじゃないと話せないのか?
飲みながらってんなら居酒屋とかの方が・・・」
と言った。
【恭侍】は、
「俺はこういう店しか知らねぇんだよ。
いつでも抱ける女がいねぇと落ち着かなかったからな」
と言った。
そう。
ここは、飲みながら話そうと提案した【吟侍】に対して、【恭侍】が指定した店だった。
元悪党の彼はこういう店には盗んだ金などで派手に遊んで出入りしていたのだった。
【奏多】も初体験だが、付き合いで同席している。
ここには、【吟侍】、【恭侍】、【奏多】の3人で来ている。
【恭侍】の言葉に対して、【朱美】と言われているホステスは、
「あらっ、知らないの?
つまらなくなった貴方の相手をしてくれる女の子は居なくなったのよ。
飲み代を踏み倒す様な甲斐性無しはね」
と言った。
【恭侍】は、
「そのつまんねぇ噂流してんの、【朱美】、おめぇだろ?」
とにらみつけた。
【朱美】は白を切り、
「さぁ、何のこと?
あんたも捨てた女の店によくのこのこ来れたわね」
と怒気を込めて皮肉った。
そう。
【朱美】は【恭侍】の元【セフレ】だった。
【朱美】もセックスのテクニックだけは良かった【恭侍】の事を少なからず好意を寄せていたが、【フェアカノン】と知りあった彼は、【セフレ】とは残らず切れた。
その事をたくさんの女性が不満に思っており、腹いせで、有ること無いこと悪い噂を振りまいていたのだ。
だが、【恭侍】はそんな事を気にしたりしない。
元々、図々しい性格をしていたのだ。
女達にどう思われていようと関係ない。
女は抱きたい時に抱けば良い。
用が無くなったら邪魔なだけ。
そんな最低男。
それが、それまでの【恭侍】だった。
【フェアカノン】と知りあってから彼なりに誠実?になりつつあった。
そのため、自堕落な関係にあった身体だけが目当ての女性達とはきっぱりと別れたと言う事である。
それが、【恭侍】なりの誠意であり、必要ならひっぱたかれてもかまわないと思っていた。
ただし、それは【恭侍】の理屈である。
女性側からしたら冗談じゃないという話である。
捨てられた女性達は徒党を組み、【恭侍】を貶めていつか寝首をかこうと虎視眈々と狙いを定めていた。
元々、女性とは身体だけ。
快楽だけが目当てだったので、女性のそんな感情には無頓着である。
だから、平気で捨てた女の店に顔を見せると言う行為に至っているのである。
まだ、こういう所に不慣れな【吟侍】の方が雰囲気の悪さに気付いていると言う感じだ。
【吟侍】はめちゃモテたが、誠実な男性だった。
だから、【恭侍】の行動が読めない。
【恭侍】の気持ちには共感出来ない。
【吟侍】の中ではお互い譲り合い、助け合いの関係が最良だと思っている。
なので、この殺伐とした雰囲気に居心地の悪さを感じていたのだった。
【吟侍】は、
「悪いけど・・・
店、変えねぇか?
ここで話す様な事じゃねぇと思うし」
と言ったのだった。




