プロローグ編012/第三の【後継者】?2
【陣技/風来】は、
「なぁ・・・
お前等、【芦柄 吟侍】って知っているか?」
と声を掛ける。
声を掛けられた女の子達は、
「【芦柄 吟侍】?
・・・知らなぁ~い」
「私も知らなぁ~い」
「私、知ってる。
あの【クアンスティータ】を引退に追い込んだ伝説の英雄でしょ?
1回で良いから抱かれたいって思っていたのよねぇ~」
「あ、私も私も」
と言う感じで、2人に1人は知っている。
【吟侍】はそれくらいの認知度だった。
【陣技/風来】は、
「俺の名前は、【芦柄 陣技】ってんだ。
この名前が意味するものがわかるか、お前等?」
と言った。
女の子達は、
「知らなぁ~い。
そっくりさんって事?」
「ばかね、名前がそっくりでも意味無いでしょ。
かたりよ。
なりすましよきっと」
「そっか、悪い人なんだ。
人相悪そうだもんね」
「ちょっと近寄って来ないでよね」
と言った。
【陣技/風来】は、
「ばぁ~か、違げぇよ。
この名前は、【芦柄 吟侍】に正式に弟子だって認められたって事だよ。
【屋号】みてぇなもんだよ。
俺と仲良くなると、【芦柄 吟侍】と握手くらいさせてやるぜ?
お前達、ちょっと可愛いから、俺の女にならねぇか?
ちょっと抱かせろよ。
良い思いさせてやっからよぉ。
師匠なんかより、俺の方が夜のテクニックは数段上だぜ。
昇天させてやっからよぉ~。
良いだろっ?」
と言った。
そこへたまたま通りかかった【恭侍】が、
「おい、あんま、おっさんの評判を落とす事、すんじゃねぇよ。
おっさんにはちょっと恩があんだ。
おっさんを悪く言うなら俺が相手になるぜ。
あのおっさんが、てめぇみてぇなカスを弟子入りさせる訳ねぇだろうが。
俺にはわかる。
てめぇはクズだ。
目が腐ってやがる。
仮に弟子入りさせたとしてもすぐに破門だ。
そういやぁ、あのおっさん、破門にした奴が居るって言ってたな。
あぁ・・・てめぇの事か?
俺がおっさんでもてめぇは即、破門だな。
くだらねぇ真似してる暇があるなら少しは修行しろ。
だから、クビになるんだ、アホが」
と睨んだ。
【陣技/風来】は、
「いや・・・
冗談だよ、冗談・・・
俺が天下の【芦柄 吟侍】の弟子だった事はねぇよ。
もし、俺が望めば、最高の弟子になるのは間違いねぇけどな」
と言った。
【陣技/風来】は、優しそうな【吟侍】の事は利用しようと思って舐めてかかるが、【恭侍】の様な喧嘩上等の強気の相手にはへりくだるタイプである。
相手を見て態度をコロッと変える。
そこも、【吟侍】の後継者として相応しく無い点である。
【吟侍】が心の修行をしろと言ったのはそこである。
それをすぐに投げ出した事から【吟侍】は師匠として匙を投げたのである。
元々、【陣技/風来】を弟子入りさせたのは【吟侍】が冒険でお世話になった恩人に、
「そこを何とか・・・
助けると思って・・・」
と頼まれたからであり、【陣技/風来】の才能を認めたからではない。
そこを一度は認められたと【陣技/風来】は自惚れて考えているのである。
ボタンの掛け違いはそこから発生している。
英雄の後継者として全く相応しくない男。
それが、【吟侍】の許可なく、勝手に【芦柄 陣技】と名乗る【内藤 風来】と言う男である。
この男の根底には悪意が詰まっている。
英雄になりたいのはちやほやされたいから。
自分の気にくわない相手はとことん追い詰める。
強者にはへりくだり、弱者はどこまでも見下す男。
英雄になる資質は欠片もないクズである。




